異世界の王
どうするか?魔王ルビエールの攻撃を直撃されれば、俺は一瞬でゲームオーバーだろ。巨大鎌の攻撃範囲も広くて避ける事も容易くない。
来栖はダメージを受けて、多分さっきまでの動きはできない。
俺がやるしかない。俺は自然回復の能力を持っているし、時を止めることもできる。ゲームの世界では最強とかそういうポジションの能力。
魔王ルビエールのターゲットは俺ではなく、宇敷。
『次こそ、死んでもらおうか!弓矢のお嬢さん!!』
「時よ、止まれ!!」
この時を止める能力を使って行けば確実に魔王ルビエールは倒せる。だが俺は使っていて感じた事が一つあった。それは2回目使った時に身体全体から痛みを感じた事。
もしかして連続使用はできないようになっているのかもしれない。なら魔王ルビエールを長期戦には持ち込めない。俺は時が止まっている魔王ルビエールへと斬撃を何度も喰らわす。10回ほど刀で斬り刻む。
『その能力、厄介だな。先にお前を潰そうか』
「潰せるならな」
『魔王を・・・なめるなよ!人間如きが!』
魔王ルビエールは確実にダメージを喰らってるはずだが、全然弱っていない気がする。どういう事なんだ?魔王って不死身か何かか?
巨大鎌から衝撃波を放ち、少し離れた距離からでも攻撃してくる。
「この野郎が!」
来栖が俺に攻撃を仕掛けている魔王ルビエールの背後から双剣で2回斬り、魔王ルビエールは少し怯んだ。・・・アイツは背中を攻撃すればダメージが入るのか?
ならば、俺が魔王ルビエールの攻撃を引き付けている間に2人に背中を攻撃してもらえば、勝てるのかもしれない。
「来栖、宇敷!俺が1人でコイツを倒す!だから逃げてろ!」
『1人で?だから魔王をなめすぎだろ!』
巨大鎌から紫色の衝撃波を俺に放ってくる。その衝撃波は接近していくにつれて大きくなる。これが命中したらまずい!・・・ここで俺が大声をあげる。
「来栖!!宇敷!!今攻撃しろ!!魔王の背中だああああ!!!」
「なにっ・・・?」
「早くしろ!!!」
来栖は一瞬戸惑っていたが、逆に宇敷は既に弓をひいた状態だった。来栖と宇敷は同時に魔王ルビエールの背中へと攻撃を開始する。俺は避けきれない衝撃波を喰らい、地面へと倒れこむ。
『背中だと!?・・・お前は囮だったのか!!』
俺は何とか2人の状況を見る。魔王ルビエールが振り返った直後に矢が右目に突き刺さる。右目を手で押さえたルビエールへと来栖は攻撃をくり出す!魔王ルビエールは無防備で攻撃を喰らい続けている。
『こ、これはまずい・・・!くそ!!』
魔王ルビエールは急にその場から消え、すぐに俺達と50メートルは離れた場所に出現した。これは勝ったのか?
来栖は魔王ルビエールが出現した場所へと走って向かっている。俺も自然回復が終わった瞬間に走り出していた。
『今回は負けだ。だが次は・・・鬼条様が自らおめーらを殺すだろう!・・・』
「・・・今なんていった?」
「なんだその逃げ台詞は!!ここでお前は終わるんだよ!」
来栖が叫んだと同時に魔王ルビエールはその場から消えた。俺達は勝利したのかは曖昧だが負けてもいないだろう。消えてから10秒後、アナウンスが流れる。
『異世界QUESTをCLEARしました。あと1分でこの場所は消滅します。扉から出なかった場合は強制的に退場となります』
アナウンス後、俺達はその場に座り込んだ。魔王ルビエールを倒す事はできなかったが、異世界QUESTをCLEARはできた事に安心した。それよりも来栖が生きていた事に驚きだ。
「鬼条って奴が異世界の王なのか?」
来栖がふとそう言った。俺はその苗字に聞き覚えがある。その苗字は海埜の旧姓だった。・・・まさかここで鬼条の名前を聞くとは思わなかった。
「死咲、鬼条の事知ってるの・・・」
来栖が俺に聞いてきた時、異世界QUEST内で1分が経過して俺達は強制的に退場させられてしまった。
現実に戻ってきて、場所は公園だった。
「来栖さん!生きていてよかったです!私、心配したんですから!」
「騒ぐな。俺も正直死んだ思ってた。だが何故かこの公園で倒れていた」
「え?それですぐに異世界QUESTに!?」
「ああ。さっきとは別のな。そこをCLEARしたら気になる異世界QUESTがあったんだ。それが【魔王誕生】だ」
来栖は淡々と話していく。俺も【魔王誕生】というタイトルには気になっていた。今までは戦国武将や軍団が多かったのに急に毛色が変わったからな。そして魔王ルビエールから聞いた鬼条という名前。・・・少し繋がってきたかもしれない。
「来栖、お前はどっち側だ?」
「あ?」
「敵か味方。・・・入峰派か封凪派。どっちなんだ?」
「俺はリーダーに救われたんだ。だから封凪さんだよ。入峰は最初から気に食わない」
「そうか。なら俺と協力してくれ、海埜を助け、異世界の王を倒す協力をな」




