宇敷 紗耶香③
今、宇敷の口から【異世界QUEST】というワードが出た気がする。いや確実に出た!
宇敷も俺と同じ存在なのか?
しかもこれから戦いに行くって言ってたような。これは様子を見た方が良い。
宇敷は友達と別れて、1人で俺が向かった方向へと歩き出す。
俺は咄嗟に物影に隠れて、宇敷をやり過ごす。向かう先は俺が初めて【異世界QUEST】を行った場所だが、
そこには扉は存在しない。・・・もしかして宇敷が見える扉は俺には見えないのか?
「この辺だよね?」
宇敷は1人でそう呟くと、スマホを取り出して操作し始める。何をしているんだ?
すると、急に宇敷のスマホが光始め、光を何もない壁へと向ける。
宇敷の目の前には何故か赤い扉が出現した。どういう事だよ?
スマホに【異世界QUEST】に関連するアプリでも存在するのか?
ピコン!
「やべっ!」
自分のスマホを取り出して操作をしていると、不意に音を出してしまい、
瞬時に宇敷は音の出所を伺う。
「海埜さん?何してるの!?」
「いや・・・なんでも・・・」
「もしかして、扉が見える?」
「・・・・・・」
「どうなの!?答えて!」
「見える。赤い扉が見えるよ」
俺は正直に答えた。ここで嘘なんて通用しないと思ったからだ。
赤の扉が見えている。宇敷がどうやってかわからないが、出現させた扉だ。
【異世界QUEST】へと通じる扉だが、今から宇敷はこの扉に入って、
【異世界QUEST】を始めるのだろうか?
「海埜さんも選ばれてたんですね。で、今どのぐらいですか?」
「どのくらい?」
「レベルですよ」
「レベル?よくわからねーが、1回しかCLEARはしてない」
「なら2ですかね。私はもう4です。次の赤の扉をCLEARすれば、次の色へといける」
次の色?俺は昨日始めたばかりだから全然わからないんだが、
宇敷の方が【異世界QUEST】を行ってるって事だな。
どうするか。俺は宇敷の戦いを見るべきか、否か。
このまま帰るのもありだが、絶対に止められる。
ならば手段は1つだ。宇敷の赤の扉へと入り、
戦いを見させてもらう。後輩だが、【異世界QUEST】では先輩だから、どのぐらいの強さかは
知っておくべきだろう。
「宇敷、俺も赤の扉に入らせてもらう」
「え?マジで言ってます?てか海埜さん弱そうだし」
「1人死ぬ気で倒したんだ。なんなら俺が倒してもいいぜ」
余計な事を言ってしまったと言った後から後悔する。宇敷の相手は多分強いはずだろう。
レベルが上の宇敷に判断して、相手の強さも決まってるなら強い。
俺は1回しか戦ってない雑魚だ。今の言葉に宇敷はにやりと笑う。
「じゃあ海埜さんが倒してくださいね!倒せば一気にレベルが4になりますから!」




