表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/97

10.セントラル決戦

 ソレイユで大気圏に突入する。海上を幾筋もの閃光が走り、爆炎が咲く。

「アイ!!」

『対象の攻撃行為を確認、攻撃対象は無差別と確認、対象を危険度災害級の敵性勢力と断定、銀河連邦管理者へ攻撃許可要請・・・・・要請承認、破壊許可。』

「全砲門展開!! シールド全機展開!!、サテライト全機射出!!、突っ込め!!!」


 スクリーンに敵の姿が映る。あれは、コルンの護衛長をしていたディムナガルダだったか。

 全身が青白い炎に変わりつつある。だが辛うじて胸から上は実体を残しているように見える。まだ間に合う!!、間に合わせる!!

 僕はソレイユで吶喊する。天墜の梢の穂先から、まばゆい白銀が迸る。空間を切り取るような幾筋のも光により、ソレイユのシールドが次々破壊される。

 ソレイユからもレーザー砲を乱射するが、奴は上半身には当たらないように躱す、上手いな。


 無線式自律飛行砲台サテライト6機が襲い掛かる。ディムナガルダの周囲に回り込み、レーザーを射撃するが、躱され、一つ一つ落とされていく。

 自動攻撃関係では当てられないか・・・・・。

 奴の粒子砲がソレイユ側面を掠め、激しく振動する。


「正面ハッチひらけ!」

 僕は格納庫の中で既にエグゾスーツを装備し、発射体勢を取っていた。肩に搭載されている砲の先端部、重力子が収束する。

 重火力搭載型エグゾスーツの最大攻撃兵器グラビトンレイ。高圧縮の重力子を用い、高重力により対象を分子分解させる。

 格納庫の中からディムナガルダに向け、グラビトンレイを発射した。

 カウンターのように相手からも粒子砲が発射される。

 

 重力弾はディムナガルダの下半身に命中し分解した、だめだ!そこでは効かない!!

 奴の粒子砲は僕の肩を掠め、ソレイユ格納庫の奥に突き刺さる。ソレイユから爆発音が響く。サイトウさんの怒声も聞こえた気がする!!

 急いで格納庫横のハッチを破壊して飛び出す。

 グラビトンレイの砲身は破壊された、が、どのみち溜めが長すぎる、次は撃たせてもらえない。

 すでにディムナガルダの下半身は元通りに再生している。やはり生身を残す胸から上への攻撃以外は意味が薄い。


 ソレイユは海に激突した。各部から煙を吹いている。

 僕はアイに指示し、格納庫に残った全フライングシールド120枚を発射、僕の周囲で20枚旋回、残り100枚を次々ディムナガルダに体当たりさせる。

 同時に、相手を中心に旋回しつつ、両方の腰にある50mm砲、両手、両足、両側頭部についているレーザー砲から一斉に攻撃を加える。

 

 ディムナガルダが射撃とシールドの雨を縫って、接近してくる。穂先から光が漏れる。

 とっさにSDモードを起動する。鼻先を掠めるような粒子砲を躱す。両手スーツ内部に仕込まれているダガーを展開、刃にプラズマアークが灯る。プラズマダガーだ。

 ダガーで首を斬りつける。槍の中ほどで受け止められる。激しく火花が散る!! 槍には電磁防壁の機能があるのか!?


 ダガー二刀流と槍とで激しく切り結ぶ、50mm砲が切り落とされる、穂先に光球が灯る。間にとっさにシールドを5枚滑り込ませる。

 光球から出る光の束が横薙ぎに払われる。シールドが豆腐のように刻まれる。接近で放たれた粒子の残滓がスーツを削る。

 ディムナガルダは粒子砲を海にばら撒いた。爆発的に水蒸気が吹き上がり、一瞬にして視界を埋める。


 水蒸気の壁を迂回する。と、奴は距離を取り、腰だめに槍を構えている。

 何かを溜めている。あれは・・・・・、射線の先にはセントラルの都市中心部!?

 撃たせない! 止める!、残ったレーザーを乱射しつつ、シールドをディムナガルダめがけて飛ばす。奴は左手をまるでムチのように変え、それを振り回して攻撃を打ち払った。


 僕は奴の攻撃を受け止めることを決意する。このチャンス活かしてくれよ・・・・。

 残りのフライングシールドは65枚。

 僕はシールド10枚を花びら状に展開する。

 シールドに搭載されたエネルギーコンデンサを直列し、重力場電磁防壁を展開する。シールド10枚使い捨ての贅沢防壁だ。それを2枚、3枚・・・・。


 ディムナガルダの極大粒子砲が発射される。これまでで最大の閃光が放たれる。防壁に衝突した粒子砲が拡散され、周囲に粒子が拡散する。

 4枚目構築、2枚目が消滅!

 5枚目構築、4枚目が砲撃を防ぐ!

 6枚目構築、5枚目が崩壊していく・・・、耐えてくれ・・・!!

 視界がまばゆい光で埋め尽くされる!!





 光が収まる。辛うじて残った6枚目のシールド達が、エネルギー切れで墜落していく。何とか防ぎ切ったぞ!

