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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
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12日目終了 作戦会議~辺境の異変

 古代種と遭遇した後、他の道から目的地に向かおうとしたが、モンスターの大群と罠に阻まれた。

 そのまま探索することは無理だと判断した俺とおっさんは一度研究所に戻ってきた。


 もうすぐいつも夕食をとっている時間だったせいか、自然と食堂に足が向いた。

 そこで今後の探索について打ち合わせることにする。


「で、これからどうすべきですかね?」


『とにかく、古代種研究会に連絡する。

 古代種を発見した後の対応に関しては、彼らに相談するのが一番のはずだ。

 あとは、ユラにも報告は必要だろう』


「そうですね。

 地理省の依頼者にも連絡しないといけないですよね。

 古代種研究会にはどうしたら連絡が取れるんですか?」


『それは俺がやっておく。

 この研究所にも古代種研究会に所属している人間がいるからな』


「あれだけ厳重に守護しているとなると、あの印の地点には何か重要なものがあるんだとは思うんですよね」


『ああ、俺もそう思っている。

 だが、それが俺たちにとっても重要かどうかは分からんな。

 古代種にとって重要な何かなのは間違いないとは思うんだが。

 そもそも古代種に重要なものなんてのがあるのかどうかも知らんからな』


「そうですね。

 でも、辺境とかにあるならともかく、市街地の地下にあるわけですから、何があるのかくらいは把握しておいた方がいいと思うんですよね。

 放置しておいて、何が起きるか分からない状況というのはまずいと思います。

 まあ、これまでは何も起きなかったわけですから、今すぐどうこうなることはないと思いますけど」


『そうだな』


「だとすれば、現状、古代種を倒すか、大量のモンスターを倒すか、罠を突破するか、ということをしないといけないんと思うんですが。

 現実的に考えて、可能なのはどれでしょう?」


『そうだな。

 罠があった道に関しては、もしかしたら今日確認した以外の罠はあまりなくて、そのまま通れるという可能性がないわけではない。

 だから、もしかしたら一番簡単な進み方かもしれない。

 だが、一番何が起こるか分からない道でもあり、対策も取れないルートだ。

 俺としては、あまりそういう運を天に任せることはしたくない』


 俺もそれは嫌だ。

 準備のしようがないのはなんとも気持ちが悪い。

 それに、見た目が危なくなさそうな道というのが実は一番危険な道、というのはよくあるパターンな気もする。


『となると、古代種か大量のモンスターを倒さなければならないことになる。

 普通に考えれば、こちらも調査員を増やしてモンスターを倒す方が確実だろう。

 だが、それなりの犠牲は確実に出る。

 もしも古代種を遠距離から倒すことができれば、そちらの方が犠牲が少ない可能性はある。

 だからこそ、研究会に相談して古代種の情報を得る必要があるんだ』


「そうですね。

 どちらにしても俺たちだけでは判断しようがないってことですね」


『ああ、俺はこの後、研究会のやつの所に行って、事情を話してこよう。

 それから、そいつの助言を元に今後の方針を決める』


 そこまで話して、とりあえずの打合せを終えた。

 それから、そのまま夕食をとろうかと思っていたところに、ユラさんがやってきた。


『統括、ユウト君、二人一緒なのね。

 ちょうど良かった。

 聞いて欲しい話とお願いがあるの』


 ユラさんはこっちに近づくなり、そう言ってきた。

 元々俺たちに話があって食堂に来たみたいだ。

 真面目な顔をしているから、仕事の話だろう。


「ああ、ユラさん、こっちもちょうど良かったです。

 今日の探索で問題が起きまして、報告をしに行くつもりだったんです」


『ああ、まあそっちの話を先に聞こう。

 こっちの話はそれからする』


 そう言って、統括はユラさんに話の先を促した。


 ユラさんは、統括には後で同じ報告がいくだろうけど、と前置きをした上で話し出した。


『じゃあ、早速話すわね。

 二人とも知ってる通り、今、調査員で編成した守備隊が辺境の詳細調査を行っているわ。

 その守備隊の一人が今日、一次報告を持って帰ってきたのよ。

 その報告を聞いて、ちょっとサラに辺境に行ってもらうことにしたの。

 順を追って話すと、今回の詳細調査の第一目的はキュクロプスの動向の調査よ。

 調査のきっかけは、先日のサラの調査の時点でキュクロプスが姿を現さなかったことね。

 いなくなったのか、たまたま現れなかったのか、それは分からなかったんだけれど、今までは近づけば必ず現れていたから、辺境で何かがあったんだろう、ということで詳細な調査をすることにしたの。

