まだ危機は去りませんっ!
気が付くと自分の部屋に戻っていた。時刻は9時45分。向こうにどれくらい居たのかは知らないが、時間はそんなに経っていないな。とそのとき、携帯に着信が…ユウヤか。
「ようユウヤ。お前もサボりか?」
『はぁ?今日は開講記念日で休みだろーが。』
そうだったっけ?すっかり忘れてた。
『いや、暇ならゲーセンでも一緒にどうかとな。』
「悪いが家のことで忙しいんだ。外出する余裕はない。」
『別に理由は聞く気はなかったんだがな。気が乗らないならしょーがねーな。』
普段ならそうだけど、今は異世界に用があるからとは言えない。中学2年生の俺たちにとってネタにされるに決まってる。
『なら今度、気晴らしになるように新しいラノベ貸してやるよ。次はちょっとほのぼの系を―――』
「あ、なら異世界転移系をリクエストしていいか?」
『おっ、やっぱり異世界物の素晴らしさがレオ伝わったか!いいぜ、家に大量にあるからな!』
その後、ユウヤに長々とラノベについて語られ、じゃあまた明日なと電話を切った。明日俺が登校する保証はないが。
『レオさんっ!来て下さいっ!』
とネルの声と同時に視界が真っ暗に…もうお呼びか。早すぎやしないか?
そしてまたボロ屋敷に。が前とは違って、多くの人数がいた。ネルとフラーレイもいる。
「レオさん、お願いがあるのですがっ」
「なんだよ、今度はなんのモンスターだ?」
「モンスターじゃないわ。相手は人間。もっと言えば国よ!!」
国が攻めてくるって…つまり戦争じゃないか。
「隣国のガルディアが先日のドラゴンを倒したことで、我々に目をつけたみたいなんです。」
「弱小国だからって調子に乗っちゃって…!!みんなで返り討ちにして、私達の力を見せてやるのよ!!」
後ろからは「俺もやってやる!」「今こそ革命の時!」「やるときはやってやらぁ!」と士気の高い声が沢山。ドラゴンには完全にびびってたろお前ら。
「でもドラゴンキラーみたいな武器がないだろ。どうやって戦うんだ?」
「「「「「あっ…」」」」」
一瞬にして沈黙。固まるみんな…って何も考えてないのかよ!?
「いや、一つ手があるわ!」
フラーレイが沈黙を破る。ドラゴンキラーを最初に持ってたのもコイツだし、策略家なのだろうか。
「ここはレオにしか出来ない力を使うわ!アンタの世界から何か珍しい武器を持ってきてちょうだい。それをガルディアの奴らに見せつけて威圧するのよ!!」
「お、おう?いやでも」
「なんでもいいからアンタの世界にしかない物を持ってきてくれればいいわ。それに見た目がアタシたちと全然違うアンタがやることで恐怖は倍増よ!!だからアンタに託すわ!!」
なるほど、なら俺がやらなきゃ…ってじゃあまた周りの奴らは要らなくないか?
「コイツらは自慢げに立ってるだけでいい。コッチに絶対的な力があると思い込ますにはそれで十分よ!!」
要するにハッタリをかますということか。その効力がどこまでかは分からないが、それしか道はないだろう。
「レオさん、またレオさんを元の世界に飛ばします。何でもいいので、お願いしますっ!」
「頼んだぜ英雄!」「流石勇者様だ!」と言われながら、また自室へ戻る俺。何でも、と言われたが…ダラダラ過ごしてる俺の部屋には武器になりそうな物はない。どうしたものか…。とそのとき、
『レオーっ!ラノベ持ってきてやったぜーっ!』
外からユウヤの声が。これはいいチャンスだ!俺はすぐにドアを開けた。
「ユウヤ、ちょっと貸してほしいものがあるんだ!」