表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/30

第三話 元勇者(拗らせ童貞) vs 聖女(痛い系処女) めでたくガチ惚れ




「ここを、こうして。いえ…うっふふふふ。」


17、8歳位のウルトラスーパー美少女がその美しい顔を赤く上気させながら俺をベタベタ触っている。



いや。俺は粘土か何かで出来た像らしい。今は彼女は俺の局部辺りを、小さなヘラで形作っているようだ。



「ふっふふふふふ。出来た。完璧よ!」

「っあ!?なんて…なんてエロいのかしら!」


彼女は俺の周囲をゆっくり回りながら細部をチェックしている。はぁはぁ息をつきながら見ているようだ。



どうやらここは石造りの部屋の中。あちこちに燭台やランプが置かれているようで、かなり明るい。



「そうそう、最後にこれを刻まないと♪」


後ろでごそごそやっていた彼女は、再び俺の正面に来るとしゃがみ込み、書物を片手に俺の局部辺りに…何か彫み込んでいる。




何かの準備を終えたらしい彼女は、裸に薄いローブ一枚を羽織り杖を持っている。今度は透き通る様な優しい爽やかな笑顔で、俺を真正面から見つめる。


「私はね?聖女と呼ばれ世の為人の為に働き続けてきたわ。それは私の望みで心からの願い。人は皆あまねく平等に幸せになるべきよ。」



「けれど…やり過ぎたの。力があり過ぎるの。婦女を襲う凶悪犯ですら私のオーラで改心、神聖な物を見る目で私を見るの。」



おもむろに彼女はローブを脱ぎ去った。再び上気した顔で俺を見つめる。


「でもね、見て!私は健康な女で本当はエロエロなの!愛欲と生命に満ち溢れているの、シミュレーション1日120回なの、持て余しているのよぉおおお!」


こんな美しい少女が?うそだろ?俺と同じ気持ちを…。俺よりシミュレーション多いとは何て可哀想な。




と、彼女は真顔になる。


「今更私はこの生き方を変えられない変えたくない。だけど一度くらいは…したいの。ヤリまくりたいの。足腰立たなくなりたいの!」


「私に許された時間は後3日。一週間、付魔の儀式と称してこの「力の場」に一人で篭ったわ。」




「今から貴方に英霊の魂を降ろすわ。文献を集めまくって得た私だけの秘儀。でもね、3日しか保たないの。」


彼女は…泣いていた。



「たった3日。下らない男でもいい!私のエロさを見てよ!全開のエロさで私とヤリまくって!私に一生の思い出を頂戴!」


そう叫ぶと彼女は杖を掲げた!


彼女は俺の足元に用意されていた魔方陣に、膨大な魔力を注ぎ込んだ。複雑な呪文が彼女の口から迸り、俺を苦痛と光が取り巻き…。


俺は生命を得た。




彼女は酔っ払った様な表情で俺の手を取る。

ウルトラスーパー美少女よ、最高にエロいぞ!お前となら…お前の望みは俺の望みだ!


「あぁぁ何てエロい目で私を見るのよ!嬉しい!最高よ!さぁ、あっちに行きましょう。」




それから3日間、俺達は寝食を忘れて違いを貪った。


初めて味わう甘い蜜の様に何度も何度も愛を交わす。

粗末なラグを重ねただけの寝床だが、そんな事はお互い全く気にしなかった。


(やった!遂にヤレた!気持ちいいぞ!)



俺達は互い以外に何の見返りも求めず快楽に浸った。二人で一つの生き物の様に感じられる。それは素晴らしい経験だった。


(これが…なんだ。話も出来ないのに気持ちが伝わる。)



口を聴けない。その事を除けば俺の身体は以前通り、いやそれ以上に動く。俺は彼女の要求に応え彼女に俺の要求をぶつけた。


(なんで愛しい…悲しいんだ。思う存分やれたのに…。)

(お互い望んだ通りじゃないか!なのに…。)


