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6.初仕事に出かけた


 娼館チェルシーを出て、服屋に行く。

「いってらっしゃいませー!」とらぶちゃんが見送ってくれた。

 メイド喫茶かよ。いやメイド娼館か。異世界万歳。


 これからちょっといろいろ金がかかりそうなので目いっぱい儲けておこう。

 ダイヤばかり売るのもなんなので、まずはハンターとして普通にやっていけるかどうかだ。アウトドアの仕事なので、ガテン服が必要だ。


 おう、ハンター服あるじゃん!

 ハンターの服装、どこが違うかっていうと「迷彩」だ。

 いわゆるカモフラージュ、カモフラ柄だな! めっちゃ高いけど今の俺なら大丈夫だ。

 動物から見つからないように草や木、葉っぱの色合いを混ぜてまだらにしてある。

 日本でハンター装備というとあのオレンジの目立つやつだが、あれは仲間内での誤射を防ぐためのものだ。海外ではこのような動物に見つかりにくい迷彩のハンター服は珍しくない。

 それに加えて皮のブーツ、手袋、迷彩の帽子、革の背負い袋、大きめの布袋を買う。それから下着、靴下、普段着とか身の回りもいろいろと。

 次に雑貨屋に行ってロープ、紐、ハンティングナイフ、剣鉈(けんなた)、折り畳みのノコギリ、ハンター装備一切合切をまとめて買う。


 一通り買い物を済ますと、もう一度娼館チェルシーの門を叩く。

「早いよサトウ、営業は夜からだよ……」

 支配人あきれてます。

「『サトウ』ってなんだよ……。身内扱いはええよ支配人。一応客」

「んーそうだったね。なんかアンタそういう雰囲気にさせるとこあってさ、悪い男だねぇ」

「ははは、まあ俺もそのほうがいい。サトウでいいさ。仕事に行くからちょっと着替えさせて。あと荷物も預かってほしい」

「娼館を普通の宿屋に使う気かい? 大した男もいたものだねぇ。あ、あたしのことはパリスって呼んでいいよ。ラブラン呼んでくるから待ってな」


 すぐにらぶちゃんが大喜びで飛んできてかいがいしく世話をしてくれる。

 部屋を使うのは面倒なので娼館のロビーでさっさと着替える。

「はううっ……。素敵ですサトウ様、昨日もどこの領主のおじさまかと思いましたが、着替えるとすごい一流の凄腕ハンターって感じで渋いですぅ……」

「まあね、本業はちょっと違うんだけど、こっちもやってたからね」

 うん、カーリンの補佐でよく魔族領内の魔物退治やってたからな。

 しまいには王国からも依頼が来たっけ。

「まったくだねぇ。普段は優男でぜんぜん強そうに見えないのに、それ着るとなんか人殺したことがありそうで怖いわ……。あんた何者なのかねぇ」


 さっきからロビーの隅っこから、獣人のメイド隊がちらちらこっちみて「キャーッ」とか嬌声上げてる。うんパンツまで履き替えたもんな。昼間は館の掃除とか洗濯とかベッドメイキングとか料理の仕込みとか普通のメイドの仕事してるらしい。

 うん、ハーレム作る気は全然ないからね。俺はその辺そこらの童貞修羅場主人公とは違うからね。あと俺美男子でもなんでもない普通のおっさんだからね。


「着てた下着とかシャツとか洗濯頼んでいいかい?」

「いいよ。うちは一応宿屋だから、普通に宿屋の仕事は全部ラブに頼んでいいよ」

「はい! 私がお洗濯させていただきます! 絶対ほかの子には触らせませんから!」

「いやそこは普通に洗濯屋とかあったら頼んでいいから。パリス、お土産は何がいい?」

「うーん……頼んでいいなら肉だねぇ。こう、館の評判が上がるようないい肉あったら持ってきてほしいねぇ」

「わかった。ありがとらぶちゃん」

 チップに銀貨5枚を渡すと、お礼に抱きついてきてちゅっと口にキスしてくれる。

「いってらっしゃいませー!」

 いやメイド隊総出で見送ってくれなくていいから。

 この歳で恥ずかしいからそういうの。

 

