なんで俺がこんなこと?
ドラゴンキラーを担いだ俺はドラゴンの方へ歩いている。近づく旅に分かるが、かなりの巨体だ。でかい的だと言えばそうだが、逆に攻撃範囲が広く一撃でも食らったら終わりだろう。びびる理由も納得だ。
「レオーっ!!そろそろ行くわよーっ!!しっかり仕留めなさいよーっ!!!」
後ろからフラーレイの声。と同時に、フラーレイが目の前に魔方陣を描き出した。あれが魔法らしい。現実世界ではCGが当たり前のように知られてるし、演出は驚くもんじゃないだろう。
「シビレイジング!!!!!」
そうフラーレイが叫ぶと、魔法陣から雷がサーベルタイガーのような形で放たれた。なかなかカッコいいじゃないか。雷獣はそのままジグザグな軌道でドラゴンに突っ込んでいった。
ドラゴンはグラウウウアアアッッッ!!!と声を上げて、動きが止まった。よし今のうちに接近して―――
グオオオオアアアアアアアアアッッッ!!!!!
一瞬で効果が切れた。あと多分ドラゴンの頭もキレた。ドラゴンが強いのかフラーレイの魔法が弱いかはこの際聞かないが、魔法があまり効かないのは確かだ。
「くっ…!!レオ!!一旦距離を取って―――」
「うっさいな。今やってやるんだから口出すなよ。」
俺はドラゴンキラーを構えた。やっぱり重いなコレ。普通異世界に飛ばされたら何かしら最強の能力とか付くのがラノベの鉄板だろうに。俺には力はなくて、俺の持つコイツが力持ってるんだからな。
すぐ目の前のドラゴンの口から炎が見えた。怒ってるんだろう、俺を丸焼きにして食ってやるってか?なんとも残酷な殺し方で。でもな―――
「悪いが俺は、お前には焼かれない」
槍をガッチリと握り、矛先をドラゴンの顎に向ける。そして。
「俺はネルに世話を焼かれるんだよおおおおお!!!!!」
クズ丸出しの最低な台詞を叫びながら、俺はドラゴンキラーをドラゴンの顎を目掛けて投げた。その名の通り、投げやりでな。
「はああああ!!?」と後ろからフラーレイの声が聞こえたが、俺は端から真面目に戦う気はないからな。どうせ俺のテキトーに投げたドラゴンキラーはドラゴンには刺さるわけ―――
グオオオオアアアアアアッッッ……
ドラゴンはか弱い声を上げ、ズドオオオと大きな音を立てて倒れた。どうやら刺さったらしい…まじかよ!
「レオさんっ!本当にドラゴンを倒すなんてっ!凄いですっ!」
「やるじゃない、レオ!ただのクズじゃなかったのね!」
ネルとフラーレイが遠くから駆け寄ってきていた。その後ろでは、さっきまで奥に隠れていた国民なのか、うおおおおと大歓声。向こうにも臆病に逃げた奴らがいるのはムカつくが、自分も勇気があるわけではなく単に無謀なだけだから何も言えない。
「やっぱりレオさんは勇者様ですっ!どうかこのまま我が国を、いいえ、この世界を救うため――」
「悪い、1週間じゃなくて1日にしてくれ。」
その後フラーレイに散々言われたりしたが、なんとかとりあえずということで現実世界に帰してもらった。生活費の浮くおいしい話だと思ったが、あんなに面倒なんじゃ学校サボるメリットにはならないからな。