【予告編】
『フローティア』の、ゆらぎからすが、
(よせばいいのに)異世界転移ものに挑戦。
一体何が、異世界に飛ばされるのか。
それは―――
「出だしは好調だったけどね、先々月も、先月も、この数字じゃない」
「まあ納得出来ない部分もあるだろうが……今月いっぱいで解散してもらうよ」
「だから、前から言ってたじゃない。もっと実務の人員増やせと」
「生産センターのサンプル部門と連携を取りたいって、調整してくれって頼んでたのも、放置だったじゃん」
「結局よ、チームだけ組ませておけば、自動的にヒットキャラクターがぽんぽん生まれて来るとか思ってんだよ、あいつらはよ」
業績不振で解散目前の、
キャラクター開発プロジェクトチーム。
「取りあえず、これ見てくれよ。どう思う?」
「すごく、かわいいです……」
「もう企画書も出ないのに作っちゃうのか」
いつもの会議室兼作業場で、だらだらと残務処理に明け暮れるチームメンバー。
彼らを突然襲った地震。
「何だ!? でかいな!」
「机、机の下!」
揺れが収まった後。
扉の外には、会社の廊下ではない、
東京でも、日本でもない、
見た事もない風景。
「何だ、これ……一体どうなっているんだ」
「なあ、あの山の辺りで飛んでるの、鳥じゃなくて……ドラゴンってやつじゃねえ?」
「貴様らの話がさっぱり分からん。キャラクター開発? ライセンス? コンテンツ? 資格と索引がどうしたというのだ?」
「ていうか日本語じゃないですよね……何で通じてんすか?」
ここは異世界で、
彼らは、呼び出されたらしい。
大魔法を使える何者かの、何らかの意図によって。
「ここにはさ、デ**ニーも、サ**オも、バン****コもないんだ!
ここでなら……俺たちの一人勝ちなんじゃねえ?」
―――需要もなかった。
「耳が尖ってるってだけで気分悪いわ。先月もどれだけ奴らに畑やられたと思ってんだ」
「とにかく働かせなければ飯代も無駄になる女子供の歓心なぞ買って、何になるというのです? 向こうの世界は本当に奇妙な習わしがあるのですな」
「偶像崇拝ではないのか、それは?」
「とにかくあたしらは、まず食ってかねえと。んで、足手まといにならんようにせんとだから」
彼らの知っている媒体、対象商品がない。
キャラクターデザインへの感性の違い。
女性や子供への蔑視と抑圧、ゆるキャラやかわいいものの価値がない文化。
貧困、教会の統制、繰り返される人間同士の戦争。
そして人間と魔界との終わらない戦争。
荒み、陰鬱とした空気が支配する現実。
そして、生活手段もなかった。
「じゃあさ、課長とヒラノは農家の手伝いで、ハラさんとイシダくんはその初級戦士試験ってやつ、ミヨシと俺がギルドに当たって見るから」
「スライムって、こんなに重いのかよ!」
「えっと、この桶、8キロぐらいあるよね……で、地図の貯水槽って……見間違いかもだけど、道10キロぐらいない?」
ハードすぎる生計の合間に、それでも彼らは始めた。
キャラクターデザインを。
マーケティング会議を。
商品化プランを。
「最初はもっと人間ぽく……コボルトやエルフが実在する世界だからな」
「こんな風に、袋の皮に刷り込むというのはどうですか?」
「ギルドの職人、4人が話を聞いてみたいって」
異世界の人々の生活の中に、次第に増えて行く
彼らのオリジナルキャラクターたち。
「何で異世界に来てまで、向こうの仕事を……こんな事をやろうなんて思ったんだろうな」
「これが……モガンモで、これが……フェットレ……」
「こんな世界だから必要だった。そう思います」
「この世界では、同じ神の名で人間の国同士が争っている。このままだと神が疲弊してしまう」
「魔界との激化する戦況を前に、我々は憂慮したのだ」
「向こうの言葉でアミニズムというのか……この異世界の因子に、重大な鍵があると」
「これがニンモンシリーズか……人間どもも、これには嫌ったりしないのか」
「これはどういう種族だ。我々の側でも、こんな形の者は見た事ないぞ」
「この地方への侵攻を中止する。代わりに魔界第5方面軍に、そのライセンス契約というのを締結してはくれんか」
「ええと、いいのかなこれ……」
「まず知的財産権の概念があるか、確認しろ」
ゆらぎからす 次回作予定小説
『解散する筈だったプロジェクトチームが、
異世界でキャラクタービジネス展開します』
近日連載開始です。
よろしくどうぞ。
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