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仮想世界から目覚めた僕は、SF装備で宇宙を巡る  作者: はとむぎ
3章 ミルーシャ・リアル
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21.それぞれの道へ

「そういえば、」

 僕はふと気が付き、ヒロムに話しかける。

「ヒロムは転移してきたんだよな? 転移もデウスマキナが管理しているのか?」

《はい、空間制御機能により、転移ゲートを操作しています。》

「え、俺ってデウスマキナに呼ばれたのか!?」

 ヒロムびっくり。でも、転移者ってかなり珍しいみたいだから、意図して呼ばれたのかも・・・・。

《いいえ、呼んでいません。》

「あ、呼んでない、そうですか・・・・。」

 あ、目に見えてがっかりしてる。


《惑星を包囲している空間遮断同様に、空間制御に一時的揺らぎが発生する場合があります。》

 僕がこの惑星に墜落するに至った、空間的隔離の穴のことかな。

《本来、当惑星は娯楽施設として運営予定でしたので、入場用のルートとして転移ゲートを設置しています。空間制御の揺らぎにより転移ゲートが誤動作、ヒロム様をゲートに巻き込んだものと推測されます。》

「つまり、俺が転移してきたのは、事故ってことか・・・・・。」

《はい、その通りです。》


「いや、まて、俺の世界にはミルーシャ・オンラインっていうゲームがあるぞ? あれはどういうことだ? スキルや術法もほぼそのままだぞ!?」

 ほぅ、それでウイスパーチャットとか、変な機能を知っていたのか・・・・・。

《20年ほど前、ヒロム様と同様に転移者が来ています。その際、さまざまな機能や、設定項目のご説明をさせていただいております。》

 あー、それで帰ってから、それをゲームにしたと。

 ん、ということは?

「転移ゲートでヒロムは帰れるってことかな?」

 こらヒロム。驚愕の顔で僕を見るな。そんなに驚くことか?

《はい、可能です。私の操作により、任意に転移ゲートを開閉することが可能です。》

「・・・・・・・・。」

「ヒロム、どうする?」

 ヒロムは無言で考え込んでいる。

 彼としては、この世界は住みやすいのかもなぁ。少なくとも、元の世界にはスキルや術法は無いんだろうなぁ。

「・・・・・・、少し考えさせてくれ・・・・。」

 それきり、ヒロムは黙ってしまった。彼なりに思うところがあるんだろう。


 僕たちは大の月から離脱すべく、再びソレイユに乗り込んだ。




 月から戻り、再び荒野の地に着陸した。

 デウスマキナには管理者との通信用回線も設定しておいたし、これで僕の任務は完了だ。

 今後は管理者が監視して、捕食者のような化け物が生み出されることが無いようにしてくれるだろう。

 それに、惑星を包囲する空間遮断も操作可能になったので、脱出の目処もたった。ソレイユも飛び立てる状態だ。



 皆、それぞれに三々五々解散していく。

 僕とラファは荒野に並んで立ち、潮が引くように引き上げていく人族亜族両軍を眺めていた。


 これからは対話で歩み寄るとは言っても、争いの歴史が長かった。本当の意味での戦いはこれからかもしれない。

 そんなことを思いつつ、人々の流れを眺めていると、ラファが口を開いた。


「一緒、だったから、」

 ゆっくりとラファが話し始める。


「一緒だったから、ね・・・、ここまでこれた、と思う。」


「それはお互い様だよ。僕もラファのおかげで助かった。」

 ラファはゆっくり首を振る。

「ユウは、きっと一人でも、たどり着いたよ・・・・。」


「そんなことないよ。」

 会話が続かない。沈黙が続く。風が流れていく。


 どうしよう、なんか話さないと。

 こういう時、何を話したらいいんだ!?



「故郷にね・・・・、」

「はい!」

 ラファの話出しに勢いよく反応してしまった。

「仲良かった、幼なじみが、いるんだ。」



 それきり、再びラファは黙ってしまう。

 "仲良かった"か。




「私も、世界を変えた、英雄の一人、だよね。故郷に帰ったら、誉められるかな。」

 ラファは一歩前に出る。

「ありがと、ユウの、おかげ。」


 そのまま、ラファはこちらを向かずに二歩、三歩と進んでいく。

 どうする、このままでいいのか? 僕は何を迷っている?

『あなたが一番幸せと思う道を選んでほしい。』

 アイの言葉が脳裏に浮かぶ。


『さぁ、今です!!』

 ・・・・・?

 アイさん!? いい感じの回想にチャチャ入れないでください!!





「ラファ!!」

 ラファは足を止める。

「い、一緒に行こう!! いや違う、一緒に来てくれ!! 僕は君と生きていきたい!!」



 ラファは僕に背を向けたまま、声を絞り出すように答える。

「・・・ありがと・・・、ユウは、優しいね。私は、一人でも、大丈夫・・・、だから。」

「いや、違う、これは僕のわがままだ! 僕が来てほしいんだ!」



「・・でも、私は、きっと、足手まとい・・・、なるよ。」

 ラファの声がかすれている。僕の中で何かが吹っ切れた。

 僕はラファに近づき叫んだ!

「何かあっても、僕がなんとかする! だから僕と一緒に来い!!」

 僕はラファの背に向けて手を伸ばす。

 ラファが静止して、動かない。


 あーっと、ちょっと強気過ぎただろうか。

「・・・・あっと、その、一緒に、来ていただきたいんですが・・・、どうですか?」

 だ、だめだグダグダな感じになってきた・・・・。



 ラファはゆっくり振り返る。顔は涙でくしゃくしゃだ。

「がんばって・・・・、一人で、行こうと、思ったのに・・・・、」

 ラファはゆっくり僕の手をとる。

「そんなに、言われたら・・・・、一緒に、行きたく、なっちゃうよ・・・・」

 僕は手を引き、ラファを抱き寄せた。暖かな体温を感じる。




『素晴らしい告白でした。録画しておきました。』

 アイさん、台無しです。

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