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第七話 魔王ガーン(ブレイ)?賊軍からファンフツェンを救う



救護室 最初寝かされていた部屋



百人の賊、いや軍。

おそらく女性達しかいない魔女村を何の目的で?いや…問題はそこでは無い。



ブレイ「お姉さん。警備のお姉さん!」


警備魔女B「なんだ少年。」


ブレイ「何でこの村は襲われるの?お姉さん達なんか悪い事したの?」



警備魔女B「…何もしてない。魔女村に魔法の秘密があるのは誰でも知ってるから、村を手に入れれば、力が手に入ると思ってるんだろうよ。」


警備魔女B「それに女ばかり…私達に好き勝手したくて襲って来た男達は、これまでも沢山いたんだ。」


警備の女性は淋しそうな顔でそう言った。


何だよそれ…。

やりにくくなるじゃないか。




警備魔女B (ムグッ!? ムグー!)


ブレイ「悪いね?。ちょっとお姉さん達心配なんで見て来るよ。ちょ!服、借りるだけ!風邪曳かないようにベッドで寝ててね。」



-----------



魔女村西方5キロ 途絶の谷出口



日が落ちた闇の中、大軍を相手にファンフツェンはたった5人で戦っている。既に半数は倒しているようだが苦戦している。


賊軍は防御魔法を使い、小チームで攻撃対象を分散させた上で距離を詰めて来る作戦を取っていた。




ツヴァイナ「燃えろ…ヴァミリア!…くっ!? こいつら!」


アインナ「あぁ!大した防御では無いが倒すのに時間がかかる。しかも…。」


ドライナ「護れ…ラテタ!何この矢の量?!」



結局魔力切れに追い込まれ、そうなるとまともに戦えるのはファフナ1人。彼女は中々の戦士だが、4人を庇いながらでは実力を発揮し切れない。


防戦一方に追いやられ更に矢を射かけられる。

あらかた形勢が決まったところで敵は一旦攻撃を止め、指揮官らしき男達が松明を手に手に前に出て来た。


男達は身構えるファンフツェン達の手前10m程のところで停まる。



-----------



部下A「おっと!俺達は魔道具が有るから一発や二発の火の玉じゃ効かねえからな!」


部下B「これだけの兵をよくも…まぁそれもお前達が俺らのものになると考えれば、お釣りが来るってもんだ。」



アインナ「馬鹿馬鹿しい。お前達はここがどう言う場所で、何故八ヶ国が手出ししないのか解っているのか?」




すると背が高くゴツいリーダーらしき者が、男達を掻き分け後ろから歩み出て来る。そいつはゴイムと名乗り、嫌な笑みを浮かべながら話し始めた。



ゴイム「知っているともさ。九つ目の国を作られたくない…それが理由だよ。強力な魔法を操るお前達魔女を手に入れれば、新しい国を興す事だって不可能じゃねぇ。見ろよ…。」


倒れている50人程の自軍の兵をゴイムは大袈裟な手振りで示す。



ゴイム「お優しいお前らが、手加減してくれた魔法でこれだぜ?予め油でも撒いときゃどうなったと思う? 力の使い方ってものがまるで解っちゃねえ。」


部下C「へへへ、それに俺達は知ってるんだぜ。お前ら儀式をすりゃもっと魔力が上がるんだってな?」


ゴッ!

ゴイムはいきなり部下Cを殴り飛ばす。




ゴイム「俺が喋ってんだ!黙ってろ。…まぁこいつの言った通りだがな。大人しく俺達に従って俺の為に力を振るえ!悪いようにはしねぇって。」



ツヴァイナ「お前ら!儀式がどんなものだか知っていないから…。」


部下D「へへっ…知ってるぜ。鰐豚見てえなのとヤルんだろ? 汚ねえ女共だぜ!襲った女の中に魔女村出身の奴がいてよ…皆で可愛がってやったら、べらべら喋りやがった!」


男達は下卑た顔付きで顔を見合わせ、ゲラゲラ笑う。


ゴイム「素直にしていればお前らも可愛いがってやる。な~に鰐豚とやってる女だからって俺達は差別しねえよ。」




ファンフツェンの顔が一斉に強張る。


フィアンナ「グッ!…誰がお前達などに屈するか!」


部下E「助けが…来ねえなぁ?お前ら以外大した魔女はいねえんだろ?へへへ、何、お前達が逆らうなら村を襲ってガキ共にでも代わりをやって貰うさ!」




「女をなんだと思ってるんだクズ共が。」



ゴイム達「「何ぃ!? 」」



-----------



忽然とファンフツェンと男達の間に黒いローブの小柄な人物が現われる。フードを被ったその人物は戦場にビリビリと響き渡る大声で言い放つ。


「我は魔王ガーン!その女達に呼び出されし魔神よ。余の僕達に対する狼藉の数々!もはや赦さん!死にたく無い者は直ちに平伏せ!」



突然の出来事、何故か戦場の隅々にまで聞こえる大音響に、その場に居る全ての者が固まる。



その中でゴイムは冷静に考えていた。百人近い荒くれ者を率いる男は決して馬鹿では無い。威力偵察後に今回の作戦を建てたのも彼だ。


(どこから出て来やがった?魔王…はハッタリとしても、こいつが隠し玉の可能性は有る。しかも男の声…。)




部下D「ハッタリだ!じゃあなぜ?今出て…グォッ!? 」


ゴリッ。

瞬間移動の様に魔王が現われ、叫んだ男の顔を掴み一瞬で握り潰す。気を失った男は土下座の様な姿勢で顔から地面に倒れ込んだ。



「ほう!この者のは死にたく無いようだな!他に死にたく無い奴はおるかぁ!!」



ボッ!

