7.ドッグファイト
無重力で銃乱射事件を起こした彼らは、しっかり拘束して予備用の部屋に閉じ込めた。
少々手狭かもしれないが、意識はないから気にならないだろう。ああ、もちろん管理者から制圧許可はとった。
『接近警報。小型戦闘艇接近。数3』
追加オーダー入りましたー。
「防御だ」
『フライングシールド展開。』
ソレイユにもフライングシールドがある。
ソレイユの場合はシールドは20機、直径2m、厚さ200mmの六角形、白いタケノコもとい、ジアースの中央設備棟を防衛していたものと同じだ。
表面は耐熱加工、電磁、磁気障壁も張れるため、荷電攻撃にも対応できる。大抵はレーザー兵器だから、耐熱処理で耐えるのだが。
コルンの配下か? 4人では不安だったのか。
戦闘艇が攻撃してくるが、フライングシールドで防ぐ。
『対象からの攻撃行動を確認、対象を敵性勢力と断定、銀河連邦管理者へ攻撃許可要請・・・・・要請承認、制圧許可。』
「制圧かぁ・・・・・・・、というか、さっきから妨害電波は出てないの?サロマナでは通信できなくてやられたけど。」
『あの時は至らず申し訳ありません。現在も通信妨害は行われています。しかしながら、ソレイユの持つ通信設備は高出力で、複雑に周波数を切り替えての通信も可能であり、あの程度の妨害電波では妨害されません。』
アイちゃんをいじめたわけじゃないんだ、ごめんよぅ。それもこれも全部コルンが悪い。
「では、制圧許可ってことなので、シールドでがんばるか。」
僕はブリッジに戻り、攻撃手の席に着く。
「アイ、シールド1枚の操作をこっちへ、あとソレイユの操艦を任せた。」
『かしこまりました。』
許可されたのは制圧のため、うっかり撃てない。中の人ごと焼き払ってしまいかねない。
僕は攻撃手の席に着き、深く腰掛ける。視界がフライングシールド搭載のカメラにリンクする。まるで自分が六角形の円盤になって、宇宙に浮いているようだ。
エグゾスーツでの飛行の要領で、フライングシールドを操作する。
視界の隅にはレーダーが表示され、敵機がポイントされている。敵機のポイントに向けて、シールドを移動させる。
見えた。敵機の形状はまさに三角錐。先端が船首のようだ。胴体部の溝からレーザーを発射するらしい。
敵機の正面から体当たりを敢行する。敵機3機は散開して回避する。
中央の1機に狙いをつけ、背後を追いかける。
旋回、上昇下降を繰り返し、僕を振り切ろうとする。が、もともとの機動性能が段違いなため、まったく振り切れてない。
乱雑な機動で体当たりし、三角錐を弾き飛ばす。吹き飛ばされ、錐もみした三角錐は、手近な小隕石に突き刺さった、すごい!
残り2機も適当に体当たりしたら、動かなくなった。
うははは、圧倒的ではないか、わが軍は!!
コルンの部下が襲ってきたということは、すでにリックとの取り引きは反古になっているような気がする。が、一応聖杯を回収しておくか。
指定座標に向け、ゆっくりと航行する。高い金属反応? あれは・・・・・、棺桶か?
棺桶に見える何かを収容した。
『これは一人用の救命カプセルですね。長期の宇宙漂流を想定し、コールドスリープ機能が付いています。』
全体に金属で成形され、顔正面にあたるであろう部分にだけ、小さな窓がつけられている。
窓の遮光フィルタを外す。
少しビクビクしつつ中を覗く。中には・・・・・・。人は入ってない。
「空っぽか?」
やや安どしつつ呟く。コールドスリープ機能も動いていないし、ミイラでも入ってたら心臓飛び出すところだ。
「開けてみるか。」
救命カプセルの上部を開ける。
小窓から見たときにはわからなかった。中は水銀のような、金属光沢を持つ液体状の物体が入っていた。
まさかこれ、人間一人分くらいの液体金属とか言わないよな、不吉な予感しかしない。
「聖杯じゃなかったのか・・・・・?」
「せいはい・・・・・」
突然液体金属が波立つ。やっぱりただの液体じゃなかったぁぁぁ!!
「いま・・・・・、せいはいと・・・、いったか?」
液体金属が立ち上がり、人の上半身の形になる。金属光沢でわかりづらいが、壮年の男のようだ。
『外部通信です。お繋しますか?』
アイが通信の受信を伝えてきた。なんてタイミング、今忙しいのに。
「よう、無事か?」
リックだった。画面に映るリックはコートもボロボロで、いつも以上に薄汚れいていた。
「無事は無事だけども、今少々取り込み中。」
画面越しに金属光沢のオッサンを見つけ、リックは怪訝な表情をする。が、一瞬あとに驚愕の表情に変わる。
「お、親父・・・・・。」