扉の出現
入峰は公園を後にし、どこかへと消えていく。残るのは俺と宇敷だが何も話す事は無かった。
結局断った俺が気まずくなり、公園から出ようとしたが1つ気になる事があった。
「宇敷、聞きたい事があったんだ」
「何ですか?」
「扉ってどうやって出現させるの?」
「・・・ぷっ!あっはっはっはっ!!」
「え?何で笑うんだよ!」
「いやいやだって異世界QUESTやらないとか言ってたのに、急にやる気出してるみたいだから可笑しくて!
やっぱり死ぬ程怖い事はないよね!」
何だこれは。宇敷は俺の事を馬鹿にしてるのか?いやだってやめたら死ぬんだぞ!?そんなの絶対に嫌に決まってんだろ!
こんなわけが分からんゲームに付き合わされて死ぬなんて御免だ!
「何か久しぶりにこんなに笑った気がする!海埜さんって何か面白い人ですね」
「勝手にツボって笑っただけだろ。正直俺が断るのはどうだったんだ?」
「海埜さんがそんな簡単に仲間になるような人じゃない事は知ってましたよ。先輩の上月先輩さんにも結構態度が強いですもの」
上月は俺に色々文句を言って来る先輩だ。上司でもあり先輩でもある男で、正直名前も呼びたくない。
「それより扉だよ。どうやって出現させるんだよ」
「簡単ですよ、【異世界QUESTアプリ】を起動して、扉を検索すると扉の在処を探してくれます。
扉の在処はスマホのマップに表示されて、その付近に行くと、扉の色とレベルが表示されます。
だいたい次のレベルのQUESTが多いですが、稀に高レベルの時もありますけど、敵は強いので気を付けてください。
あとは扉を出現させて中に入るだけです、ほら簡単でしょ!?」
宇敷の言った話をもう1度聞きたいと思ってしまった。そこまで簡単ではないだろ。
とりあえず【異世界QUESTアプリ】を使えば良いって事だな!
「ありがとな宇敷。それと断ってすまない」
「良いですよ。・・・でも入峰さんは簡単に退くような人ではないですよ。では、おやすみなさい」
そう言って宇敷は公園から出て行った。時間はもう8時を過ぎている。時間ってこんなに経つのが早いのかって思ってしまう。
公園に居てもしょうがない、俺は自分の家の方角へと向かって行く。
今日は異世界QUESTは出来ない。・・・俺は結局逃げる事は出来ないって事だ。
入峰が言っていたレベル11の敵。それはどういう意味なのかわからないが、俺は1人でやっていく。
だが俺はまだ何も知らなかった。異世界QUESTの厳しさと恐怖を。




