距離
会社には既に宇敷が席に居た。昨日の今日で変な行動をしたら周りの人に怪しまれる。いつも通りに接しよう・・・
と思った矢先だった。
「海埜さん!あのー昨日の業務教えてくれませんか?」
「え?」
「昨日わからないまま帰宅してしまいまして・・・やっぱり自分の仕事はしっかり終わらせたいと思うので・・・ダメですか?」
か、変わりすぎだろ。どうなってんだよ!あんな素っ気ない態度で俺を馬鹿にしていた宇敷が
今日は教えてくださいだと?
やっぱり異世界QUESTの影響か?俺が1人で2人を倒したからか?それでもおかしいだろ。
宇敷は何か・・・企んでるのか?
「あと・・・昼食一緒にどうですか?ちょっと話したい事もありますし」
昼食?話したい事?・・・絶対に異世界QUESTの事だろう。でもこの機会に聞きたい事は聞いておいた方がいいかもしれない。
俺は軽く頷いて、宇敷の仕事のフォローをし始めた。
・・・1時間後、俺達の距離に違和感を持つ者が現れ始めた。それは同期である佐久馬だ。やっぱ気付くよな・・・。
「2人ってそんな仲良かった?昨日やった?」
「馬鹿かよ。宇敷が今居ないからってぶっこんでくるなよ」
「で、マジで何あったんだよ?」
佐久馬にはどう説明すればいいか悩む。さすがに異世界QUESTについて話すのはダメだろ。
関わらせちゃいけない気がする。
「たまたま夜にコンビニで会ったんだ。その時話して色々お互いの事がわかってだな・・・」
「ふーん・・・そういう事にしとくか」
何だその反応は?これは嘘だと見抜いているとしかいえない反応だな。佐久馬は何かを知ってるのか?
既に宇敷から色々聞いてたりして。宇敷は佐久馬とは普通に話すからな。
宇敷が戻ってくると、俺達は再び仕事に集中する。そして休憩時間になり、昼食を宇敷と一緒に食べる事になった。
あまり人が居なそうな店へと行き、例の話をし始める。
「昨日の事、海埜さんは何者なんですか?」
「何者って普通の人ですけど」
「いきなりレベル4の相手を2人も倒すなんて普通じゃないです」
「何か恐怖を超えたからかな?よくわかんないけど、2人は十分強かったよ」
加藤清正と福島正則は強かった。俺は何度も負けると思っていたから、勝てたのは運もあったのかもしれない。
最初に虎を倒してくれた宇敷のお陰でもあるかもしれない。
「私は【異世界QUEST】を初めて1か月も経ってるの。海埜さんは今日で3日目でしょ?何でこんなに差があるのかわからない」
「何か・・・ごめん」
「謝らなくていいです。それよりも本題はこれからです。私はあるギルドに所属してます」
「ギルド?」




