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第2話:最初にやりたいこと

「結論から言うと、元の世界に帰ることは一応可能です」

 久しぶりの食事を終えた茂明に、彼を召喚した女性。ワルツ・クインはそう答えた。

 この世界では、異世界から人を召喚する魔術は一般的ではないが確立されており、異世界へ人を送る方法も存在するという。

 だが、両者の難易度には差があり、呼び出す術の10倍ほどの難易度である。

「残念ながら、私たちの『国』では茂明様を元の世界に送り返すことは出来ません」

 それが可能なのは、中央政府のある首都の、魔術を専門に扱うギルドのトップ位だという。

 そのため、簡単には返すことは出来ないとのことだ。

「解決する最も単純かつ明快な方法……それは、茂明様にお願いしたダービーを勝つことです」

 この世界ではダービーに名誉とともに様々な富が集まる。

 優勝者への副賞として、中央政府ができる範囲のことで好きなものを望むことができるのだ。

「実際、3年前のダービーでは、異世界から召喚された勇者様がダービーを制し、元の世界へお戻りになられています」

 そして前例もある。

 正直ひどい話ではある。が、

「……分かった。色々思うところはあるが、全面的に協力してくれるのなら」

 と、前置きを置いて、茂明はワルツの願いを叶えることを約束するのだった。

(「ま、直面した現実を悲観するばかりでは何も進まないからな」)

 比較的地球での生活に心の篭ったものは多くなかったのも幸いしているのだろう。

 茂明は割りと素直にこの世界での生活に順応しようとしていた。


 茂明がワルツに最初に求めたのは、この世界のことを学ぶことだった。

 歴史・地理・経済・文化・社会・科学技術・そして競馬……。地球とは何もかも違うこの世界で何をするにしても、そのバックボーンを学ぶことが大切だと思ったからだ。

「出来る限り詳しく分かる人に深い部分まで知っておきたい」

 茂明は学者や教師、経済や最近の政治の話などは大臣や政務官など、その分野に長けたものから教えを請いたいと思っていたのだが、

「では、明日から私が1つ1つ茂明様にお教えいたします」

 ワルツはそう言って、ペコリと頭を下げる。

 流石にそれは。と、茂明は困ったような顔をするが、

「これでも、父が不在の時は代行で国政を纏めています。一通りの教育は受けていますので、ご心配なさらず」

 微笑む彼女に押し切られる形で、茂明は首を縦に振るのだった。


 実際、ワルツは国を治めるために必要な知識を十分持ち、少ないながらも自らの経験から実践的な知識を持っていた。

 また、茂明が望んだような学者や政務官は国内には数が少なく、彼のために時間を取れないというのも1つの理由であった。

 その点、ワルツは多少の公務はあるものの、一日の大半をフリーで過ごせる立場にあり、彼の望むような知識を教える人間としては、一応最適解であった。

 地球で大学までの教育を受けている茂明には理解すること自体は簡単な内容ばかりだったが、何分必要とする知識の分野が広く、一朝一夕には終わらない。

(「本来は、生まれてから成人するまでにゆっくりと覚えるような知識だからな」)

 地球では、職場の仲間と時々競馬の話題をしたり、テレビで放送される有馬記念などを見ていた程度。

 もし、茂明が馬の育成に対する豊富な知識を持っているとすれば話は別だが、そうでなければ、この世界の流儀を知り、その上で勝てる方法を見出さなければならない。

(「完全に0からの出発だからな……まず何から手を付けたものか」)

 茂明はワルツの個人レッスンを聞きながら、これからのことを考えていた……。


「さて、行きますか」

 それから1ヶ月。

 茂明は旅支度を整え、国を後にするのだった。

ワルツの名前の元ネタがわかった人がいたらそっと教えて下さい。

この後ももう少し引っ張ります

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