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3.冒険者になった


 街を歩く。

 獣人がけっこういる。


 この世界の獣人は顔まで毛がふさふさで動物が二本足で立っているタイプから、人間が尻尾と猫耳だけ付けたコスプレな感じの者とそのゾーンが幅広い。牛っぽかったり猫っぽかったり犬っぽかったりと俺が見ても元ネタの動物がなんだったのかはだいたいわかるレベルだな。たいてい人間の後ろをついて歩いてる。

 全員に共通しているのが首輪だ。

 金属製の首輪で、もしかしたら奴隷とかそういうたぐいのものかもしれない。

 ゆるゆるで握りこぶし程度の隙間があって首は締まらないが、頭には抜けないサイズ。

 教会では獣人は見かけなかったから、異端扱いされているのかもしれないな。

 立場は人間より悪そうだ。いい服着た身なりの良い獣人はいなかった。


 レストランに入るのは面倒なので屋台で適当に色々買って食べる。

 焼いた肉を野菜で包んでソースをかけてパンではさんで食べる。うん旨い。

 これなら長期滞在してもいい。

 銀貨は一枚1000円ぐらいなのか。銀貨一枚で腹いっぱいになった。

 しかし教会の寄付銀貨10枚だったから1万円だったとは……。高いわ! ボッタクリだわ!


 さて冒険者協会に入り、カウンターに向かう。

 戦争が無い世界なのでここの冒険者と言うのは防具とか槍とか戦士風ではなく、弓を持った狩人という感じの人が多い。

 ちゃんと防具とか武器とかを付けた人は護衛関係の仕事だろう。犯罪者はいるか。まあいるよな。山賊とか盗賊とか。

 ガラが悪い下品な感じのやつはいなくて、それぞれがプロっぽい。

 この世界すげえ治安いいんじゃないか? っていうか神様が実在して教会の教えが浸透していて食べ物もそれなりに旨くてみんな平和そのもので、いい世界なんじゃないのかねえ……?

 俺を召喚してなにかさせるような問題がどこにあるんだろう。

 なんか大問題があったら、それこそサリーテス様が自分で御光臨してなんとかすればいいような気がするんですけどねえ。


 カウンターでお嬢さんに声をかける。

「あの、冒険者になりたいんですけど、田舎のほうから出てきたのでいろいろ教えていただければと思います。よろしくお願いします」

「はいどうぞ。ではそこにお座りください」


 やっぱり戸籍だの住民票だのが整備されているわけがなく登録は全部自己申告だな。登録料は銀貨20枚。2万円か。まあそれぐらいは……。前の世界みたいに金が身分保障ってわけじゃないんだな。

「ではレベルとステータスを調べますので、こちらの水晶玉に手を当ててください」

 えええええ!! しまったここの世界はレベル制か!

 俺のカンストレベルがバレちまうよ!

 大騒ぎになるんじゃないかこれ?しまったーっ、マズいぞこれは……。


「どうぞ」

 お嬢さん、ぐいぐい来る。

 もう登録料払っちまったし、今更断れない。

 仕方なく水晶玉に手を当てると……。


「はい、レベル20ですね。スタートとしてはまあまあですねー……。まあ、今後冒険者として経験を積んでいただければどんどんレベルアップしていくこともできますから、期待していますよ。じゃ、Fランクからスタートで登録させていただきます」


 ……。


 俺、エルテスのドーピング抜きだと素でレベル20だったのかよ……。

「MPがゼロですので一般冒険者としての登録になります。ではがんばってくださいね」

 話が違うんですけどサリーテス様……。

 俺この世界でも物理魔法オンリーの縛りプレイですか……。


「はい、冒険者カードです。身分証明にもなりますから肌身離さず持ち歩いてください。お仕事を一つ完遂するごとに協会への貢献値を加算させていただいてこちらのカウンターでランクのカードの書き換えをさせていただきます。一年に一度どこの冒険者協会でも更新が可能です。更新料も銀貨20枚です」


 カードを見ると、

  サトウ・マサユキ(40)

  冒険者ランク   F

  LVレベル 20

  HP(体力)  32

  MP(魔力)   0

 

