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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
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異世界生活13日目 辺境の遺跡

『ちょっとスピード速いですけど大丈夫ですか?』


「ええ、大丈夫です。

 早く着いたほうがいいでしょうから、飛ばしてくれて構いませんよ」


 今はファスタルから辺境に向かう途中だ。

 今日は日課の朝練をする時間はなかったので、起きてすぐにサラとルッツと食堂で朝食をとって、研究所を出発した。

 バイクに乗るのはこれで2回目だ。

 相変わらず、元の世界のバイクより静かだ。

 でも、最初思っていたような魔法のエネルギーで動いているのではなく、おそらく電気で動いているので、電気自動車と似たようなものなんだろう。

 そういえば、日本でも電気バイクって見たことあったな。

 原付みたいな小さいやつだったけど。

 乗ったことはないから比較はできないけど、それのパワーアップ版て感じなのかもしれないな。


 俺は今日もいつもの探索とそれほど変わらない装備だ。

 武器はヨーヨーとナイフのみ。

 プロッタなんかも一応持ってきている。

 一通りのものはかばんに入れてきた。

 念のため、スマホも持ってきている。

 バッテリの心配がなくなったので、電源を入れてもよかったんだが、スマホの電源を入れたら辺境でスライムに襲われる可能性がある。

 だから、電源は切ったままだ。 


 そういえば、サラは俺がプレゼントしたナイフを装備している。

 マナウェポンも持ってきているだろうけど、マナウェポンは強すぎるからナイフの方が威力がいらないときは使い勝手がいい、と言っていた。

 お揃いみたいで、というかお揃いなんだけど、すごく恥ずかしい。

 サラはとても嬉しそうにナイフを装備していたから、サラの前では恥ずかしいとは言いづらかった。

 うれしはずかしって感じだ。


 ここまでの移動中に、地下探索の話をした。

 サラに心配をかけたくなかったので、這いずりしものの話は伏せようかとも思ったが、隠していて後でユラさん辺りに聞いたら、俺がサラを除け者にしたと思われそうだから、正直に話した。

 できるだけ、なんでもないことのように話したが。

 ついに俺は伝説の古代種を見つけたぜ。

 俺と統括だったら余裕で倒せるぜ。

 みたいな感じで話したら、サラは笑って聞いていてくれた。

 

