据え膳?
『ユウトさんはファスタルにお住まいではないですよね?』
いきなり、サラさんにそんなことを聞かれた。
なぜばれたのかは分からないが、特に隠すこともないので正直に答えた。
「そうですね。行くのも初めてです。」
『そうなんですか。このあたりにいてファスタルに行くのが初めてというのは、・・・』
少し、サラさんの表情が険しくなったが、すぐに切り替えたのか、
『では、今日はどこに泊まられるのかまだ決めておられないのですか?』
と、少し緊張した面持ちで尋ねられた。
「そうですね。お恥ずかしい話ですが、あまり持ち合わせがないので、どこかいい所を探さないといけないと思っています。」
と、返した。うん、嘘はついていない。
持ち合わせがないのは本当だ。
【あまり】ではなく、【全く】だが。
『では、今日はファスタルに着くのは夕方になるでしょうから、それから宿を探すのは大変でしょうし、今日はウチに来られますか?
特に今日は空いている宿は少ないと思いますし。』
な、なんですと?
まさかのお誘い?
え、これ行ったら、カメラが仕掛けられてて芸人がいっぱい出てきて、辱められるやつ?
今まで異世界とか勘違いしてたけど、ここまで盛大なドッキリだったの?
いや、確かにおかしいとは思ったけど、と、カメラどこだ?
と思って、周りをキョロキョロしてカメラを探してしまった。
『どうされました?』
「いや、カメラはどこかなと思いまして。」
『かめら?』
「そこまで都合がいいと流石にドッキリだってばれますって。」
『どっきり?何をおっしゃっているのか今一つ分かりませんけれど、都合がいいんでしたら、ぜひいらして下さいね。』
と可愛くお誘いを受けました。
ええい、ままよ。
「ハイ、ゼヒオネガイシマス。」
据え膳食わぬは男の恥。
などと、考えていた時期が私にもありました。
◇
『ここが私の家です。』
そう言って連れてこられたのは、どう見ても一般家庭向けではない要塞っぽい何かでした。