 めっちゃシンプル。

 なんかこの歳のおっさんでもうどこのパーティーにも入れてもらえない感じ。


 例によってランクが低いと高い仕事は受けられない。ランクはF級からS級まで7ランクだ。ランクを上げるには実績の積み重ねが必要だ。

 違法行為があれば資格は取り消される。

 違法行為はなにかというと教会裁判で有罪になったらだ。

 つまり有罪無罪は教会の好きなようにできるので目を付けられないように働かなければならないということか。


「お仕事はホールの掲示板を見て、ご自分のランクに合ったお仕事を選んでカウンターへもってきてくれれば受け付けます。報酬は依頼主からお預かりした金額から手数料を引いて協会からお渡しします。その時貢献値も加算されますのでカードと一緒にお出しください。採取、狩猟、発掘の仕事はランク制限はありませんのでご自由にどうぞ。獲物を持ってくるだけで受付いたします。買い取りは別の買い取りカウンターでお出しください」

「ありがとう」


 うん、なんかRPGや異世界転生ものでスタンダードなシステムだ。

 っていうかテンプレ通り?

 まあ世界中どこの国に行ってもハロワシステムなんて大差ないよね。


 さっそく買い取りカウンターへ行く。

「買い取りお願いしたいんですけど」

「はいどうぞ」

 うん、銀行員風のおじさんが受け付けてくれるぞ。

「これなんですが、ダイヤモンドの原石です」

 そう言ってさっき作ったダイヤの原石を出す。

 元手はタダなので騙されて取られても買い叩かれても別にいいやという感じ。これはテストだ。この世界でダイヤがどれぐらいの価値があるかの実験だな。


「こ……これは……。少々お待ちください」

 おじさん、熱心に鑑定を始める。うんなかなかプロっぽいぞ。

「間違いなく3カラットのダイヤ原石ですな。この曇りのない透明度、カラーともに一級品です。いったいこれをどこで……いや、それを冒険者に聞くのはご法度(はっと)ですな。しかしダイヤの原石など見てわかる者も少ないというのによくぞこのようなものを」

 いろいろ探られたりはしないのか。それはよかった。


「このようなもの、いくらでも教会や聖職者が買い取ってくれますのでな、これからも入手出来たらどんどんお持ちください」

「教会が? 教会が買うのですか?」

「はい、女神様への捧げものとして大変に重宝されます。ま、もっともその行先はどうなってるか知りませんがな」と言って片目をつぶる。


 腐ってやがる……。


「金貨150枚ではいかがですかな?」

 150枚! そりゃすげえ! 前にいた世界では金貨10枚だったぞ!

「いいですよ。金貨1枚は銀貨に両替してください」

「では少々お待ちください。カードをどうぞ」


 カードを預けると、おじさんが奥に引っ込んで革袋を持ってきた。

「お納めください」

 見ると大小の金貨がそれなりに入ってた。

 ちっちぇえ。金貨ちっちぇえや。銀貨の半分以下の大きさしかねえ。

 あ、大きい金貨ある。


 銀貨1枚1000円

 銀貨10枚で金貨1枚、1万円。

 金貨10枚で大金貨1枚、10万円


 今回の稼ぎは大金貨14枚、小金貨9枚、銀貨10枚で総額150万円といったことがわかる。前の世界で2カラットのダイヤが100万円相当だったから3カラットで150万円相当ってことか。屋台でお釣りでもらった銅貨は一枚10円といったところだろう。100円玉や500円玉に相当する物が無いので小銭がたまりやすいぞ……。

 うんダイヤの価値としてはまあまあ妥当かも。普通は大きいほど加速度的に価値が上がるのでもうちょっといけてもいいかと思うが、最初だしな。


 タダで作ったダイヤの原石一個で、この世界ではこの手の物の需要が高く、騙されたり買い叩かれたりはせず売り手は重宝されるということ。貨幣の価値、この国の腐り具合といろいろな情報が入手できた。

 この世界は教会が一番腐ってる感じがする。

 後でサリーテスに文句言ってやろう。



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[一言] >この世界は教会が一番腐ってる感じがする 前の世界でも教会は1つを除いて腐ってた気がするが
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