魔王の指先から火が生じ、すぐに轟々と燃え盛る10m程の巨大な火球となる。ゴイム等指揮官達は、頭上の火を避けようと平伏す。


鎧越しにも肌が焼け焦げそうな熱さなのに、魔王は何とも無い様子だ。今や戦場を明るく照らす大火球を魔王は後方の軍勢に向けてゆっくりと放つ。


余りにも速度が遅かった為だろうか。魅入られた軍勢は逃亡を選ばず、巨大火球が迫ると次々と平伏し、己の頭上を灼熱が通り過ぎるのを待った。




「全員平伏したか!よし!そこの男…しかし暗いな。ファンフツェン!目を閉じていろ!」


何か言いかけた魔王はそれを止め天を仰いだ。

事態を呆然と見守っていたファンフツェン達は急に魔王から指示され、慌てて従う。


すると…音もなく、閃光が空中に拡がり強さを増してゆく。平伏していた男達も眩しさに目を閉じていた。




「よし!面を上げよ!ファンフツェン!眼をゆっくり…開けていいぞ。」




雑兵1「嘘だろう!? …暖ったけぇ!」

雑兵2「花が開き始め…蝶も…鳥の声も…。」

雑兵3「騙されね…肌が!? チリチリ…。」




真昼だった。




日差しが暖かいのに、いやだからこそ、

男達は震えが止まらない。

太陽の暖かさ…夜が昼になったのだ。


信じられない。こんな魔法は聞いた事も無い。

こんなの神か悪魔か……魔王!?




「そこのお前!しらばっくれてると潰すぞ!? そう…お前だ。ちょっとこっちに来い!」



(何で俺を!…いや今こいつに逆らうのは得策じゃねえ。策を練らないと。)


しぶしぶゴイムは魔王の前に出る。


魔王はゴイムに何事か指示したようだが「勘弁して下さい。」とか必死に逆らっている。だが、ゴイムの長剣を引き抜いた魔王がそれに何かすると、途端に蒼ざめて震え出し、大きく頷いた。



ゴイム「お、お、お前ら!今から全ての持ち物をここに置くんだ!いいかぁ!武器も金も!服も靴も下着も…何もかもだー!」


ゴイム「そ、それで魔王様は手打ちにして下さる!死にたく無い奴は、従えぇええ!!!!」




それまで指揮官達が集まっていた場所に巨大な荷物の山が出来ていた。武器防具、貴金属、装備、酒や食料など、服や靴…下着の山だけ大分放れた場所に置かれている。



「二度と余に顔を見せるなよ!? 次は警告などしてやらん!土産だ。見ておくといい…。」



巨大な火球が男達の下着を一瞬で消した。かなり離れている筈なのに、男達は熱くて堪らない。火球の威力は文字通り身に染みた。




松明だけ返して貰った男達は、怪我人を背負わされ、素っ裸に素足で暗くなった渓谷を引き返してゆく。足裏から出血しているが、万一聞こえたら…と思うと誰も文句を言えない。



-----------




途絶の渓谷 西4km草原



1時間歩き通し渓谷を抜け、それでも気が休まらずここまで来た。ようやく男達は草地に寝転び息をつく。隠し持っていた火打ち石で火を焚き、近くの小川で水を飲む。



部下B「酷え目にあった。あんな化け物が出て来るなんて…ありゃぁ魔王だ!人間じゃ敵わねえよ。」


部下A「お頭。これからどうします?まだ人数は結構いるんだ。取り敢えずその辺の村でも襲って服とか手に入れましょうよ。」




いつもと変わらない部下Aが調子良い事をいうが、ゴイムの顔色は優れない。粗野だが馬鹿では無いのだ、考えてしまう。


ゴイム「…野郎、次に他人様襲ったら赦さねえ、見てるからなって言いやがった。気になってしょうがねえ。」


部下D「へへっ!どうせあの峡谷の向こうだけだって。お頭にしちゃ弱気じゃねーの!」


部下C「こいつの言う通りですよ。また女でも攫って、気晴らしすりゃいいんですよ。」



ゴイム「夜を昼に変えちまう、俺の剣を…ビスケットでも割るように、指先でポキポキ折っちまう化け物だぞ!? 」


ゴイム「おい…聞いてんのか? おい…おい!? 」



部下B「お頭…部下A、C、Dが消えやがった!」


ゴイム「馬鹿ないつだ!? 」




「たった今だよ。」




焚き火のまん前にあの魔王が座っている。

その辺で喋っていた男達は皆黙り、下を向いて震えだす。ゴイムもブルブルと震えが止まらない。


「ゴイム、お前は賢い。アジトまで大人しく帰れる…な?」


ゴイムはガクガクと大きく頷く。


「帰ったら、捉えている人達 -いるんだろう?- に金と衣服を与えて逃す…な?」


身体中を病気の様に震わせ、ゴイムはガクガク頷く。




魔王はゆっくりと立ち上がり男達の間を歩くが、皆下を向き誰も顔を上げない。顔を見られたく無いのだ。もし覚えられたら…。


「全員…覚えたぞ。」


「良い言葉を教えてやろう。『魔王からは逃げられない。』…恐怖を胸に刻み込み、残りの人生を過ごせ。」




いつの間にか男達は全員眠っていた。翌朝目覚めると全員の傷が跡形も無く消えており、男達の靴だけが草地に積まれていた。


消えた者は戻って来なかった。

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