そして…3日目が終わろうとしていた。




着替えをすませた彼女は、

椅子代わりにした俺の腕の中にいる。

あどけない表情で、顔だけを俺の方に向け話した。



自分の国の景色がどんなに美しいか、

一昨年に起きた大災害に心を傷め、

救わなければならない人々の事などを。


俺は微笑んで頷く。


「それにしても貴方、本当に優しいのね。発情したお猿さんみたいなのを望んだはずなのに…。いえ、貴方が来てくれて良かったわ。」




やがて俺の事に話が及ぶ。


「ふふふ。最初はお互いぎこちなかったけど、直ぐに上手になったわね。もしかして…貴方も初めてだった?」


俺は笑って頷いた。


「うそ…?いや本当ね、解るわ。なんで?生きている時誰も相手にしてくれなかったの?戦死しちゃったとか?」


俺は首を横に振って微笑む。

口が聞けたらなぁ…。



「英霊だもんね。じゃあ?…もしかして英雄?」


笑いながら彼女が言う。

俺は得意げに頷いた。



「騎士…王でもないわ。何ていうかもっと上、余裕が感じられるもの。フフフ、人類を救った英雄とか?」


さあね?という顔をする。


「うそだぁ!? だって人類の英雄でしょう?女性なんて選り取りみどりだったでしょう。」


俺は肯定も否定もせず微笑んだ。




「もしかして…もしかしてモテ過ぎた?」


いけない。

俺は遠くを見つめる。

彼女の顔が少し強張ったのを目の端に捉える。



「うそ…人は神を見る目で貴方を…見た?」


胸が詰まる。

答えられない。



「ねえ。こっちを見て!…お願い答えてよ!」


俺は彼女を見る。

彼女は真剣な顔で俺の目を見つめる。



「まさか…私と同じ?」


彼女は急に俺を突き放し立ち上がった。

俺は彼女の方を見れない。


「だから、だから答えたく無かったのね。そんな優しくて…。あぁ…あなたの気持ちが解ってしまう。」


「私、貴方を愛してしまうじゃない!」




「いやよ!? 貴方…消えるのよ? 違う!貴方なんて私の捌け口よ。ただのエロ人形よ!…うぅ。そう思おうと、してたのに…。」



泣いている。いけない。

俺は彼女に近寄り指で彼女の涙を拭い、

微笑みかけた。


「なんで…なんで貴方まで泣いているのよ。」


俺が泣いているだって。

微笑んで…いるはずだろ?




いきなり俺は両手で頭を掴まれ、

彼女の胸に抱き寄せられた。


「泣かないで。もう…愛しているわ。愛してる、愛してる、愛してる。」




「ォ…。」


声が。


「オレ…ぼ。」



彼女は俺の頭を掴み上げ目を合わせた。

泣き笑いの笑いが強くなっている。


「もう一度。お願い。」


「アイ…シ…。愛して、イル。」



次の瞬間彼女の顔に浮かんだ、

歓喜と勝利の表情。


それはあれだけ励んだ愛の交歓でも見た事の無い、

俺が本当に見たかったものだった。

3日間などこの瞬間に比ぶべくも無い。




そして再び彼女は表情を暗くする。


「ひどい。貴方…もう。せっかく巡り会えたのに!私達もう…会えないのよ?」


俺は首を横に降る。

彼女が愛してくれるなら、

俺は諦めを知らない。なぜなら…。


「オれハ…ゆぅしぁ。敗ボく、シラない。」



( I am Bra(ve). I win.... at always. )

「貴方はブレイ。負けを知らない。」


俺は頷く。

本当は一度負けているけどな。


「ブレイ。私は七の国のネヴュラ。いつも祝福の神殿に居て聖女って呼ばれてる。」


俺は微笑んで頷く。



「ネヴュ、ラ………ぐっ!? 」




ドクン!と胸の奥が痛み俺は膝から床に崩れ落ちる。




「ダメよブレイ!いやっ!まだいいじゃないお願い!」


ネヴュラが悲痛な顔で叫ぶ!

ははは、おかしいな。

こんな状況なのに彼女に心配されるのが嬉しい。


「笑ってる…の?何がおかしいのよ!」



待ってろ。

俺は自分に覚えている限りの回復魔法をかけていく。

よ…し、上半身を起こす。


「俺ハ、負け…ない。」


「魔法?それもとんでもない回復魔法。こんな…すごい。でも無理よ!続けられっこない。いえ、ヴァイタム!」


そう言いながら彼女も回復魔法をかけてくれる。

泣きながら。何度も何度も何度も…。




「!? 」


急に彼女が立ち上がる。

振り返って彼方を見つめる。


「あぁ迎えが!? 魔力で解る…神殿に呼び戻されてしまう。そうだ、そうよ!この腕環を壊せば…。」



俺は崩れそうな身体で立ち上がる。

こんなの。ぐ…いつもの事さ。

彼女の腕環に手を掛ける。


「いけ、ない…。」


「何立ち上がってるのよ!? どうしてよ!」



ここだ。

死ぬ気で笑え。


「俺の女は、義務を…民を…捨てない。」


「貴方の女?私…私を女呼ばわり?でも…でも嬉しいわ!」


ネヴュラにあの歓喜と勝利の表情が浮かぶ。

身体が…頑張れ、もう少しだ。




「私が貴方の女。ならば…貴方は私の男。私は私の男が負ける事を許さないわ。」


きつい…なぁ。

でも何て、いい…女なんだ。

俺は彼女の見つめていた方向を、

震える腕を上げて指差す。


「ゆ…け。」



彼女はそちらに振り向きかけ、戻ってきて俺に抱きついた。うひょ?嬉しい…ぜえ!


「これを。必ず勝つのよ。勝って私のところに来なさい。いつまでだって…。」


待っているわ。

ネビュラの口がそう動き

彼女は光に包まれ、消えた。




「ぐごぉおおおおお!」


俺は倒れてのたうち回る。

身体がバラバラになりそうな苦痛と吐き気、息が出来ないので胸を叩いて空気を送り込む。

同時に襲い来る眠気を咳き込んで潰す。


散り散りになりそうな感覚を、手のひらに集めてヒールを掛ける。手の中に握り込んだ指輪、彼女が最後に残してくれた、それが俺とこの世界を繋ぐ感覚だ。



「グゴッ!ハハハハハ!…ゲホッ!」


苦痛の最中なのに俺は嬉しくて堪らない。

指輪を手に感じる度に、彼女の微笑みを、上気した顔を、泣き顔を、そして歓喜と勝利の表情を思い出す。


あれだけ愛を交わしたのに、

思い出すのは彼女の顔ばかりだ。

惚れたな。これが…。


「ネヴュラ…ゲフ。」


吐血?勇者を舐めるなよ。

何度死にかけたと…思ってるんだ?


指輪。

そう、俺は彼女の男なのだ。ヒールをラヒールを、彼女の男は負けない。




やがて男は倒れ伏す。

男の身体は土に還りかけるが、


その度に握り締めた右手から光が走り

生身の身体を取り戻す。


何度も。

何度も……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