宇敷 紗耶香②
自宅を戻る道は暗闇で、明かりも疎らにしかない。
ただの住宅街だが、少し歩くとコンビニが見えてくる。
そして俺が【異世界QUEST】に足を踏み入れた扉があった場所に辿り着く。
あの後、入峰 是郁は何処かへと消えていったんだ。
『また会う事になるだろう。さらばだ』
そう言って消えたんだ。もう少しでコンビニに辿り着く。
喉乾いたし、何か買っていくか。
「あれ~?海埜さんじゃないっすか!!」
この声は…聞き覚えがありすぎる声だ。何故だ?幻聴か?
こんな所でまた宇敷の奴に会うのか?
「あれが紗耶香が言ってた先輩か!何か怖そうな雰囲気する」
隣は友達であろう女性が居る。宇敷とは少し雰囲気は違うな。
モデル並みに綺麗で美人っていうよりも小柄で可愛いって印象かな。
ただ宇敷がああいう性格だから、その友達には俺を悪く言ってそうで嫌だな。
今はプライベートだし、あまり会話はしたくない。
「・・・お疲れ」
「テンションひくっ!」
「こんな時間にコンビニ前でたむろってるのか。女子高生かよ」
つい暴言的な発言をしてしまった。この時間会いたくない人物でも会ったし、
テンション低いって言われた事でついカッとなってしまった。
「なにそれ。ほんと海埜さんってあれですよね」
もう無視しよう。あれって何だよ。まるで俺を汚物のような目で見やがって。
疲れているし、今日は帰りたいんだ。
「でも紗耶香も悪いんじゃないかな。急にテンションひくって言われたら、私でも
少しはムカってするよ?」
「え…?そうなの?」
「誰でもテンション高くはないし、海埜さん?も仕事で疲れているようだしさ」
あれ・・・?天使が居る?宇敷の隣に居る女性が天使に見えてきた。
よく見ると、笑顔が天使のようだ。俺の身体が癒されている気がする。
「す…すいませんでした海埜さん。凛ちゃんも…ごめん」
「私は良いんだよ!海埜さん、これからも紗耶香をよろしくお願いします!根はやさしい子なんで」
「・・・そうか。何か俺も悪かった。また明日な」
俺はそう言って2人から離れていく。これで少しは宇敷も変わってくれるのかな。
離れていきながらも2人の会話は少し聞こえた。
「凛ちゃん、今日もありがとね!これから【異世界QUEST】だから、また倒してくるよ」
「頑張ってね紗耶香!応援してるよ!」
・・・え?今何て言った!?




