死咲 拓翔と海埜 義宗③
海埜は何を言っている?この辺では喧嘩王として有名の三守 九星に何を言ってんだよ。一番強いのは海埜?そんなわけがないだろ。
「はい?何言ってんだ?オレはこの辺じゃ負けた事がないんだよ。喧嘩王とも呼ばれている。その俺よりも喧嘩が強い奴は居ない!!なんかお前をぶっ潰したくなったよ」
「本当に負けた事がない・・・か。嘘だ。嘘だよ」
「おいおい!王になんて口聞いてるんだよ!!ふざけんなよお前」
入間がキレてしまい、海埜の左側から拳を振り上げて向かって行く。海埜は立ったまま微動だにしない。
避けないと当たるのに何故?
「避けろ海埜!」
入間の拳が海埜に命中!・・・したと思ったら、海埜は入間の拳を左手で受け止めた。
「あんたは・・・地面に転がってて」
そう言って海埜は入間の腹部へと右脚の蹴りを喰らわした。入間は腹を押さえて悶えている。その入間に右頬へと左フックをお見舞いして、入間は地面へと倒れこんだ。
一瞬だった。海埜は一瞬で入間を倒した。俺も驚いていたが、目の前に居る三守が一番驚いていた。そして三守は、
「お、お前!!!お前はああああああ!!!」
そう叫ぶ。お前はってどういう事だ?三守と海埜は知り合いなのか?でも海埜なんて名前は有名でもない。不良とかの界隈では有名人なのか?
でも指をさして、お前と言っているから三守と海埜は何処かであっている?
「苗字が違ったから気づかなかった。お前は前までは海埜じゃなかったな?・・・鬼条 義宗!前まではそう呼ばれていたはずだ!俺が唯一勝ちも負けもしなかった相手!この高校に居たのかよ」
「・・・ばれたか。俺は鬼条という苗字だった。だが1年前に喧嘩はやめた。俺にも色々あったんだよ、これ以上関わらないでくれないか?」
「うるせ!オレは倒すぞお前を!そして真の喧嘩王へとなる!!」
三守は海埜へと向かって行く!海埜はさっきまでの棒立ちではなく、ボクシングのような構えをする。さすがに三守相手にはそう簡単に倒せる相手ではないってことか。
それよりも鬼条って中学時代に不良界隈では有名だった名前だ。鬼条と三守、この2人だけが飛びぬけて強かったと。俺はいまいちわからなかったが、噂はすごかった。その2人が今目の前に居るなんてな。
海埜は三守の攻撃を避けつづけている。三守が海埜に何もさせてもらえていない。これが1分程続くと三守は拳を下げてしまった。その隙をついて海埜は三守の顔面を1回、2回・・・と連続で殴りつづけ、とどめに飛び蹴りで胸へと目掛けて攻撃をし、三守は仰向けで地面に倒れこんだ。
三守が・・・負けた?その時、学校のチャイムがなり、次の授業が始まろうとしていた。ちなみに今は昼休みだ。海埜は屋上から出る扉へと向かい、屋上を後にした。残ったのは俺と倒れている三守、入間。・・・海埜が何もしなかったのは目立ちたくなかったからなのか?それで顔も目立たないように長髪で隠していた?それは何故だ?
俺も屋上を後にして、教室へと戻っていく。この事件は三守自身が揉み消して、無かった事になった。負けた事を認めたくないからだろう。そのお陰か海埜には近づく者は居なくなった。俺だけを除いては。
今のが海埜の実力の話だ。この後・・・俺は海埜と本気でぶつかる事になるんだ。
月日が経ち、俺は学校へと来る事が無くなった。その理由は家庭環境が悪化してしまったからだ。週1回学校に来るか来ないか続く日々が続き、海埜もそれを心配していた。
俺の家族構成は父、母、俺、妹の4人家族だ。だが、父親は違う。俺が産んだ時の父親は既にいない。母親が離婚したからだ。そして妹は再婚して父の連れ子だ。ちなみに苗字は川崎が父のもの。死咲は母の苗字だ。俺はこっちの方を使っている。
この父は俺と相性が良くない。いや・・・最低父と言うべきか。俺は父を追い出したいと思っていたんだ。何故なら・・・
「こんな問題も解けないのか。私の娘なのになー。どういう事なんだ?」
「す、すいません」
「・・・次100点取れなかったら、どうなるかわかってるか?」
「勉強を・・・毎日4時間はします」
「足りんな。6時間だ」
自分の娘というより、妹を虐待まがいの事をしている。何故こんな男と母は再婚したのか理解できない。そう思う日々が続いた。俺は母と話しあったが、全然聞いてくれない。
父は俺の事はどうでもいいと思ってるんだろう。何も言ってはこない。だがこの現状に腹が立っている。妹を・・・自分の子供を傷つけるなんて・・・おかしいだろ。
俺は・・・妹を助ける為にはあの男を消滅させないとダメだと思ってしまった。どうすればいいか、何をすればいいのか・・・。俺は学校にも行かずにずっと考えていた。
たまに学校行くと海埜は心配そうな顔で俺の事を聞いてくる。何をしているのか?何故学校に来ないのか?俺に話かけてくるクラスメイトは海埜だけだ。あとは三守が少しは話をしてくる。
「死咲、実際お前とオレはどっちが強いんだろうな~?」
「海埜だろ」
「いや・・・海埜は別格だ!てか負けた事誰にも言ってないよな?」
「そんな暇はない」
「何かあったのか?」
「お前には関係ない。喧嘩王は喧嘩だけしてろ」
誰にも頼れない。俺が解決しないといけないんだ。これは俺の家族の事情だ。絶対に誰にも迷惑を掛けられない。
そして俺はとうとう衝撃の場面を見てしまったんだ。それで俺の心は決まってしまった。




