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19.一つに。

 緊急の状況だったとはいえ、ジグランデに堂々と戦艦で乗り付けてしまった。

 文化保護も何もあったもんじゃないな。いや、ヴァリアントに侵略されてた段階で保護とかそういう状態ではなくなっていたか。



 第14戦隊の艦艇から2隻は着陸し、負傷者の処置や手当を行っている。

 怪我のないジグランデ人にはレーションや飲料水も提供しているようだ。


 ソレイユも着陸し、食料や医療品を提供している。



「皆、ご苦労様でした。」

 管理者から、全員に労いの言葉がかけられる。


 今は第14戦隊旗艦のブリッジに、僕とラファそれにジジルア中佐が集まり管理者と通信中だ。



「数時間後には、銀河連邦軍の災害派遣部隊が到着します。彼らに状況の引き継ぎを行い、あなた方の任務は終了となります。」

 今回はあちこち追いかけまわすことになったが、何とか終わった・・・・・。



「今後、ジグランデはどうなるのですか?」

 今回の侵略以前は文化保護対象であるため、過度な接触は厳禁だった。しかし今の状況だとなぁ・・・・。



「今後は、銀河連邦が復興支援をしつつ、連邦の一員として独立できるように行政司法システム、つまり私が監視を行います。」

 管理者が復興からその後の独立まで面倒を見てくれるらしい。万全のサポートっすな。


「勇介、それにラファさん。今のところは次の任務はありません。災害派遣部隊との引き継ぎ終了後は解散とします。」

 解散、つまり連絡が取れるところならどこで何しててもいいよ、という意味だ。


「わかりました。ありがとうございます。」

 僕は軽く頭を下げておく。


「ジジルア中佐、本件はこれで終了です。ご協力に感謝します。以後の行動は直属組織へ確認してください。」

「了解いたしました。」

 ジジルア中佐は美しい姿勢で敬礼している。やっぱりイケメンだと絵になるな。


 少し微笑んだ管理者の映像が消える。通信が終了した。




「君たちと任務に就けてよかった。ありがとう。」

 ジジルア中佐は僕たちに歩み寄り、握手を求めてきた。


「こちらこそ、ジジルア中佐のおかげで助かりました。」

「ありがと、ございます。」

 僕が握手し、続けてラファとも握手していた。


「また何かあれば、いつでも協力させてもらうつもりだ。」

「こちらこそ、レガシハンターがご入り用の場合はー、って、軍でレガシハンターが必要になる場合はあまりないかもしれないですね・・・・・。」

 ジジルア中佐の言葉に乗っかるように僕も勢いで答えたが・・・・・。軍がレガシハンターを必要とする場面が思い浮かばないな。

 ジジルア中佐も苦笑気味だ。


「はは、そうだな。その機会には、大いに頼りにさせてもらうよ。それでは、元気でな。」

 ジジルア中佐は綺麗な敬礼を僕らに向けてきた。

 僕らも真似て返礼する。

「ジジルア中佐も。お体に気を付けて。」






 その後、2時間ほどで災害派遣部隊が到着。後を任せ、僕らと第14戦隊はジグランデを後にした。



 え? ルーシアを置いてきた?

 ルーシアはミルーシャに戻るためのアイテムを持ってるから大丈夫だ。

 置いていく方が面白・・・・・、ルーシアのためだし、置いていくとしよう。



 彼らの関係があの後どうなったのか、また今度聞きに行こう。




 ソレイユのブリッジ、メインモニタにはジグランデが映っている。

 相変わらず、艦長席にはラファが座り、アイスティを飲んでいる。

 僕はその横に立っていた。



 僕は一つの決意をした。



 ドルコンの純情に当てられたとか、ヒロム達に触発されたとか、そういう部分が無いかと言われれば否定しきれない部分はある。

 母星から連れ出してしまった責任から来る決断とも言えるかもしれない。


 この仕事は命の危険が少なくない。もちろん、どちらかが欠けることを想定しているわけではない。しかしもしもの時、想いを伝えていなかったことで悔やみたくない。


 しっかりと言葉に出して、伝えておかなくてはいけない。僕の想いを。

 そう、これは僕の中でのけじめだ。


「ラファ。」

 僕は雰囲気が重くなり過ぎない、それでいて真面目な様子で呼びかけた。

 ラファはその内心を知ってか知らずか、いつもの少しとぼけた表情のままだ。


 僕は深呼吸し、言葉を紡ぐ。

「僕は、君が好きだ。愛している。」

 アイスティのストローが口から落ちる。表情は依然としてとぼけた様子のままだ。だが、顔色だけは違った。

 じわじわと赤みが増し、真っ赤に染まっていく。たぶん、僕も似たような顔色だろう。


 ラファは、必死にポーカーフェイスを装っているらしく、微妙に頬がひきつっている。



「ラファは、どう、かな?」

 あまりに必死なポーカーフェイスに、僕は少しいじわるがしたくなった。

 ラファの気持ちを聞いてみる。


「ぇ、ぁ、そ、その・・・・・・。」

 急かさないよう、ラファの言葉を待つ。

 ラファが握りすぎて、アイスティーがストローから漏れてきている。


 ラファはポーカーフェイスが限界にきたらしく、恥ずかしそうに顔を伏せながら、小さな声で答えてくれた。

「す、すき、あい、してる・・・・・。」

 顔は火が出そうなほど赤くなっている。

 僕も、さっきから顔がものすごく火照ってきた。たぶん僕も似たような状態だろう・・・・。



 し、しまった、墓穴を掘った。次の言葉を出すのにものすごく勇気が要る・・・・・・。

 しかし、ここは自分を奮い立たせ、続く言葉をラファに渡す。


「僕、あと3か月で誕生日なんだ。18になる。」

 ラファは少し顔を上げ、やや上目使いでこちらを見てくる。



「そうしたら、け、結婚しよう!」

 ラファはアイスティを落した。


 顔を上げ、真っ赤なまま涙目になっている。

 手で口を覆ってみたり、髪の毛を触ってみたり、ひっきりなしに両手が移動している。


「い、いいかな?」

 一瞬の静止の後、震える小動物みたいな動きでラファは何度も頷く。よかった!

