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27.魔王様がデートした


 ルシフィスがサロンにやってくる。

 もうなんていうかルシフィスもミルクちゃんもお肌ツヤツヤホルモン全開という感じでデレデレですな。タフそうな二人、一晩の回数とか凄そうです。

 リリイさんの見立て、グッジョブです。


「ミルク嬢は今日から休みだ」

「へー。奇遇だな。俺もらぶちゃん今日から休みだし、のんびりするかな」

「それでだな、その……」

「はー?」

「それでだな」

「はいなー」

「その……」

「うん」

「……どうしたらいいのだろう?」


 ……これだから童貞は……。いやもう童貞じゃないけど……。


「ルシフィス、まず、娼婦というのは体を使ったハードワークだ」

「うむ」

「メイドさんにもお休みが必要だ。一週間のうち、四日働いて、三日は休む。これは彼女たちのために必要なことだ」

「うむ」

「お休みにはゆっくり休ませてやるのが男の思いやりというものだ」

「うむ」

「かといって、休みのあいだ違うメイドさんを世話してもらうというのも、金さえ払えばできることだが、それはお勧めできない」

「う……む」

「女をとっかえひっかえ、味を見るなどは野暮だ。一人の女に入れ込んでやれ。身も心も馴染んだ相手のほうが結局は楽しいのだ」

「余はミルク嬢に不満などなにもないぞ!」

「それでいい。ミルク嬢だってお前が自分だけを抱きに来るなら嬉しいだろう。二人で三日間我慢して、その後の夜のことを考えろ。楽しくなりそうだろ?」

「う……うむ!」

 ルシフィスが感心したように俺を見る。


「雅之はラブラン嬢に入れ込んでおると聞いておるが」

「そうそう」

「……見てもおるが、あれはもう娼婦と客という関係ではないな」

「それこそが俺の楽しみ方さ、俺も嬉しい、お嬢も嬉しい。両方嬉しいからより楽しく遊べるというもの。恋に勝る媚薬などこの世に無い」

「ふむ……」

 いやそんな尊敬のまなざしで見られても。


「それでだな、その、ならば余はどうしたらいいのだろう……」

「振り出しに戻ったか……」

 うーん……。


「俺は休みの日に、ラブランを連れて買い物に行ったりしたな」

「ほう」

「奴隷の子は一人で出歩くとなにかと問題が多い。メイド服を着てると市場とかで食材とか買い物してたりするのは誰も気にしないが、私服で一人となると入れない店とかも多い。なので保護者が付きそう必要がある」

「お……おう」

「パリスに許可をもらって、ラブランの保護者になって、一日買い食いとか買い物とか、したいようにさせてやったことがあって……」

「おう、それはいいな!」

「その後教会のやつにからまれて騒動になって、そいつがこの館まで押しかけて剣まで振り回して大騒ぎになったな……」

「……お主なにをやっておる」

「つまり教会がらみだとたちまちトラブルになるってことだ」

「まったくここの教会は本当に腐っておるな」

「と、いうわけで、教会には絶対にかかわらず、穏便に済まし、ミルクちゃんをちゃんと守ってやれるなら、支配人に許可をもらって連れ出してやってもいいんじゃね?」

「わかった!」


 ダッシュでサロンを飛び出していく。

 さて、俺も準備するか。



 おおう、ルシフィスもミルクちゃんも背が高い上に美男美女って感じですげえいいぞ。どっからどう見ても「金持ちのオヤジとその愛人」にしか見えないけどな。

 パリスに説明受けて、保護者の書類もらって、ウキウキしながら出ていったわ。

 俺はまた、仮面の執事になってこっそり後を付けるぞ。

 またトラブルになったら大変だからな。

 パリス、そうニヤニヤすんな。これは必要なことなんだよ!


 最初はやっぱり買い食いだよな。

 屋台でなんか買って、ベンチに座って食べてらあ。青春だねぇ。

 ルシフィスは全く俺の存在に気が付かない。俺が勇者や魔法使いみたいに相当な魔力持ちなら感知できるのだろうが、俺はこちらで言うファンタジーな魔力は完全にゼロなので、その存在感はこの世界の一般人以下なのだ。


 お、雑貨店に入るぞ?

