表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/32

7.女神様に文句を言った


 街まで歩くのにたっぷり時間があるのでサリーテスと通信する。


(……どうでしたでしょうか)

「……サリーテス、ちょっとやりすぎじゃねえの?」

(……おっしゃる通りです……。すみません……)

 サリーテスが申し訳なさそうに謝る。


「やっぱり女神様自ら降臨ってのはまずかったな」

(はい……)


「戦争もなんでも女神様が降臨して止めさせる、一見いい方法みたいなんだけど人間の女神信仰が度を超すわ」

(私も就任したてで、はりきっちゃってて、それであの……、ほんとはそういうのは良くないってわかってたんですけど……)

「でもって教会が権力持ちすぎ。あのでかくて豪華な教会見ただけでどれだけ国民が金を取られてるかわかったもんじゃない。政府も兼ねてるんじゃサリーテス様の名のもとにやりたい放題、国民があれじゃ大変だよ」

(はい……)


「獣人差別も深刻だ。ここまで女神様の名のもとに世の中が完成してて、平和が続いてて、誰もそのことに疑問を持ってない。今の状態で満足しちまってる。獣人自身もだ。これどうすんだ? もう生半可なことじゃ変えられないぞ?」

(申し訳ありません……)


「宗教って神様の名のもとに人間をいかにコントロールするかっていう治世の手段だ。法律も制度も整備されていない世の中でとりあえず人間に罪の概念を教えるのに神はいい方法なんだが、戦争をしない、平和万歳、そんな世の中で神が万能すぎると法や制度の制定が進まない。なんでも教会の思い通りだ」

(その通りになっちゃいました……)


「バランスだな。なにごともバランス。国と国とのパワーバランスによる均衡とか、教会と政府の分権分立、貧しいものと富めるものの格差の是正、権力ある者と虐げられている者との平等の観念。あらゆるもののバランスが最悪に悪い。悪いと考えられているものの中にも、実は必要なものもある。この国はいびつだ」

(……すごいですサトウさん。たった一日の滞在でなんでそこまで見通せるんですか。私恥ずかしくていたたれません。勘弁してください)


「もうちょっといろいろ調べる必要があるな。サリーテス、全部君が悪いってわけじゃないんだよ。これ人間の弱いところ、ダメなところが全部出た感じがする。理想の世界に放り込んでも人間は腐ってしまう」

(はい……)

「しかし人間ってのは本当にダメな民族だな……。神様が放置してもダメ、神様が降臨してもダメ、神様がいっぱいいてもダメだし人間は弱い生き物だな……」

(はい、私たち女神の間でも、正解はなくてトライアンドエラーの繰り返しですね)


「エルテスもそうだった。俺のいた世界でもそうなんだから正解なんていつまでたっても見つからないのかもしれないな……」

(サトウさん今までなにしてたんですか? たった一日でその情報量は凄いです。それとちゃんとやっていけてます?)

「とりあえず俺は金の心配はないよ。稼ぐ手段はいくらでもあるからね。平和だと金と命の心配はまあしなくていいから楽だね。チートのおかげだけど」


(あの……)

「うん?」

(泊まっているお宿なんですけど……)

「うっ、うん」

(……狙ってましたよね?)

「ハーイ、サトウ、カミサマニウソツカナイ。ネラッテマシタ」

(でしょうねぇー……)

「うん、マップにちゃんと『()()、チェルシー』って書いてました。知ってました。行くしかないでしょ突撃するに決まってるでしょそりゃあやるでしょ」

(お盛んなんですねー……)

「はーい、だって女房と死別してさみしかったんだもん。いまさら一人寝とか悲しすぎるもん。独身に戻ったんだから少しぐらい遊んだっていいじゃん。地方に出張したら真っ先に風俗行くってしがない独身の会社員のたしなみのひとつですから」

(だからって……)


「いいんだよこれは大事なことなんだよ相互理解は下半身からってのはすげえ有効なんだよゴルゴ13だってやってることだよ」

(なんですかその『ゴルゴ13』て)

「一流の殺し屋なんだけどね仕事の前に街で娼婦を買って情報収集するんだよ。一般人にあれこれ聞くよりも、裏の世界とか市民の本音とか本当の情報を入手するにはそれが一番手っ取り早いの! そういう情報って貴重なの! 本当に仲良くならないと聞けないことなんだから下半身から仲良くなるの! 悪い!?」

(それにしたって……)

「いいじゃんだったらなんで獣人差別ほっとくの。女神サリーテス様のお力でかわいそうな女の子たちを救ってあげなよなんでそれやらないの」

(やりすぎはダメだとわかったので最低限戦争以外はノータッチということに)

「だったら見逃してよ悪いようにはしないよ」


(……エルテス様の時も魔王様をメロメロにしてしまったとか……。魔王様はともかくまさかサトウさんがケモナー落ちするとまでは想定外でしたので。ストライクゾーンがこんなに広い人だとは思いませんでしたわ)

「やかましいわ」


 おっさんになったらねもうストライクなんて待ってらんないのボール球でもワンバウンドでも絶好球なのがおっさんなの。

 らぶちゃんはストライクでしたよど真ん中でしたよ振るしかないでしょ俺のバットを。


 まったく女神様はそこらへんがわかってないのう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