 キュクロプスは強力なモンスターだから、腕のいい調査員を集めて守備隊を編成したわ。

 その編成は統括にも協力してもらったわね。

 それで、その守備隊からの報告では、キュクロプスはいなくなっているらしいのよ。

 もちろん、辺境の隅から隅まで探したわけじゃないけれど、それなりの範囲を調査してもキュクロプスは見つからなかったの。

 ただ、戦闘の痕跡らしきものは見つかったらしいわ。

 だから、キュクロプスは何者かと戦って倒された可能性が高い、というのが守備隊の見解よ。

 でも、倒されたはずのキュクロプスの屍骸は見つからないらしいのよ。

 キュクロプスはかなり大きなモンスターだから、野生の動物に食い尽くされた、というのは考えにくいわ。

 その上、焼いたような痕跡や埋めたような形跡も今のところは見つかっていない。

 ただ、もしかしたら、まだ見つけられていないだけでどこかに何らかの痕跡があるかもしれないから、それも含めて今も調査しているところよ。

 とにかく、倒されたにしても、そうでないにしても、今は辺境にはキュクロプスはいない。

 で、キュクロプスはいないんだけど、調査の中で別のものが見つかったの』


「別のもの?」


『ええ、ここからが二人に話したかった本題になるんだけど。

 見つかったのは古代の遺跡らしきものなのよ。

 戦闘の痕跡があった所のすぐ近くで見つかったらしいんだけど。

 今まで見つかっていなかったもので、というか、実際はキュクロプスがいて近づけなかったから、見つけられなかったんじゃないかって報告者は言ってたわ。

 まあ、見つかった場所も草原の窪んだ箇所に入り口があって、その後ろの小高い丘の中が遺跡の本体になっているみたいだから、遠くから見ても丘にしか見えなくて、今まで見つからなかったんじゃないかとも言ってたけど』


「丘の中の遺跡、ですか?

 今探索している遺跡もそうですけど、古代の遺跡はそういう風に見つかりにくいようになってるものが多いんですか?」


『いや、そうでもないな。

 普通に地上にあるものが多い。

 が、そういう隠されたようなものも珍しいというわけでもないな』

 

 統括が答えてくれた。


『ええ、ただ、まだその中には入れていないから、本当に古代の遺跡なのかどうかは分かっていないわ。

 古代の遺跡と判断したのは、入り口にマナを使って解除するタイプの鍵がかかっているかららしいのよ。

 あの辺境にある施設でマナが必要な入り口があるなんて古代の遺跡だろう、って』


 その可能性は高いだろうな。

 俺はあんまり古代の遺跡がどんな場所にあるか知らないけど、街中ならともかく、あの草原にあったんなら、最近作った施設ではないだろうし。


『守備隊は初めて見つかったものだから、報告のためにも内部を簡単に調査しておこうって話になったらしいんだけど、まだ入り口の鍵が開けられないらしいの。

 守備隊のメンバーもマナを使える人間がほとんどだから、開けようとはしたらしいわ。

 でも、一応反応はするらしいんだけど、開けるには至っていないらしいの。

 そもそもマナを使った鍵と言うのは、登録された人間のマナに反応して開くとか、決められた方法でマナを制御することで開くようになっているとかの仕組みが多いから、マナが使えるからと言って、開けられるわけじゃないのよ。

