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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
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異世界生活9日目 日課~エレクター技師

「よし、いい朝だ」


 今日はいつも以上にスッキリ目が覚めた。

 時間はいつも通り、6時だ。

 こっちの世界に来てから、6時に起きるのが普通になってきてるけど、元の世界では6時起きなんて必要に迫られない限り絶対になかったな。

 最近寝るのも10時過ぎが多いから、大体8時間睡眠だし、我ながら早寝早起きの規則正しい生活だ。

 元の世界の生活では2時か3時くらいに寝て、7時前に起きることが多かった。

 やっぱり、規則正しい生活が健康な体を作るよな。

 おかげで、すこぶる体調がいい。

 

「よし、ルッツ、行こう」


 今日もルッツと日課の朝練のために中庭に行く。

 ただし、今日はナイフの使用感を確認するために、ベルトとナイフも持って行く。


 中庭に着くと、おっさんが運動しているのが見えた。

 俺が言うのもなんだけど、毎日飽きずにがんばってて偉いよな。

 俺も見習わないとな。


 それと、今日は珍しくもう一人、知らない人がいるのが見えた。

 端の方で何かごそごそやってるみたいで何をしてるのかは分からなかったけれど、何やら大量の荷物を持ち込んで実験をやろうとしているらしい。

 何をしているのか見に行きたいけど、準備中に邪魔するのも悪いし、俺もやることがあるから近づくのはやめておいた。


 まずは準備運動も兼ねてルッツといつも通りの運動を始めた。

 


 いつもより若干短めで切り上げ、ナイフの使用感を確かめることにした。

 まずは、ベルトを装着してナイフの抜き差しを確かめる。

 鞘にはナイフの抜け防止がついているが、指で押したらすぐに抜くことができるようになっている。

 そして、差し込む時はそのまま差し込めて、抜け防止機能も働くようになっているようだ。

 これはいいな。

 多少の慣れは必要だと思うけど、咄嗟の時でもすぐに対応できるようになりそうだ。

 あとは、ナイフ自体の扱いなんだけど、これに関してはどうしようもないな。

 知らないものは知らないからなあ。

 なんか正しい持ち方とか、ナイフを持ったときの姿勢とかあった気がしたけど、それも漫画か何かでちらっと見たくらいで、覚えていたとしても正しいかどうかさえ判断がつかない。

 うーん、誰かに聞いたほうがいいよな。

 おっさんに聞いてみようか。

 まあ、今はおっさん夢中で暴れ回ってるから、食堂で会った時にでも聞いてみよう。


「ルッツ、一旦帰ろう」


 それから、一旦帰ってシャワーを浴びた。

 俺がシャワーから出たとき、サラが仕事に行くところだった。


「あ、サラ、今から仕事ですか?」


『はい。

 今日もいつもと同じくらいの時間に帰ってくる予定です。

 ユウトは今日もいつもくらいの時間に食堂に行きますか?』


「そうですね。

 今日は一日マッピングをして、日が落ちる前くらいに帰ってくる予定ですよ」


『そうですか。

 じゃあ、私もできたらそのくらいの時間に食堂に行きますね。

 良かったら、夕飯をご一緒させてください。

 じゃあ、行ってきます』


「いってらっしゃい」


 と言って、送り出した。

 

 俺はその後、食堂に朝飯を食べに来た。

 おっさんはいつも通り5人前くらいの定食を食べていた。

 ナイフの使い方を聞いてみようかと思って、おっさんに近づこうとしたところで、総務課の俺の担当の人が近づいてきているのに気がついた。

 食堂で会うのは初めてだな。


『おはようございます』


「おはようございます。

 こんな所で会うなんて珍しいですね。

 どうかしたんですか?」


『ええ、ユウトさんに用があったんですよ。

 昨日話していたエレクター技師の件ですが』


「ああ。

 予定の連絡がきました?」


『はい。

 というかですね、たまたまその技師の方が今日から実験をするために、この研究所に来ているらしいんです。

 朝一から中庭で実験をしているそうですよ。

 何か危険な可能性があるらしいので、頑丈な壁がある研究所で実験をしたいそうです。

 話は通っているらしいので、ユウトさんが名乗れば相談に乗って頂けるはずですよ』


「ほんとですか?

