死咲 巧翔と夜形 息吹
「上出来だ、巧翔」
そう言って現れたのは警察官の服を着て、警察らしからぬ赤髪にしている男だった。
名前は夜形息吹。先程イヴィリナードのメンバーが話題に出していた人物で、異世界QUEST対策室に所属している唯一の男だ。
俺はただ知らないフリをしていただけだ。夜形は表は警察官だが裏ではブラッドのメンバーでもある。だから知らないわけがないんだ。
そして夜形が何故この場所に現れたのか?
「イヴィリナードか。異世界QUESTを行っているチーム。そして死咲も入ったんだよな。お前、探偵に向いているな」
「何言ってんだ。お前はしっかり手柄上げて、ブラッドに金を入れろよ。じゃねーと食っていけないんだからよ」
「やっぱりこの夜形様が居ないと駄目なんだな」
「調子に乗るなよ。折角情報をあげたのによ」
俺はイヴィリナードに入ってからすぐに夜形に連絡した。異世界QUESTというワードを聞いた瞬間にも夜形が関わっている事件だとすぐに気付いた。
まずは警察が異世界QUESTを調べている理由。何も犯罪も起きていないなら別に良いと思うだろう。だがな海埜みたいな同様の事件は他にも起きている。
その時は異世界QUESTなんてワードは覚えようともしていなかった。夜形がどっかの対策室を立ち上げてって言ってたけど、警察の仕事に俺はあまり口は挟まなかった。
ブラッドの仕事では警察が関わる事はなるべく行わない。警察の者にばれたらやばいからな。話は1か月前で、とある建設業を行っていた人物が消えたと連絡が来た。
同僚だった男から話を聞き、異世界QUESTというワードが出てきた。それを聞いた夜形がすぐに対策室を立ち上げて、捜査に取り掛かった。
俺はブラッドの仕事で精一杯だった為あまり助ける事が出来なかった。
そして今、運が良いのか悪いのか異世界QUESTに参加している。まだ2日しか経っていないがな。
「一気にレベルを上げた。既にレベル12だぜ!」
「そんなのどうでもいい。死咲、俺を異世界QUESTに参加させろ」
「本当に参加するのか?てか来栖を捕まえた方が良いだろ」
「来栖優馬か。半グレ集団だった男とか言ってたよな、あの闇金野郎が。てか俺の事を知ってるんだな」
「知り合いじゃないのか?」
「さあな。殺そうとしても居ないし、危険人物扱いされるような行動もしていない」
「どっから情報が洩れてるんだ?異世界QUEST対策室があるってわかるのは警察内部の人間だけじゃないか?」
「うーん…まぁ怪しい人物はいる。とにかく、俺を異世界QUESTに参加させてくれ」
夜形は早く早くと言わんばかりだ。何故そんなに異世界QUESTに参加したいんだ?やっぱ情報収集ができないのか?まず異世界QUESTに参加させる方法がわからないんだがな。
「どうやって参加させるんだ?」
「それは調べてある。異世界QUESTアプリで招待ってボタンを押して、名前を入力する。だが名前にも同名が居るはずだから、もう1つやる事あるんだ。それは電話番号だ」
「まぁ招待ってのはそういうもんだよな。メアドとかではないんだな」
「すぐに俺を参加させろ。そしてお前はイヴィリナードを抜けろ。俺とこの異世界QUESTの事件を引き起こした犯人を突き止める。
この俺の手で、3年間による長い事件に終止符をうってやる」
俺は夜形に言われた通りに招待をした。俺はそこである事に気付く。異世界QUESTは招待されなきゃできないんだよな?じゃあ海埜を招待した者が居るってわけだ。
「夜形、俺は別に目的を見つけた。海埜を招待した人物、そいつを見つける」
「いやその前に来栖だ。アイツは多分異世界QUESTに逃げ込んだだろう」
逃げ込んだのは何となく想像出来るけど、どうやって見つけるんだ?まだ2日程度しか経っていない初心者の俺が見つけられるはずがないだろう。無数の扉が存在するこの中では。
「俺は相当異世界QUESTについて調べた。異世界QUESTアプリには、異世界QUESTを行っている者と話せばその者の情報がアプリ内に登録される仕組みだ。来栖と話した事のある死咲は絶対に来栖の情報がアプリに登録されている」
俺は夜形の言う通りに異世界QUESTアプリから登録者というタブを見て、そこに来栖優馬という名前を見つける。そこには現在の居場所が書かれている。
「なるほどな。異世界QUEST内に居る場合だけ、その異世界QUESTの場所がわかるってわけか。現実に居る場合は何も表示されない。これは異世界QUESTのためだけのアプリだ」
来栖の居場所は異世界QUESTのレベル17【織田の乱】と書かれた所に居るみたいだ。人物名ではなく、軍団名が表示されている。レベルが上がると軍団を相手にする事になるのか?
「さっそく行こう。俺はレベル1だが、お前は強いんだろ?」
「待てって。異世界QUESTには乱入みたいなシステムは・・・」
「あるって。その異世界QUESTアプリから乱入が出来る。多分封凪って奴も乱入はしてるだろ」
「もう異世界QUESTマニアじゃねーか。まぁいい、夜形はどうやって行くんだ?」
「死咲から乱入するよ。だからすぐに来栖の異世界QUESTに乱入しろ」
何故か上からめっちゃ言って来るけど、今は突っ込んでいる暇はない。俺は来栖が行っている異世界QUESTのタッチする。『異世界QUESTに乱入しますか?』と表示が出たので、俺は『はい』を選択する。
俺の目の前は一瞬だけ真っ暗になる。目の前は人の死体が大量に転がっている。今までの異世界QUESTとは全然違った。まるで戦場だ。