 ミルクちゃんが遠慮してるな。トラブルになるのがわかるからかな。

 すすすすすっと俺は先回りして、店に入る。


「あー君」

「はい。なんでしょう」

 仮面の俺にちょっとぎょっとするが、店員が対応する。

「あの客が入ってきても普通に対応するように願います」

 表を顎で示し、すっと銀貨を握らせる。

「あ、はい……」

 

 結局二人で入ってきた。

 うん楽しそうですねミルクちゃん。こんなお店でお買い物って、なかなかできませんものね。

 こまごまとしたものをいろいろ買ってもらってるようです。ミルクちゃん、もっとおねだりしてもいいんですよ? 俺なんかブラシを5本も……いえ、なんでもないです。


 二人、運河の橋を渡って、中心部に向かいます。

 以前ここで衛兵に絡まれたので、一応様子を見ますか。


「ちょっとまて、そこの……」

「何か?」

 ルシフィスが前に出る。

「獣……」

 兵士の目が俺をとらえる。

 二人の後ろにすっと立ち、首をゆっくり左右に振る。

「か……仮面の執事」

 そう呟いて、衛兵が持ち場に戻る。


「???」

 二人、トラブルなく、橋を渡っていきました。

 俺は衛兵に近づき、頷いてみせ、そっと金貨を握らせましたよ。

 これで、帰りも安心ですな。



 二人、劇場を見上げます。

 観劇ですか。デートには最適ですね。

 でも演目が……「女神と勇者」。

 悪い予感しかしませんです……。


 入り口でちょっと止められますが、ルシフィスがパリスにもらった保護者証を出すと案外すんなり入れてくれます。

 俺も近い席を取って一緒に見ましょうね。


 冒頭、悪い大魔王が復活します。


 ……最悪ですね。


 いろいろあって、魔族たちを国軍兵士が全部撃退しますが、巨大魔王が動き出し、聖都に接近いたします。

 教会のシスターが、祈りを捧げると、キラキラキンキラ、キラランランと女神サリーテス様が降臨なさって、超絶イケメンな勇者を召喚してくれます。

 いくらなんでも演出過剰ですぞサリーテス様。

 っていうかこれ前任者のスィフテリス様とごっちゃになってますよね。


 シスターと勇者が手に手をとって、お城の前に立ちふさがります。

 迫り来るは悪い巨大大魔王。

 ロープで吊り下げられた操り人形ですが、大迫力です。

 これを、シスターの祈りと、ロープアクションの勇者の大活躍で叩きのめし、物語はハッピーエンド。

 観客大拍手の中、ルシフィスがヘコんでおります。


 二人、暗くなった街をとぼとぼと、歩いてゆきます。

 すっかり元気がなくなってしまったルシフィスに、ミルクちゃんがしずしずと従います。

 運河のほとりで立ち止まり、なにか話しておりますね……。

 ぽつぽつと、ルシフィスがつぶやくたび、ミルクちゃんがうんうんと頷いています。

 がっくり、うなだれるルシフィスを、ミルクちゃんがそっと抱きしめました。

 あの豊かな胸、あの爆乳、あれに抱かれて癒されない殿方などおりましょうか。

 ルシフィス……。泣いていいぞ、ルシフィス。

 男だって、泣きたいときぐらいあるさ……。


 街灯の淡い光に照らされて、二人はしばらくそうしておりました。

 ミルクちゃん、あんたいい女だよ。最高だ。


 チェルシーに向かって歩き出した二人に、チンピラが十人近くからんできましたな。

 オヤジ狩りですか?

 いや、ミルクちゃんの爆乳に舌なめずりですか。下品な連中ですな。

 全員魔王様に運河に放り投げられております。相手が悪かったですな!

 うん、ちゃんと見せ場は外さない。様式美です。


 二人で腕を組んで、そのままチェルシーにお帰りですか。

 お休み返上ですねミルクちゃん。うん、たっぷり慰めてやってくださいね。


 さて、俺は例の御子息の屋敷にでも行って、もうちょっと資料を調べたりしましょうかね。

 では、また明日!

  


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