 僕は落ち着かないラファの手をやさしく握る。小さく、やわらかい手が僕の手に収まる。


 ラファのうるんだ瞳が近くに見える。顔が近い。

 目が閉じられる・・・・・・・・・・・・・。



 近づくにつれ、ふわりと心地よい匂いが香る。

 暖かく、やわらかい感触が触れる。


 舌の先でやわらかな部分に触れる。彼女もそれに答えてくる・・・・。





 感触が離れていく。熱い吐息が頬を撫でる・・・・。


 その直後、ラファは目にも止まらぬ速度で抱き着いてきた。




 アイさん!! 録画禁止ね!!!


『ちぇ。』





 その日、僕とラファはお互いの温もりを感じつつ眠りについた。





====================



 セントラルの宇宙港。1隻の船が接舷する。

 ジョルネオ・ザザリはレガシを収めたケースを抱え、船から降りる。


「ジョルネオ殿、お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」

 宇宙港のエントランスで、警備ロボットがジョルネオに声をかける。

 警備ロボットの横には、扉の空いた小型飛行艇が待っていた。


「おう、ありがとよ!」

 ジョルネオは小型飛行艇に乗り込む。


 飛行艇が発進する。



 セントラルの中を飛空艇は移動していく。

 立ち並ぶ高層ビル群。セントラルは宇宙でも最大の都市だ。その中を飛び交う多数の飛行艇は、多数の人が住んでいることを示している。


 夕焼けに照らされた大都市は、幻想的とすら言える風景を生み出していた。



 その都市風景の中でも一際巨大な建造物が近づいてくる。

 セントラル、その更に中心部にある白銀のタワー、ここが銀河連邦の中心である統合管理センターだ。


 飛空艇は、タワーの下層にある発着エリアに着陸した。



 ジョルネオは飛空艇から降り、発着エリアの自動ドアから中へと入る。タワーの中へと進むとエレベータホールに辿り着く。

 多数あるエレベータの一つにジョルネオは立つ。


 エレベータの扉上部からレーザー型センサーが起動、ジョルネオを精査する。


「認証 ジョルネオ・ザザリ様 ようこそ。」

 音声が流れエレベータの扉が開く。ジョルネオはエレベータに乗り込んだ。


 しばらく地下に降りたところでエレベータは停止し、扉が開いた。

 ジョルネオはエレベータを降りた。



 そのフロアは専用フロアだ。

 薄暗い空間に伸びる白い通路を進む。

 通路の終点、少し広くなっている場所にソレは居た。


「ご苦労様です。」

 管理者はジョルネオに労いの言葉をかける。


「白銀の侵略者をお持ちしました。」

「ありがとう。それではここに。」

 床の一部が展開し、そこから直方体の台座がせり上がってくる。

 回収したレガシはこの台座に乗せ、所定の"保管場所"へと運搬される。



 そのとき、わずかに振動が響く。



「え・・・・・?」

 管理者から戸惑いの声が上がる。

「ジョルネオ、ヴァリアントがセントラルに出現しました。それも・・・・・」


 管理者は一瞬溜め、言葉を紡ぐ。


「あなたの宇宙船から・・・・。これはどういうことですか?」



「別におかしなことではないですよ。消えたコアの一つ。それが俺の宇宙船に乗せてあっただけですから。」

 ジョルネオは無表情で答える。


「消えた一つ? あなたはロストコロニーのコアを破壊したはず・・・・・、どこでそれを!?」

 管理者の問いに、言葉での答えは無かった。答えたのは黒い爪。

 管理者は黒い爪に貫かれていた。


 ホログラムだった管理者は掻き消える。



「それはおぬしが知る必要はない。」

 ジョルネオは消え、黒い女が居た。


 黒い女は台座を破壊する。床には穴が残る。躊躇なく穴へ飛び込む。



 穴の中、細い通路を抜けて行った先には1つの「小箱」を安置した小部屋があった。


「これ以上の侵入は許しません。」

 管理者のホログラムが再び現れる。

 室内の防衛システムが稼働、壁面から多数のレーザー砲が展開し・・・・・、だがレーザーは発射されない。


「な、なにが!?」

 管理者に困惑の色が浮かぶ。


「この施設の一部は、既に此方の支配下だ。」

 黒い女の背後から触手が伸び、壁の中へと侵食している。

 管理者のホログラムにノイズが走る。


「ヴァリアントの襲撃、此方の侵入。突発事態で対応しきれなかったようじゃのぅ。セキュリティが隙だらけであったぞ?」



「あ、あなたは・・・・プロト。」


「一応、初めまして、と言っておくべきかのぅ。」

 プロトは小部屋の中へと進む。

 中心に据えられた小箱に手を触れる。


「や、やめなさい! それは・・・・。」


「知っておるよ。"大喰らいの箱庭"、この中には回収したレガシと、"管理者本体"があるのであろぅ?」


 プロトは箱を開く。


「さぁ、今こそ一つに。」


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