夜、風が吹く中の絶望
「何もないです。仲良くなったのも同じ趣味があっただけです」
「ほんと~?」
「本当です。これ以上はお話できませんので」
宇敷は先輩の言葉に急所を貫くかの如く言葉を選んで返す。先輩はその後何も言えずに悔しそうな表情をしながら、
自分の席へと戻っていく。
時間は過ぎていき、帰宅時間になっていた。時刻は夜7時、俺は仕事を終えて、会社を出て行く。
今日は上司に何も言われずに済んだから良い日だった。
と思ってたのも束の間、会社を出ると宇敷が何故か待っていたから。
しかも隣には・・・入峰もいる。
「ちょっと・・・近くの公園で話そうか」
入峰がそう言って、俺は2人の後を着いていく。俺が断りすぎたせいか、次は2人で勧誘に来るのか?
俺は何を言ってもギルドなんて入らない。それはもう心に決めているんだ。
夜は少し冷え、今日は冷たい風が肌に襲いかかる。早く帰りたいと思っているが、
ここで逃げたら何か負けた気がするから話は聞こう。
公園へと着き、入峰と宇敷は俺の方を向き、話を始める。
「3度目だ。俺達の仲間にならないか?」
「海埜さん、これは海埜さんの為でもあるんだよ?」
2人は真剣な表情をしている。ここでギルドに入ると言えばどうなるんだろう?どんな未来が訪れるんだろう?
・・・未来なんて考えて生きていない俺はそんな事もどうでもいい。
「断る。俺は俺のやり方で生きていく。別に異世界QUESTをしなくたって死ぬ事はないだろう」
「死ぬよ」
「え?」
「異世界QUESTの参加者は異世界QUESTを続けないと死ぬ。確実にな」
・・・冷たい風が俺の頬に当たり、髪の毛が揺れ始める。今、死ぬって言ったのか?
1回死にそうになったけど、それは参加していなかったからだ。今はもう参加している。
「どういう事だよ?」
「異世界QUESTを参加した者が一定期間異世界QUESTをしていないと、死神が現れる。その死神は強制的に異世界QUESTへと連行していく。
その異世界QUESTで負ければ・・・現実の死が訪れるんだ」
・・・なるほど。結局異世界QUESTはやらなきゃいけないって事か。その話が真実か嘘かはわからないけど、こんな時に中途半端な嘘は付かないはずだろうな。
こんな夜に異世界QUESTは強制的にやらなきゃいけないという絶望の話を聞くとは思いもしなかった。
でも・・・でもだ!
「俺はそれでもギルドに入らない。1人で戦ってやる」
「・・・そうか。ならレベル11の敵に挑むときにもう1度聞く。いや挑んでからだな。・・・ちなみに異世界QUESTで負ければレベルが1下がるから気を付けておけ」




