5、ウサギちゃんに大サービスした
「ベッドに寝て。うつぶせに」
「あの……もう……ですか?」
「いいから」
らぶちゃんが恥ずかしがりながら全裸のまま大きな丸いベッドにうつ伏せになる。
いや全身真っ白なふわふわの短毛で覆われてるから全裸って感じは全然しなくて、その点で興奮するとかあんまりしないんだけど。
「いったいどうしたのこの傷」
「あの、私はウサギ族ですから……」
背中やおなか、お尻の白い体に傷がある。ぶたれたもの、引っかかれたものや噛みつかれたような傷。古い傷、最近付けられたばかりの傷。
「そういうお客様もいて、その、私はウサギですからそういうのに興奮するお客様も少なくなくて、っていうかウサギを狩りたい本能みたいなものなのでしょうか。その。お目汚し申し訳ありません……」
「そのまま楽にして。痛くしないから大丈夫だよ」
そう言って俺は手のひらに【ヒーリング】を集中させ体をゆっくり撫でてゆく。
「あんっ。あぅ。あっ……気持ちいいです……」
「ほら、綺麗になった。あとおしりも、もうちょっと」
「あん……。あったかいです」
「はい、仰向けになって」
「やん……恥ずかしい。あっ」
「ここも、ほら。ね?」
「あん……」
もう胸とかおっぱいとか、噛まれた傷を撫でさすって治療していく。
あちこちのぶたれた跡も。
もう30分ぐらいらぶちゃんを思う存分【ヒーリング】で撫でまわして完治させた。
らぶちゃん、どこを触ってもふにゃふにゃで気持ちいい……。
「すごい……サトウ様は魔法使いの方なんですか?」
「まあそんなもん」
綺麗になった自分の体を見てらぶちゃんが驚く。
「治療できるとかすごいです。こんなの教会の方しかできませんのに」
「医者とかにはかかれないの?」
「医者も治療ができる魔法士もみんな教会関係者っていうか教会に独占されていますので、異教徒は治療してもらえません……」
「ひどい国だな。いったい誰がらぶちゃんにこんなことをするの?」
「おしのびでくる教会の……いえ、内緒にさせてください……」
「教会、本当にマジで腐ってるな……」
らぶちゃんの赤い瞳から涙がぽろぽろ落ちる。
「ありがとうございます。ありがとうございました」
「……礼を言うのはまだ早いよ」
「はい。いっぱい可愛がってください」
外はふわふわ、中はとろとろ。
まるで天国のお菓子のように今まで食べた中で一番甘くて美味しゅうございました。
「お客様、お客様?」
むにゅむにゅされて起こされた。
ん、あの上品なおばちゃん?
「当館チェルシー支配人でございます。朝湯の時間ですよ」
「んーっ」
大きく伸びをして起き上がる。
「あ、おはようございます」
「あっおはようございます支配人っ」
らぶちゃんもぴょこんと起き上がって礼をする。
「いつまで寝てるかと思って心配に……ってラブ、その体!」
「はい、サトウ様が治療してくださいまして」
「あんたが……へえー……あんた魔法使いなのかい?」
驚いて素に戻ってますよ支配人さん。
「ああ、まあ、そんな感じ」
「勝手に入ってきてすまなかったね。起きてこないからラブランがまたなにかされたのかと思ってね」
「その話詳しく聞いていいかい?」
「うーん……、まあ治療してもらったからしょうがないね。しかし驚きだよ。いい腕だねあんた。ラブラン、綺麗だよ。よかったねぇ」
「はいっ!」
「まず、ここは娼館?」
「今更何を……って、気が付かなかったかい? 金貨6枚は高かったろ」
「えーと、信じてもらえるかどうかわからないけど、俺は実はほかの世界から来た異邦人だ」
「あたしゃそんなの信じないけど、アンタが無知ってことはわかるよ」
「うん、それを前提に聞いてほしい」
「しょうがないねぇ」
三人でベッドに座って、話し合いが始まる。なんだかおかしな状況だな。
「まず思ったのはらぶちゃんがなんであんな目にあったかだな」
らぶちゃんのふっくらしたふわんふわんの先っぽのピンクをあんなふうにして許せないぞ。
「……教会のお偉方にこういうのが好きな変態がいてねぇ、いつもラブを指名するのさ。お偉いさんだから店としても断れなくてね、で、ラブも引き受けてはくれるけど、店のためを思ってやってくれてるからあたしも心苦しくてさあ……」
「いいんですマスター。私なら大丈夫ですから」
「俺はちょっと許せないなそいつは」
「店の営業なんて教会のお目こぼし次第だからねぇ、ここを潰されたらここの子たちも行く場所がなくなってしまうよ。あたしはこの店を守る責任があるのさねぇ」
ふーん……、支配人さんも悪い女ってわけじゃないんだな。
「この首輪はなんだ?」
「あんたホントになんにも知らないんだねぇ。これはまあ隷属の印、誰かの所有物ってことさ。ラブの場合はこの館が所有してる。ラブはここに売られてきたんだよ」
「親に売られたってこと?」
「まあそうだね。親が教会の寄付だかなんだかで騙されちゃってね、信徒になれるって札買わされて、それ反故にされて借金まで背負わされてねぇ。借金のカタにまあムリヤリね。まあ元々親も奴隷なんだけどね」
「そうかぁ……」
「ほれ、あたしも似たようなもんさね」
そう言って支配人が自分の首輪を見せる。
「あたしもこの店で働いてて、トウが立ってきたんで支配人をやれって女の子をまかされたのさ。ホントの経営は大商人」
「支配人さんも獣人なの?」
