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最終話.宇宙を巡る

本日更新の二話目です。

 古い石造りの扉に手を触れる。


「アイ、解析を。」

『機構解析、稼働リンク。扉開きます。』


 石扉の模様に光が走り、奇妙な模様を浮かび上がらせる。

 重たい音を響かせながら扉が開いていく。


 中はやや広い石室だ。



 サテライトバルーンライトが室内を照らす。

 ナイトヴィジョンがあるため、少ない光源でも室内の様子は細かく見える。


 中央に台座があり、何かが上に乗っている。

 すぐ横には石版があり文字が書いてあるようだ。


 台座の上には筒状の入れ物が置かれている。



「明らかに罠っぽい雰囲気だな・・・・・。」


 先に脇の石版へと目を向ける。


「アイ、読める?」

『惑星マジルドの遺跡にて頻繁に見られる古代文字です。』


『呪われし氷の力。ひとたび手にした者、死するまで呪いは続く。』

『ここは檻、力を持ち去ること叶わず。』


「どうやらこれが目当てのレガシ、"氷魔術師の亡霊"で間違いなさそうだな。」

 大人しく持ち出されてはくれないだろうが・・・・・。



 さて、どうしたものか。台座の上を観察する。

 台座は良く磨かれた石でできているが、よく見れば組み合わせたような継ぎ目がある。


 床まで目を落とすと、台座と床に隙間があるのが分かった。



「上に乗っている物が無くなると、重量変化で何か起こりそうだな。」


 僕は部屋の中を見回す。

 代わりに上に置いておける物が何かないか・・・・・・。



 ガタン



 振り返ると、黒いコートの男が筒状の入れ物を持ち上げていた。


「・・・・・・・。」

「あー、久しぶりだな・・・・・・、まあ、いつもどおりに早いもの勝ちだよn、ぶが!!」


 リックの姿が一瞬にして視界から消え、壁に激突していた。


「もう、パパ。だから油断しすぎなんだよ。」

 小さな影は、そう言いつつ壁へ突撃。へばりついているリックに容赦のない追撃を加えていく。


 小さくない遺跡だが、攻撃の余波は遺跡全体を揺るがしている。

 天井から砂埃が落ちてくる。


 えっと、制圧許可しか出てないはずだよね、多分。



「これ、やめなさいティア。遺跡が壊れる。」

 ティア・アマクサ 7歳。絶賛やんちゃ盛り。これでも正式なレガシハンターだ。


「ごはっ、と、とめるのは、そこかよ・・、ぐごぁ!」

 必死に顔を起こしたリックは、ティアに押しつぶされ再び壁にめり込む。



 途端、石室の扉が閉じ、天井と壁に穴が出現する。


 穴の中から熱風が吹き出し、周囲の風景をゆがめている。な、なにかすごく熱いものが出てくるぞ。



「ま、まずいぞ、ユウ!! にげr、ごぶっ!!」

 ティアはまだリックを叩き潰している。


「ティア! リックで遊ぶのはそのくらいにして逃げるぞ!!」

「わかったー!!」


 ティアはリックの首根っこを掴んで持ち上げると、そのまま石室の扉に体当たりをする。


「ぐぼぁ、」

 扉が粉々に吹き飛ぶ。巻き込まれたリックがそろそろ死にそうになっている。

 同時に室内の穴から溶岩が流れ込んでくる。僕も石室から飛び出す。



 遺跡のあちこちが溶岩で侵食され始めている。


「急いで逃げるぞ!!」

「はーい。」

 重力ドライブを吹かし、遺跡の中を飛び抜けていく。







「さすがですね、ティア。"氷魔術師の亡霊"の確保だけでなく、手配犯のレイヴンまで捕獲するとは。」

「私がんばったよ!!」

 ティアは腰に手を当て胸を張る。管理者は微笑ましげな視線を向けている。


 確かにすごい。すごいのだが、父としては方法に苦言を呈したいところだ・・・・・。



 今はソレイユのダイニングルームで管理者への報告を行っているところだ。

 ダイニングテーブルには"氷魔術師の亡霊"が置かれ、床にはワイヤーで簀巻きになったリックが転がっている。


「リックおじちゃんはちゃんと罪を償って、まっとうな仕事に就くべきだよ!」

 ぐうの音も出ないほどの正論に、全員が閉口した。






 セントラルは以前と変わりない、いや、それ以上の繁栄を見せている。

 僕らは"氷魔術師の亡霊"と"簀巻きのリック"を管理者に「納品」し、帰宅した。