 マナを使って開けられなかったから、武器で攻撃して無理やり開けるというのも試してみたらしいの。

 でも、入り口はビクともしないらしいわ。

 それで、一次報告と合わせて、マナの制御が得意なサラに一度調査に来てほしいという連絡が来たの。

 サラは辺境の調査の担当者だから行くのは構わないし、行くべきだとも思うわ。

 もしかしたら、サラが解析すれば鍵も開けられるかもしれない。

 でも、ちょっと一人で行かせるのは心配なのよ。

 今までも一人で調査に行ってたんだけど、今までは警戒するのはキュクロプスだったわけで、結界石がある以上はそれほどの危険がないと思っていたのよ。

 でも、今はキュクロプスはいないんだけど、キュクロプスを倒すような存在がいる可能性があるわけじゃない。

 もちろん、それが何なのかは全然分かっていないんだけど、少なくともキュクロプスより強力な存在であることは確かなはずよ。

 だから、護衛を付けたいの。

 だけど、サラはもちろんバイクで辺境に行くから、馬で移動する護衛なんてついて行けないわ。

 だから、サラのバイクに乗ってもマナの干渉がないユウト君について行ってほしいの。

 ファスタルの地下の探索も重要なのは分かってるんだけど。

 でも、マナの干渉がないのもそうだけど、辺境の遺跡に入れたら、ついでに簡単な調査をしてきてほしいから、日は浅いとはいえ、地下の遺跡の探索の経験があるユウト君について行ってほしいのよ。

 もちろん、ちゃんとした調査は守備隊にしてもらうことにするから、軽く中を見てきて報告してくれればいいんだけど。

 守備隊は辺境からファスタルに戻るのに数日かかるから、ユウト君が中を見てサラのバイクで帰ってきてくれたら、守備隊に頼むよりも早く状況を確認できるのよ。

 だから、急にこんなお願いをして申し訳ないんだけど、明日一日でいいから、サラについて行ってあげられないかしら?』


 それはぜひ行きたい。

 俺が護衛として戦力になるかどうかは分からないが、適役が他にいないんだろう。

 俺としても、あの辺境で見つかった遺跡なんだったら気になる。

 俺がトリップさせられた原因とつながりがあるかもしれない。

 でも、ファスタルの地下探索も俺は仕事として受けている。

 そして、地下も異常な状態であることがわかっている。

 それを放り出してついて行っていいんだろうか?

 俺が煩悶していると、


『いいんじゃないか。

 明日はお前はサラについて行ってやれ』


 おっさんがそう答えた。


「俺はそうしたいですけど、地下の方も放っておける状況ではないでしょう」


『そうだがな。

 さっきも話してたが、地下の方は色々準備が必要だろう。

 ああ、じゃあ俺たちが話したかった内容を話そう』


 そう言っておっさんはユラさんに向き直る。


『コイツと一緒に進めている地下の調査だがな。

 色々面倒な状況になってる。

 簡単に説明するとな……』


 おっさんはユラさんに地理省の人から古代のファスタルの地図を借りたこと。

 どうやら、ファスタルは古代の都市の上にできた街である可能性が高そうなこと。

 その地図に気になる地点があったこと。

 その地点を調べに行って、古代種【這いずりしもの】を見つけたこと。

 這いずりしものを避けて調べようとしたところ、大量のモンスターと大量の罠らしきものが設置されていたこと。

 そこに至るまでにモンスターに遭わなかったことから古代種がモンスターを統率している可能性があること。

 などを説明した。


『なるほど。

 もしかしたら、ファスタルの街の中にあるのに、モンスターが地下から出てこなかったのは古代種が統率していたからなのかしら』


『ああ、俺はそうじゃないかと思ってる。

 古代種はその印の地点にある何かを守っていて、人間を襲うことが目的ではないから、地上にはモンスターを出してこない。

 モンスターを地上に出してしまったら、地下の存在がバレて大量の人間がモンスターを討伐するために地下に来る可能性があるからな。

 古代種は確かに強力だが、多数の人間が来たら守りきれるかどうか分からなかったんだろう。

 数は力だからな。

 古代種ってのは知能が高いらしいから、それくらい考えている可能性はある、かもしれない。

 正直俺にはその辺の判断はつかない。

 それでだ、諸々の事情を話すのと、その古代種に対する対策も合わせて古代種研究会に相談しようと思っている。

 俺が明日一日でその辺の情報収集とできる限りの準備、それと明日お前が帰ってきたときに一緒に古代種研究会の奴も合わせて、明後日以降の探索の打合せができるように段取りしといてやる。