 半分くらいは仕事の話をしていたけど、半分くらいは雑談をしていた。

 今はサラも俺も仕事をしているから、ここのところ、あまりゆっくり話している時間はなかった。

 ほとんど毎日一緒にマナを使う練習はしているが、練習中はあまり話さず、黙々と練習している。

 今日も仕事だけど、この移動の時間はサラとゆっくり話せるから良かった。

 それだけでもついて来た価値があるような気になる。

 多分サラもかなり機嫌がいい気がする。

 なぜなら、バイクのスピードがどんどん速くなっているから。

 いや、飛ばしていいとは言ったけれども。

 確かに早く着いた方がいいけれども。

 これは時速150kmくらい出てるんじゃなかろうか。

 体感だから、実際はそこまでは出てないだろうけど、流石にちょっと怖い。

 ルッツもビビって俺にしがみ付いている。

 折角の上機嫌に水を差すのも悪いから、スピードを落とせとは言わないが。



 結局バイクのスピードは速いままでどんどん進んだ。

 3時間くらいかかる予定だったけど、2時間ちょっとで辺境に着いてしまった。

 調査に時間をかけられるから、早く着いたのはいいことだ。

 途中何度か生命の危機を感じたが、サラには言わない。


「予定より早く着きましたね」


『そうですね。

 すみません、ちょっとスピード出しすぎちゃいました』


 自覚があるのが救いだな。

 かわいいから許せるし。


「早速、守備隊の人たちに話を聞きましょう」


 それから、バイクを停めて二人で守備隊の人たちのところに行った。

 守備隊の人たちは数台の馬車で移動しているようだ。

 馬車の横に焚火の跡があるから、馬車を拠点に調査しているんだろう。

 俺は自分がトリップしてきた時に最初にいた正確な位置を覚えていないが、ここはかなり近い気がする。

 周りの景色に見覚えがある。

 いや、一面の草原だから、なんとなくそう思うだけなんだけどな。

 ただ、昨日のユラさんの話だと、ここは戦闘の痕跡のあった場所のすぐ近くだという。

 危なかった。

 俺がこっちの世界に来た時には既にキュクロプスはいなくなっていたみたいだけど、もう少し早く来ていたら、トリップした瞬間に殺されていたかもしれない。


『こんにちは、研究員のサラです。

 調査の補助に来ました』


 サラが守備隊らしき人に声をかける。


『ああ、ご苦労様です。

 わざわざすみません。

 我々だけではどうしようもなくて。

 案内しますので、こちらへどうぞ』


 守備隊の人に連れられて草原を少し進むと、遺跡の入り口が見えてきた。

 それは、ユラさんが昨日行っていた通り、窪地の底っぽい所にあるようだ。

 確かに近づかないと見えないようになっていた。

 入り口の前には数人の人がいて、扉を開けようと色々試しているみたいだ。

 ほとんど諦めているような空気を感じるが、ここ数日試していて開かないんだろうから、仕方ないだろうな。 


『これです。

 一応、我々もマナを使ったり、武器で攻撃したりしたんですが、全く開く気配はありません。

 ただ、我々はマナの制御が得意、というわけではありませんから、やり方が間違っている可能性はあると思います』


『分かりました。

 じゃあ、ちょっと調べてみますね』


『お願いします。

 必要なものがあったら言ってください』


 そう言って、守備隊の人は離れて行った。

 入り口の前にいる人たちにも声を掛けて、一緒に離れて行ったから、集中して調査できるように計らってくれたのかもしれない。


 それから、サラと入り口に近づいた。

 入り口はかなりでかかった。

 もっと普通のドアみたいなのかと思っていたが、窪地の側面を利用してかなり大きな石造りっぽい扉が付いている。

 土竜でも通れそうだな。


『じゃあ、私は解析を始めますね。

 ユウトも色々試してみてください』


「はい。

 でも、全然やり方が分からないから、適当に調べますよ」


『ええ、その方が何か分かるかもしれませんし、思ったようにやってみてください』


 まあ、しっかりした調査はサラがやってくれるだろうから、俺は好きにやればいいんだよな。

 今日は護衛で来てるんだから、俺はおまけみたいなもんだし。

 とにかく、試してみよう。


「開け、ゴマ」


 開かない。

 うん、わかってた。


「オープン、セサミ」

「アバ○ム」

「ア○ホモラ」


 開かない。

 うん、わかってた。


 えーと、あとは何があるっけ。

 隣でルッツが呆れている気がする。

 もういいか。

 合言葉ではないよな。

 いや、合言葉だとしても俺が知ってるわけないよな。

 試しに入り口に触れてマナを使ってみた。

 扉全体が薄く光っている。

 だが、開かない。

 確かにマナに反応はしているみたいだけど。

 まあ、マナ関係はサラに任せとけば間違いないだろうし、あんまり試さなくていいか。

 あとは、何ができるだろうか。

 俺の中での常識で言えば、玄関のドアには正しい鍵以外に合鍵があると思うんだよな。

 そして、合鍵って大体ドアの近くに置いてあることが多いはず。

 例えば、ドアの脇の植木鉢の下とか、玄関マットの下とか、ポストの中とか。

 ちなみにうちはドアの横のコンクリートブロックの下だった。

 ただ、ここにはどれもないけど。

 うーん、遺跡の主になった気持ちで考えてみよう。

 もし俺がこの遺跡の持ち主だったら、どこに合鍵を隠すだろう。

 あんまり分かりやすいのも危ないし。

 かと言って、入念に隠したりしたら使いにくいだろう。

 そんなことを考えながら周りを見渡してみて、入り口付近にある大きめの岩に目が留まった。

 普通は岩の下に合鍵なんて置かない、と思わせておいて、そこに隠しておく。

 うん、俺だったらそうするな。

 そう考えた俺は、その岩に近づいた。

 ちょっと動かすのは難しいかな、と思いながら気合を入れて岩を持ち上げてみると、なんとか浮いた。

 お、これ以上は無理だけど、こんだけ浮いたら動かせそうだぞ。

 そう思った俺はそのまま岩を横に移動させた。

 いやあ、我ながら怪力だよな。

 こんなに力あったっけな。

 周りに人がいたら驚かれそうだけど、幸い今はサラと二人だ。

 サラも解析に集中してこっちのことなんて気にしていない。

 まあ、おっさんだったらこんな岩、楽勝で持ち上げそうだし、この世界では大したことない方なのかもしれないけど。

 と思いながら、元々岩があった所を確認する。

 そこには、丸い石があった。

 いかにも人工物だ。

 やった、これが鍵だろ。

 俺は、完全に合鍵を見つけた気になった。

 早速試そうとして、そのまま入り口の方に戻り、見つけた石を使って、って、どうやって使うんだ、これ?

 入り口には鍵穴なんてない。

 見つけた石を入れるような穴もない。

 あれ?違ったか?


 俺が見つけた石を片手に、ああでもない、こうでもないとやっている間にサラはある程度の解析を終えたらしい。


『ユウト、ちょっと私も試していいですか?』


 と、声を掛けられた。

 俺が入り口の周りでうろちょろしてたから、邪魔だっただろうか。

 俺はサラに近づきながら、


「ええ、すみません。

 邪魔でしたね」


『え?