「ただいまー。」

「たっだいまーっ!!」

 ティアは元気に家に飛び込んでいく。


「ぱっ! ぱっ!」

「おかえりなさい。」

 ラファと1歳半の息子レオが玄関で出迎えてくれた。


 レオはまだ1文字しかしゃべれないので、「パパ」が言えず「ぱっ!」と言ってくる。


 僕は靴を脱ぎ、レオを抱き上げる。うへへ、かわいいのぅ。



「またパパが失敗しそうだったから、私ががんばったよ!」

「ティアえらいね。ティアが一緒なら安心。」

 ティアは今日の武勇伝をラファへ事細かに報告している。

 それでさえ少ない父の威厳が更に減るからそのくらいにしてください。


 ああ、レオだけが僕の癒しだよ。




「そういえば、今日、昼間ルーシアが来たよ。」

「え、まさか・・・・。」

「うん、ヒロムが"また"行方不明になったから、探すのを手伝ってほしいって。」


 ジグランデは"白銀の侵略者"事件の後、数年で銀河連邦の一員として加わった。


 ヒロムは銀河連邦の大学に通うためセントラルに留学してきたのだが、その途中で"海賊"に襲われ行方不明になった。


 海賊は"歪曲の鍵"というレガシを持っていて、一度行ったことのある場所ならどこでも一瞬で行けるという能力を悪用し、宇宙中で略奪を繰り返していた。


 結局、僕が助け出してきたのだが、他の囚われていた人たちを率いて海賊と戦い、まるで英雄のようになっていた。

 ちなみに、最後まで一緒に戦ったという女子を連れて帰ってきた。



 その後も度々レガシ事件に巻き込まれては女子を連れ帰ってくるので、今では嫁が6人のハーレム野郎だ。

 僕は因果力の強い特異点らしいけど、あいつも何か別の特異点だ、たぶん。



「あーっと、あれだ。ルーシアが一旦帰ったんだから、きっとそんな緊急でもないよ、たぶん。明日連絡してみるよ。」

「うん、それでいいと思う。」


 僕はレオを抱っこしたまま、自宅のダイニングルームの扉を開く。



「実は状況はかなり逼迫しています。」

「え、管理者!?」

 管理者がダイニングチェアに腰掛けていた。


「帰宅後に自宅にまで業務連絡とか、まさかブラック企業・・・・?」

 管理者の絶対零度の視線に射抜かれる。


「はい! 任務でしょうか!!」

 管理者はやれやれと言いたげな表情で続けた。


「ここ数週間、ある宙域で次々と艦船が行方不明になっています。宙域に近づく物はことごとく消失してしまうのですが、ブラックホールなどは存在しません。」

 原因不明の"何か"が吸い込んでいるということか?


「消失する宙域の範囲は刻一刻と広がりつつあります。そして近隣には30億からの生命体が住む惑星系があります。」

「このままだとその星系も飲み込まれると・・・・・。」


「ええ、そうなってしまうでしょう。そして、ヒロム・アイダもその場所で消えてしまったようです。」

 ヒロムの"引き"がすごい。今度から歩く"忘却の羅針盤"と呼ぼう。

 ただ、なんとなくヒロムはどこかで無事に居るような気がする。


「帰ったばかりのところで悪いですが、消失する宙域の調査に向かってください。」

 くはぁー、もう休む気まんまんだったんだけど・・・・、仕方ない。


 肩に手が触れる。

「大丈夫、気をつけて。」

 ラファがにこやかにほほ笑みつつ、送り出してくれる。

 僕はラファに軽く口づけし、管理者に宣言した。


「速攻で片づけてきます。これ終わったら休暇もらいますからね!」

「ふふ・・・、ええ、期待していますよ。」


 僕は玄関から飛び出す。


「あーっ! パパー、まってよー。」

 




 ソレイユのブリッジに着くと、ティアは躊躇なく艦長席へ着席する。

「・・・・・。」

 僕は仕方なく操舵席に座った。


「アイ、ソレイユ発艦準備。」

『かしこまりました。エンジン始動、』


 重力子ジェネレータの駆動音が艦内に響く。


『全重力子ジェネレータ正常起動、全武装オールグリーン、艦内気密チェックOK。』


『発進準備完了です。』




「ソレイユ発進!」





 完


短い間でしたが、これで完結となります。


読んでいただきありがとうごさいました。

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