 ああ、あの端の方で何かしてた人かな。

 ありがとうございます。

 早速話しに行ってみます」


 これは嬉しい誤算だな。

 こんなに早く会えるとは思っていなかった。

 早速プロッタのケースを持って相談しに行ってみよう。


『では、お伝えしましたので、あとはお願いします』


「はい。

 わざわざありがとうございました」


 それから急いで食事を終わらせて、家でマッピング装置のケースを取ってから再び中庭に向かった。

 説明に使うつもりなので、スマホとPHSも持ってきた。

 ルッツには留守番してもらうことにした。


 中庭に着くと、さっきと同じところでその人はまだごそごそと何か準備をしていた。

 話は通っているらしいので、近づいて声をかけることにした。


「すみません。

 私は調査員のユウトといいます。

 マッピング装置の調整をして頂いたエレクター技師の方とお聞きしたのですが」


『はい?

 はいはい。

 私はエレクター技師ですよ。

 はい、私がマッピングの装置の調整をしましたよ。

 ええ、聞いてます。

 調査員の方が私に用があると。

 あなたがその調査員の方ですか?』


 うん?

 ちょっと独特な感じの人だな。

 見た目はすごい痩せ型で目に隈ができていて、ちょっと神経質そうだけど頭は良さそうな感じだ。

 高校時代だったら、ハカセとかいうあだ名を付けられそう。

 いや、そんなことはどうでもいい。


「ええ、ちょっと私が持っている機械について、相談に乗ってほしいことがあるんです」


『ええ、ええ。

 そのような話を伺っていますよ。

 私にできることならば協力するようにと。

 私はエレクター関係のことしか分かりませんけど、お話だけは聞きますよ、ええ。

 どうされたんですか?』


「私が持っている装置なんですが、エレクターを補給することができなくて困っています。

 このままではすぐにエネルギー切れで動作しなくなります。

 それで、あなたが調整したマッピング装置のケースからエレクターを補給できるように改造したいんです。

 ですが、私が勝手に改造するわけにはいきませんから、協力して頂きたいのです」


『なるほど。

 それは、できるかどうかはもう少し詳しく聞いてみないことには分かりませんね、はい。

 質問があります、ええ。

 一つ目はあなたの持っている機械はプロッタのようなエレクターの補給方法に対応しているのか?

 二つ目はあなたの持っている機械に必要なエレクターの大きさは分かっているのか?

 はい、この二つのお答えによって、できるかどうか変わりますね』


 うん。

 多分、ワイヤレスに対応しているかどうか、必要な電圧は分かっているかどうか、の二つだな。

 電圧に関しては、おそらく5Vと言っても理解してもらえないだろうな。

 まあ、日本語が通じるから、電圧と言って通じる可能性がないわけではないが。

 いや、もっと確実な方法をとるか。


「まず、プロッタと同じ補給方法には対応していません。

 ですから、ケース内部からエレクターを供給する導線を引き出して、私の装置に接続する必要があると考えています。

 次に、エレクターの大きさですが、私にはエレクターに関する知識があまりありませんので、なんと説明していいか分かりません。

 ですが、エレクターの大きさを計測することができるのであれば、私が持っている機械を接続すれば、必要なエレクターの大きさは分かります」


『なるほど。

 今日私は、エレクターの計測装置も持ってきていますので、あなたの持っている機械を渡して頂ければすぐに測定可能です、はい。

 どうされますか?』


 よかった。

 計測装置は存在しているみたいだ。

 まだ電気=エレクターは確定じゃないけど、多分間違いないだろうから、これだったら思ったよりも簡単に充電まで辿り着けそうだ。

 

「はい。

 今持ってますけど、ここで測れるんですか?」


『ええ。

 この装置です、はい。

 この端子につなげば、エレクターの計測ができます』


 それはけっこうでかい装置だった。

 昔の携帯電話みたいな感じだ。

 肩掛け式のでかい本体から線が伸びてその先が測定用端子になっている。

 見た所、自作っぽい感じがする。

 この人が作ったんだろうか?


「じゃあ、試しにこれを測ってもらっていいですか?

 ちなみにエレクターの大きさの単位はなんて言うんですか?」


 とりあえず、なんかあって壊れると嫌なので、スマホではなくPHSのバッテリから測ってもらうことにした。

 PHSは使えなくなっても特に問題はない。

 端子が分かりやすい、というのもある。

 ちなみに俺の使っているPHSのバッテリは定格3.7Vだ。

 実際は結構電圧の変動があるはずだから、3.5~4V位じゃないだろうか。

 ボルトだったらありがたいんだけどなあ、と思いながら単位も聞いた。


『はい。

 エレクターの単位ですか?

