死咲 拓翔と海埜 義宗➁
「このクラスに海埜って奴は居るか?」
海埜がクラスメイトを殴ってから1ヶ月後。俺達のクラスにアイツからの仲間がそう言って、クラスに入ってきた。
喧嘩王と呼ばれる男からだ。
喧嘩王と呼ばれる男の名前は三守 九星。喧嘩が強く、実は頭も良いという最強ってやつだ。少しだけボクシングをかじっているお陰で喧嘩に生かされているのもある。
その三守が海埜を呼び出すって事はやっぱりある出来事のせいであろう。俺は三守とは知り合いだが、喧嘩は俺の方が弱い。俺も相当強いと思っているが、三守はやはり喧嘩王と呼ばれる事あって、歯が立たないんだ。
三守の仲間は俺も知っている。まさか海埜をリンチでもする気ではないかと思ってしまう。そんな事はさせたくはない。
海埜は自分の席からその仲間を見ているだけだ。俺は立ち上がって、仲間のところへと向かう。
「海埜に何のようだ?」
「お前には用はねぇー。引っ込んでろ死咲」
「俺は海埜と友達なんでな。友達を危険な目にあわせたくはない」
「お前とアイツが友達?何の冗談だよ。そんな事良いから!海埜、こっち来いって言ってんだろ!!」
教室内に響きわたる程の大声で叫んだ。ちっ・・・やっぱりこうなるか。
海埜はすぐに立ち上がって、俺達の元へと来る。
「王がお呼びだ!ついてこい」
「王?三守の事を王って呼んでんのかよ・・・。お前も落ちたな入間」
海埜を読んだ男は入間という俺もよく知っている男だ。伊達眼鏡をつけていて、それで目と目の間にある黒子を隠している。
そして前髪でも隠しているから、伊達眼鏡いらないんじゃ・・・と思うが、色々言うと怒りそうなのでそっとしておく。あと少しつり目で目つきが怖い。
「死咲は引っ込んでろって言っただろ!お前はこいつのなんなんだ・・・」
「だから友達だって。え?さっき言ったよな?」
「・・・とりあえず王が呼んでるんだよ!ついてこい」
海埜は何も喋らない。しかも堂々としているように見える。海埜は王と呼ばれてる三守を知ってるのか?いやこの学校で知らない者は居ないぐらい有名だから知ってるはずだ。
「行けばいいんだろ?」
「おい海埜!こんな奴らの言う事は無視すれば」
「じゃあ死咲も来ればいい」
海埜はそう言って、入間の後へと着いていき、三守の待つ場所へと向かう。俺も海埜が心配だから一緒に行くことになる。
着いた場所は学校の屋上だ。そこに足を組んで椅子に座っている三守が居た。まず屋上に椅子を持ってくるってどういう事なんだろうか?と突っ込みたくなったが、心の中だけで抑えた。
三守はオールバックの金髪で、鼻にピアスをつけているが、目が大きくて怖いって感じの印象ではない。逆に普通の髪型にして、ピアスも外せば普通の高校生になる。ま、普通の高校生ってなんだろうと思うけども。
「海埜 義宗。お前はオレの友達を傷つけたそうだな」
三守は海埜を睨みつけてそう言った。友達は多分関の彼氏?的な男だったよな。なるほどな、それで三守に呼ばれたわけか。でも何で1ヶ月も経った後で呼び出すんだ?
「昨日連絡あってよ。肌島の奴、顎の骨が折れたんだってよ。お前・・・何者だ?」
「・・・ただの高校生ですけど」
「何かやってるな?そうじゃないと肌島を一瞬で倒せるはずはない」
肌島って名前なのか。顎の骨もたまたま折れたんじゃないのか?男子高校生の拳は誰でも痛いだろうし。それか顎の骨が弱かったかのどっちかだ。そもそもあれは海埜は正当防衛だろう。
「いい一発が入った。それだけだよ。用はそれだけ?」
「まだ王が話してんだろうが!!」
「入間、黙ってろ。それと王じゃない」
やっぱ王って呼んでるのは入間だけっぽいな。三守も嫌がっているし・・・。
これだけの為に呼んだのか?そんな簡単な話合いで済むはずがないよなー。
「もういい。オレと戦え。そして負けろ、それで許してやるよ」
「ただボコるだけかよ。海埜、そんな勝負は乗る必要は」
「死咲ぃー?オレに文句でもあるのか?オレより弱いくせに」
「何言ってる!俺はお前とまだちゃんと戦った事はないだろ」
俺は1度だけ三守と戦った。だがあれは4対1で3人倒した後に三守と戦っただけだ。さすがにヘトヘトですぐに負けてしまった。それ以来三守とは戦っていない。だから俺は三守と万全の状態で戦った事はない。
「じゃあやるか?」
「いいぜ。海埜を守る為なら俺は」
「いい。死咲は下がってて。俺がやるから」
「・・・はぁ?」
「三守 九星。この高校で一番強いのはあんたじゃない。俺だよ」