 冒険者協会の門をくぐる。

 依頼票が掲示板に張ってあるので、それを適当に見ると……。

 護衛の仕事、指名手配の犯罪者の捕獲、僻地の調査、地図の作成、その他専門性の高いものはランクがかなり高いな。まだFクラスの俺には無理だ。

 買取素材は獲物と値段の表が貼り付けてある。

 こちらは依頼じゃなくて、持ち込めばそのまま買い取りで、引き受けるにあたって手続きは不要だな。

 これからやるか。

 いろんな食材?風のものが並んでいる。こっちの生き物のことはよくわからん。


 カウンターで、「こっちで獲れる獲物の場所とか案内とかわかるパンフレットみたいなものはあるかい?」と聞いてみる。

「……見違えましたよサトウさん、昨日見た時は、こんな紳士に冒険者なんかできるのかと思ったのに……」

 受付の嬢ちゃんがびっくりする。

「ハンターのハンドブックがあります。一冊銀貨5枚です」

「じゃそれを」

「はいどうぞ」


 それを受け取ってパラパラとめくりながら 城壁門まで歩いてゆく。

 うーん……高そうな高級食材と、うん、このカモシカでいいか。

 シカとは言うけどウシ科の動物で美味らしい。日本だと天然記念物だから獲ったら違反だぞ。

 キョーラル渓谷ね。距離も近いしなんとか日帰りできるかな。

 街を離れ、人目も無くなったところで、重力を操作する【フライト】で飛び上がり、地図系魔法の【マップ】に付属する【ナビゲーション】で確認しながらキョーラル渓谷へ向かう。


 岩山を挟んで小川が流れるいい場所だ。

 上空から、カモシカを探す。 

 うん、つがいのカモシカが岩山に張り付いてる。

 強靭な足腰でこのような岩山でも昇り降りを簡単にしてしまう。人間が近寄れず銃が無いとなかなか獲るのが面倒な獲物だな。

 木立に隠れながら近づき……【サンダー】で二頭同時に雷を落とす。

 空気を高速で循環させ、静電気で高圧電気を発生させる魔法だ。

 俺の魔法はなんでも科学で説明できるんだよな……なんだか昔の忍者マンガみたいだ。そこにロマンはあるのかい。


 バリバリバリッと大音響と共に雷撃が落ち、カモシカがぶっ倒れるので素早く近づいてハンティングナイフで頸動脈を斬る。

 後ろ足を開いて二本のロープで木から吊るし下げ、血抜きを行う。

 この血抜きをちゃんとすると生臭くなくて傷みの少ないいい肉が獲れるのだ。

 あとは解体。

 毛皮はどうするかな……、一応持ち帰るか。

 その後前足、首肉、ロース、尻から後ろ足と切り分けて部位ごとに袋に詰める。

 内臓から、心臓ハツ肝臓キモも一応回収しておこう。値段がつくかどうかは帰ってからのお楽しみだ。

 肉には全部【フリーズ】で半解凍ぽく凍らせて保存しておく。

 空気中の水分を集め、空間を閉じ込めて真空状態にすると水の蒸発熱で温度が奪われ、氷点下の空間を一時的に作る魔法だ。

 肉に直接これをかけてしまうと、フリーズドライ状態になってしまうので、あくまで「冷凍の空間」というやつを作るところがポイントだ。


 こういう、狩りのノウハウってのは前の世界で覚えた。

 食材として野生動物を獲るってのは一家の主人として当然できなければならない仕事なのでしっかり覚えさせられたよ。

 俺はアイテムボックスみたいな便利魔法は無いからな。まあ収縮魔法の【コントラクション】をかければいいけどあれ小さくなるだけで重さは変わんないんだよね。

 ……そうそう、これやっとかないと。

 角をのこぎりで切り、一応「カモシカ獲りました」という部位証明にバックパックに入れる。あと、口をひらかせてタンも採る。

 売れるかな……。この国の住人タン食うかな?


 最後に、これは実験だ。

 吊るしてあるカモシカの残滓に、【ギガコンプレッション】をかける。

 不純物を取り除くために、いつもより長めに、ガッチリと圧力を保持。

 炭素の単結晶であるダイヤモンドは、ゆっくり時間をかけると不純物を追い出しながら結晶が成長する。さあどうなるか!

 できたダイヤモンドは薄い青色だった。生物の主元素は炭素、それに微量元素がいろいろあるから何色になるかと思ったが、必須元素ホウ素が少し残ったか。

 うんこれは価値が高いぞ。青色ダイヤは希少なはずだ。


 あまり早く帰ってもしょうがないというか、怪しまれるので、渓谷を【フライト】で抜けたらあとは歩いて帰る。夜までには帰れそうだ。

 街が近づき、農村が見えてくる。

 うん、農業も盛んだな。戦争のない平和な国って、まあそこだけはいいな。




 おかげさまで掲載二日でPV2000をいただきました!ありがとうございます。

 これで自信をもって連載が続けられます。

 ありがとうございました。

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