 だから、明日はサラと辺境に行けばいい。

 ついでに地理省への報告も済ませといてやる』


 お、おっさんはなんていいおっさんなんだ。

 ちゃんと部下のことも考えているし、仕事のことも考えている。

 これができる男ってやつか。

 見た目はゴツイ武闘派のおっさんなのに、なんて気遣いのできる人なんだ。

 おっさんになら、安心して準備を任せても大丈夫だろう。

 ていうか、明日おっさんが準備してくれるなら、普通に俺いらないだろう。


「分かりました。

 じゃあ、地下探索の準備はお任せします。

 俺は明日はサラと一緒に辺境に行きます」


『よかった。

 じゃあお願いね。

 多分、もうすぐサラも食堂に来ると思うから、って、あ、来た来た。

 サラー』


 サラは食堂に入ってきたところだった。

 ユラさんに呼ばれて、こちらを見る。

 それから、すぐに駆け寄ってきた。


『サラ、明日の辺境ね、ユウト君も一緒に行けることになったから。

 良かったわね』


『ほんとに?

 ユウト、忙しいんじゃ。

 いいんですか?』


「ええ、こっちもちょっと準備が必要になりまして、明日は統括がその準備をしてくれるので、俺はサラについて行きます。

 邪魔にならないように気をつけます」


『邪魔だなんて。

 ユウトが来てくれるなら、安心です』


 サラの期待を裏切らないようにがんばろう。


『はあ、ほんとバカップルよね。

 だから、さっさとくっつけとあれほど』


 後ろでうるさいのがなんか言っているけど聞こえない。


 その後はもう少しお互いの情報交換をしながら夕食をとった。

 夕食後、解散して俺とサラは家に帰ってきた。


「明日は何時くらいに出るんですか?」


『そうですね。

 辺境に行くのに3時間近くかかりますから、朝は早く出ようと思います。

 ユウトはいつも6時くらいに起きますよね。

 6時30分くらいに出てもいいですか?』


「分かりました。

 何か持っていくものってありますか?」


『一応、武器は持っていってください。

 それ以外の調査に必要なものは私が準備します。

 ルッツ君も一緒に行きますか?』


「そうですね。

 行けるなら連れて行きたいです。

 地下の探索ではルッツも役に立ってくれてますから、今回も何か役に立つことがあるかもしれません」


『分かりました。

 じゃあ、明日は私とユウトとルッツ君で行きましょう。

 今日も本当はマナの練習をご一緒したかったんですけど、明日の準備がありますから、私はこれで失礼しますね』


「はい。

 じゃあ、また明日」


 サラは自分の部屋に入っていった。

 俺としては、何も準備する必要はないみたいだから、いつも通りデータの整理をして、マナの練習を始めた。

 だが、練習の最中もずっと、どうやればあの古代種と戦えるだろう、と考えていた。

 いや、戦わない可能性もあるんだけど。

 貴重な存在なんだろうし。

 でも、仮に戦ったとして、どうやるか、というのを考えていた。

 近づけないらしいから、俺としてはヨーヨーの光弾で攻撃するしかないだろう。

 でも、初撃を当てたとして、あのサイズの怪物を仕留めることはできないだろうし、近づかれて終わりだろうな。

 ヨーヨーは攻撃力はすごいんだけど、連射性能はどうだろう。

 そういえば、連射って試したことなかったな。

 今のところの感触では、それほど連射できそうな感じはしていない。

 練習次第だろうか。

 でも、もっと連射ができて、威力の強い武器があればなんとかなるんじゃないだろうか。

 武器屋にあったマシンガンとかどうだろう。

 でも、マシンガンの弾って小さいよな。

 小さい弾をいくら撃ち込んでも、あのサイズのモンスターを仕留め切れそうな気がしない。

 戦車や戦闘機でもあればいけるのかもしれないが、この世界にそれを求めても仕方ないよな。

 なんか便利な魔法でもあればなあ、なんて考えながらマナの練習を続ける。

 最近は何か他のことを考えながらでも、簡単な制御ならできるようになってきている。

 ただ、サラと比べるとまだまだだ。

 もっとがんばらないとな。


 その後もしばらく練習したが、明日のことも考えて、早めに眠りについた。


 

 


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