 ええ、それはエレクトですね、はい。

 これのエレクターは、ええと、はい、8エレクトくらいですね』


 おお、測れた。

 これで多分、エレクターは電気で確定だな。

 はっきりとは分からないけど、8エレクトで4Vくらいってことは多分1V=2エレクトくらいだろう。

 分かりやすくていいな。

 

「じゃあ、こっちはどうですか?

 ちょっと端子が小さくて当てづらいんですけど測れますか?」


 今度はスマホを手渡す。

 PHSのバッテリと違って、マイクロUSBの端子だから、小さくて測りづらいと思う。


『ええ、はい、大丈夫です。

 小さいものを測ることもできます』


 なんて言いながら、技師の人は測定器のコードを取り換えていた。

 小さいものを測るときは小さい端子を使うようだ。

 

『ええと、これのどこを測ればいいですか?』


「その両端の端子です。

 いけそうですか?」


『はい。

 ええ、うーん、ほい。

 はい、これは、えーと10エレクトとちょっとですね。』


 やっぱり1Vが2エレクトくらいっぽいな。

 マイクロUSBは5Vのはずだし。


「それのエレクターを補給したいのですが、プロッタのケースから10エレクトを供給することは可能ですか?」


『ええと、少々お待ちください、はい。』


 そう言いながら、技師はごそごそと鞄を漁りだした。

 そして、中からメモ帳を引っ張り出すと、中身を確認している。

 どうやら、そこにプロッタのケースの仕様が書いてあるようだ。

 み、見たい。


「それって、俺にも見せてもらえませんか?」


『これですか。

 これは私のメモなので見せても構いませんが、ええ、見ても読めないと思いますよ、はい。』


「いいです、読めなくても。

 ちょっと興味があるだけなので。」


『では、どうぞ。

 あと、ケースから10エレクトの供給は可能です、はい。

 少々作業が必要ですが。

 ええ、あとはその機械の端子が小さいので、それ用のコネクタを作る必要があると思います、はい。』


 そう言いながら、メモを渡してくれた。

 そこには図が描かれていて、びっしりとメモ書きで埋められているような感じだった。

 ただ、字はめっちゃ汚かったし、整理されている感じではなかったから、あんまり読めなかったけど。

 だけど、技術者のメモってこんな感じのが多い気がする。

 俺のノートもこんな感じだ。

 見にくいのは確かなんだけど、いらない情報は一切書かれていないはずだ。

 むしろ必要、というか装置に関わる情報を全て書き込んだら汚くなってしまった、みたいな。

 分かるわー。

 親近感湧くわー。

 ちょっとおかしな人っぽいけど、そこがまた、いかにも理系技術者って感じがして、異世界でもこんな人がいるんだな、と嬉しい気持ちになった。

 図自体は残念ながらしっかりした回路図とかではなかった。

 おそらく、ケース内部の簡単な見取り図と各部のエレクト値なんかのメモだろう。

 

「その作業にはどの程度時間がかかりますか?

 というか、お願いしたらやっていただけるんですか?」


『ええ、やりますよ。

 協力するように言われてますし、はい。

 時間は3、4時間あればできますよ、はい。

 部品は私の手持ちのもので代用できるでしょう、ええ。

 今日だったら、今準備している実験の用意ができたら、あとは放置しておくだけで、私はそのあと時間ができますから、ええ、やりましょうか?』


「ほんとですか?

 お願いします。

 費用はどうしましょう。

 ちゃんとお支払します」


『いえ、いりません、はい。

 協力することはあなたの依頼の報酬の一部と言われています、はい。

 ただ、私から一つお願いはあります。

 プロッタと制御端末の使用状況を後で報告してください、はい。

 自分が調整したものの動作状態が気になります、ええ。

 まだ、お渡ししてそれほど日が経ってませんから不具合は起きていないでしょうが、しばらく使ってから何かあるかもしれません、はい』


 運用直後は何事もなくてホッとしてたら、しばらくしてからトラブルが起きる、なんてことはよくある。

 この人はそれもちゃんと分かっているみたいだ。

 エンジニアだな。


「分かりました。

 プロッタをある程度使い込んだ後、しっかり報告書にしてお渡しします」


『ええ、はい、それで十分です。

 これを見ながらコネクタを作るので、今日はお預かりします、はい。

 夕方には完了していますから、ここに取りに来てもらっていいですか?』


「分かりました。

 では、お願いします」


 スマホとプロッタのケースを預けて、中庭を後にした。

 


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