 ディムナガルダも大技後のためか、腰だめに槍を構えた状態で止まっている。

 その時、ディムナガルダの背後、プラズマナイフを手に、リックが飛び掛る! この瞬間まで、リックはソレイユの影に隠れていたのだ。

 同時に僕も残ったシールド5枚と共に飛び掛る。


 ディムナガルダの首にリックが刃を振り下ろす・・・・・、が、石突から粒子が放出され、リックが飲まれる。銀色の輝きが広がる。

「やったなぁぁ!!!!」

 シールド5枚は事もなげに切り裂かれる。僕の右ダガーと天墜の梢が交錯する。ダガーが砕けた。左で・・・・!!

 穂先が僕の胸を捉える、みしりと嫌な音が胸骨から響く。


 銀色の幕が破れ、中からリックが姿を現す。

「聖杯は、壊れない。」

 リックの一閃がディムナガルダの首を飛ばす。

 ディムナガルダの首はゆっくりと落下し、海に落ちた。



 首がなくなったディムナガルダの体から、青白い炎が吹き上がる。まだ、動くのか・・・・!?

 青白い炎はディムナガルダの体を燃やし尽くしていく。体が燃え落ちていく。天墜の梢が手からすべり落ちる・・・・。

 天墜の梢は、海面に浮いていた船の残骸に突き刺さった。




 管理者が派遣した救助艇と護衛の警備ロボット数百台が到着した。

 天墜の梢は、すぐさま回収され、ロックのかかるボックスへ格納された。このまま隔離施設へ運搬され、厳重に封印されることになる。


 着水したソレイユの上。リックはダルクさんと相対していた。ダルクさんは上半身だけだ。下半身は液体化している。

「すまなかった、俺はお前の人生をゆがめてしまった・・・・・。」

 ダルクさんが、悔恨のにじむ謝罪をした。

「・・・・、別に親父にゆがめられたとは思ってねぇよ・・・・。俺ぁ、好きなことやって生きてるしな。」

 リックは斜め上を見ながら、そう言った。

「そうか・・・・・、ありがとうよ・・・、最後にお前に会えて、よかった。」

 そういうと、ダルクさんはこちらを見た。

「ユウ君にも、いろいろと世話をかけた。ありがとう・・・・。」

「いえ、こちらこそ、ダルクさんには助けられましたから・・・・。」


「俺もそろそろ時間らしい・・・・、少しの時間だったが、昔に戻ったみたいで、楽しかった・・・・・。それじゃあな・・・・・。」

 ダルクさんが崩れていく・・・・・、

「俺は!!・・・・、親父にあこがれてた・・・。ゆがめたなんて言うなよ! かっこいい背中だったぜ・・・・・。」

 ダルクさんは少し驚いて、そしてにやりと笑って崩れ去った。

 銀色の液体が収束し、小さな杯になった。これが聖杯の本来の姿なのだろう。


 聖杯も天墜の梢と同じく、回収され、封印されることとなった。




「任務達成・・・・・かな。」

 なんとか挽回できたかな。

「そういえば、レイヴンってのは、海賊として手配されているらしいな。」

 僕は思い出したかのようにリックに言う。

「・・・・・・・、悪い奴もいるもんだな。」

 リックはこっちも見ずに言った。


「あー、疲れたなぁー、今は戦後でバタバタしてるし、小型艇が1艇くらい離脱してっても、気がつかないよなぁ。あ、僕船が壊れてた! どうしよう、今度こそサイトウさんに殺されそう・・・・・、管理者に言ったら直してくれるだろうか・・・・。」

 一瞬の間、リックは思い出したように言う。

「あ! そーいやぁ、レンタルビデオ返してないんだった!・・じゃ、またな!」

 リックはあまりにも白々しい言い訳をしつつ、ソレイユの横に止めてあった小型艇に飛び乗る。

「・・・・お前には借りができた・・・・・。まあ、また会う機会があれば、返すかもな!」

 小型艇は浮上すると、飛び去った。




 管理者が音も無く横に立っていた。

「行ってしまいましたか。」

 あー、完全に見られてたかな・・・・。

「手配犯を見逃すことは、犯罪にあたります。」

「・・・・・。」

「が、彼も今回の功労者。多くの命を救ったのも事実。本来は褒め、称えられるような功績ですが、これまでの罪状で帳消しでしょうか・・・・。」


 管理者は空に残る軌跡を見上げる。

「今は戦後処理でバタバタしています。私も万能ではありません。離脱する小型艇を見落としてしまうこともまた、あるかもしれません。」

「ですよね・・・・。」

 管理者ににらまれた。

「いえ、なんでもないです。」

 管理者が消える。どうやら今回はお目こぼしいただいたみたいだ。今後は気をつけよう。



 そういえば、僕も結構手負いだった。なんだか。くらくらしてきた気がする。

『勇介様は無茶をしすぎです。私が居なかったら、何度死んでいたことか。』

 ありがとうございます。アイさんのおかげで生きています、僕。


『それと、メカ職人サイトウが、勇介様に話があると言っています。』

 気を失っていいですかね?



====================



「手間が省けたと見るべきか。」

 父の訃報を聞き、私はそう呟いた。

「すぐに幹部を招集しろ。父無きあとは私が商会をまとめる。」

 私は手の中にある球体を転がす。

「これを残してくれたことが最大の功績だな。」

 

 羅針盤は怪しい光を放っていた・・・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