「そうさ」
メイド帽を取る。ネコミミだ。人間に近いほうのタイプか。
「その首輪は主人に逆らったりすると締まって罰を与えたり死んだりする魔法がかかってるとか?」
「うんにゃ、ただの区別だねぇ。切ったり壊せない魔法はかかってるらしいけど、逃げ出すと首輪ですぐに見つかって連れ戻されるねぇ。所有者名が刻んであるからねぇ」
「この国で娼婦になるのはみんな獣人?」
「まあそうさね。人間の女はこんなことやりゃあしないよ。女神様の教えだか教会の教えだか知らないけど貞淑なもんさ。とは言っても上級職についてるやつは専用の巫女やメイドや側室を抱え込んでたりするけどね、それ以下の男どもを満足させるためにあたしたちがいるのさ。教会の裏っかわってとこだねぇ」
「教会の連中もここは利用していると」
「お得意様だねぇ。表では聖人君子な顔しててやることは変態さ。人間相手にできないことをやっていくねぇ」
「本当にマジクズいな」
うーん腹立ってきた。なにやってんだよ女神サリーテス様。
「この国では獣人はみんな奴隷?」
「まあ似たようなもんさね。ご主人様のいない獣人はいないよ。殺されたりはしないけど、ただ働かされるだけの存在だねぇ。首輪が無い奴は自由な代わりに死んでも誰も気にしない連中さ。首輪があるってのは保護されてるってことでもあり、拘束もされているけど守られてもいるからね」
「ここの子もみんな奴隷か……」
「悪く思わないでおくれよ。立派な屋敷に住まわせてもらって、そこで働けて、ひもじい思いもしなくてよくて、お仕事にちゃんと休みがあって、自分のお金を持てて、毎日お風呂に入って綺麗にして、きれいなおべべも着せてもらって、悪い客ばかりじゃなくて贔屓にしてくれる優しい客だってちゃんといて、獣人が働ける場所としてはこれでも天国みたいなとこなんだからさぁ」
うん、それはわかる。すげえわかる。らぶちゃん見ればちゃんとわかるよ。
らぶちゃんを抱き寄せて頭をなでる。ほら、こんな幸せそうな顔するじゃないか。
「獣人だけで暮らしてる町とか村はあるの?」
「昔はあったんだけど戦争でねぇ、人間どものどっちにつくかつかないかでいいように利用されちゃってね、結局みんななくなっちゃったねぇ」
「それはひどいなぁ……」
「獣人は教会に差別されてるからねぇ。信者にもさせてくれないし、あたしたち獣人はいつまでたっても異教徒のままさ。人間には禁じられていることも、異教徒相手なら問題ないのさ。勝手な話だねぇ」
うん、そうだな。金貸しが禁じられてる宗教も、異教徒相手に高利貸しやってたし、エロが禁止の宗教も、異教徒のジプシーには露出の多い衣装着せて色っぽいダンスを躍らせたりするからな。
「女神サリーテス様って、実際に降臨したことがあって本物の神様なんだよな」
「そうだね」
「サリーテス様の教えには獣人を差別しちゃいけないってのはないの?」
「知らないねぇ。サリーテス様は戦争しちゃいけないってだけであたしたち獣人のことまでは考えてなかったのかもしれないしねぇ。あっても教会が隠してるかもしれないし、あたしたち異教徒は説法聞けないからわからないねぇ」
「らぶちゃんを奴隷から解放するとしたらなにか方法があるのかな?」
「そうさね、あんたが身請けしてくれるなら、あんたの愛人にできるかね。結婚は無理だね。獣人と人間の結婚は認められてないよ」
「子供ができない?」
「できないねぇ。でなきゃナマでやらせたりしないよ」
「じゃあ獣人と人間のハーフはいないわけだ」
「いないねぇ」
俺を見ずに話していた支配人が、そこまで言って俺に向き直る。
「あんた、ラブ抱いてて楽しかったかい?」
「ああ、最高だ。こんな気持ちよかったの初めてだ。実は死別した俺の女房も、人間じゃなくってね」
死んだのは俺のほうだけどな。
「……私も、こんなに優しくされたの初めてです……。なんだか本当に好きな人としてるみたいで、なんだか涙出ちゃうほど幸せでした……」
らぶちゃんも頬に手をあててとろんとろんですな。顔はわからないけど耳がまっかですわ。
俺はらぶちゃんのために本当に愛しさをこめて優しく抱いた。好きな人とは、こうやってするんだよって。それはらぶちゃんにとって初めての経験だったのかもしれないな。
「アンタ、本物の変態だねぇ。これからもラブを贔屓にしてやっておくれ」
支配人がニヤッと笑う。
変態とか言うな歴史上日本最古のケモナー娘はウサギだったぞ!!
『ボッコ隊長』でググれあの色気は今の絵師もかなわないわ手塚先生なめんな異論は認めん。
しかし実際驚きだ。物凄く気持ちいいとわかると、最初は可愛いだけだったらぶちゃんが、なぜか人間よりエロく見えてきてしまうんだから、俺も相当なダメ人間だ。なんにしろあんなにしてくれるらぶちゃんに情が移らないわけがない。おっさんってのはほんとダメだな。若い娘にちょろすぎる。自覚はあるがね。
「俺はちょっといろいろこれから調べたいこともあるんだけど、今夜はまたここに世話になるよ。らぶちゃん予約していいかい?」
「大歓迎さね。なんならほかに治療を頼みたい子がいるんだけど、やってくれるなら安くしてあげるから毎日でも来なよ」
「ありがとう」
「ありがとうございますサトウ様!」
支配人が立ち上がって風呂に行く。
「朝風呂沸かしてやるから、ラブはお客様のソレ、もう一発抜いてやんな。まだ元気だよ」