 邪魔じゃないですよ。

 ユウトが何かしてるのに、横から私が何かしたら邪魔かと思って。

 ごめんなさい、もういいんですか?』


 謝られてしまった。

 サラは俺が真剣に何か試していると思っていたらしい。

 俺は半分遊んでるみたいなもんだったから、非常に申し訳ない。


「すみません。

 俺なんて適当に試してただけだから、サラの調査を優先してください。

 それで、何か分かりました?」


『そうですね。

 まだ完全には分かりませんけど、この入り口はどうも単純にマナを使うだけじゃダメみたいです。

 複雑に制御しないと開きそうにないです』


 おお、どうやったらそんなこと分かるんだろう。

 やっぱり、サラは優秀だな。

 逆に言えば、複雑に制御すれば開きそうだということだろうし。


「その複雑な制御っていうのは、サラならできそうですか?」


『そうですね。

 なんとかなると思います。

 それで試してみようかと思って』


「すごいですね。

 流石サラですね。」


 俺がそう言うと、サラは嬉しそうだった。


『じゃあ、試します』


 そう言って、サラは入り口に近づいた。

 それから、軽く手を触れてマナを制御しだした。

 最初は俺がマナを使った時と同じように扉全体がぼんやり光る感じだったけど、徐々に光が収束しだして、扉の表面に軌跡を描き始めた。

 それは、複雑な幾何学模様となり、扉全体に広がった。

 その状態で安定したようで、扉は光り続けている。

 サラもマナの制御は完了したと思ったのか、扉を開けようとした。


『うーん、開かないですね。

 これで、マナの方はいいと思うんですけど。

 あとは、何か鍵があればいいのかな』


 と首を捻っている。

 俺は、扉の様子をずっと見ていたから気づいたんだけど、サラが開けようとして押した部分の少し下の辺りに光っていない部分がある。

 他にも光っていない部分はあるが、そこだけ不自然に丸く光っていないように見える。

 俺はもしかしてと思って、その円形の部分に持っていた石を当ててみた。

 すると、扉全体に広がっていた光が消えた。

 と、同時に扉全体が、がごん、みたいな感じの音を出して震えた。


『ユウト、それって?』


 サラが俺の手の中の石を見て聞いてきた。


「ああ、その岩の下にあったんですよ」


『岩の下、ですか?』


「ええ、合鍵って大体ドアの近くに隠してあるものだと思って、探してみたらあったんですよ」


『そうなんですか?

 あんまり聞いたことないですけど、見つかったということはそうなのかもしれないですね』


 サラは怪訝な顔をしている。

 この世界では合鍵をドアの近くに隠しておくのは一般的ではないのか?

 いや、正確には日本でも一般的かどうかなんて知らないんだけどな。

 でも、現実にこの石はすぐそこにあったから、間違ってはいないはずだ。

 サラは偉い人だから、一般人の常識なんて分からないのかもしれないし。

 まあ、どうでもいいことなんだけど。


「とにかく、開いたか確認しましょう」


 俺は入り口のドアを押してみた。

 石でできているようなのでそれなりに重たいが、一人でも十分に開けられる程度だ。

 見た目よりはかなり軽い。


「お、開きますよ。

 さすがサラですね」


『いえ、ユウトがその石を見つけてくれたからですよ』


 ユラさんが聞いたら、またバカップルだのなんだのと言われそうな会話をしながら、扉を開けきった。


 中は広めの空間になっていた。

 左右には隣接した部屋へ続くと思われる通路がある。

 そして、奥には入り口と似たようなかなり大きな扉が見える。


『とりあえず、守備隊の人たちに入り口が開いたことを伝えた方がいいですね』


 そう言って、サラは守備隊の人を呼びに行った。

 俺は、その場に残って、サラが戻ってくるのを待ちながら、遺跡の中を観察していた。

 そこで気づいたんだが、奥の大きな扉の上にプレートが付いていて文字が書いてある。

 かなり古いプレートみたいで途中から折れているようだが、文字はギリギリ読めた。

 【Fourth Al】

 フォース アル?

 いや、フォーサルか。

 ファスタルは【First Al】で、始まりの都市だった。

 ということはここは4番目の都市なのか?

 いや、どう見ても都市ではないよな。

 というか、Alってなんだろ?


『ユウト、お待たせしました。

 守備隊の人たちもこれから調査するそうですよ。

 私たちも入りますよね?』


「そうですね。

 でも、モンスターとかいるかもしれませんから、深い所は守備隊の人たちに任せましょう。

 俺たちはあくまで入り口付近の簡単な部分だけにしといた方がいいです」


『はい。

 ユウトを危ない所に行かせられないです』


 いや、それはこっちのセリフだけど、まあいいや。


「サラ、あれって何て読みますか?」


 サラにプレートを示して聞いた。


『フォーサル、ですね。

 聞いたことはありませんけど、この遺跡の名前でしょうか?』


 サラも聞いたことはないらしい。

 そりゃそうか、数日前に見つかった遺跡だもんな。


「そうだと思うんですけど、分からないんですよね。

 とにかく、中に入ってみましょうか」


 俺はサラとルッツを連れて遺跡の中に入っていった。





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