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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
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8日目終了 武器屋~マッピング~夜

 マッピングの依頼者であるレオンハルトさんとの打ち合わせを終えて、一度家に帰ってきた。


 まだ、昼までには時間がある。

 このまま、マッピングに行くことにした。


「ルッツ、待たせたな。

 行こう。」


 ルッツを連れて、ファスタルの街に出た。


「マッピングの前に、まずは武器屋だな。」


 おっさんにも言われたが、ヨーヨーは武器としては、ちょっと使いづらいところがあるんだよな。

 遠距離攻撃としてはいいかもしれないけど、サラマンダーみたいに突っ込んでくる相手だと、近づかれた場合に対処しづらい。

 やっぱり近接用の武器がほしいな。

 武器屋の店主に相談してみよう。


 ファスタルの武器屋は大通りから少し離れた裏通りにある。

 裏通りと言っても迷いようがないくらい大通りに近いが。

 この店に来るのは最初にサラにファスタルを案内してもらって以来だから、数日ぶりか。

 

「こんにちはー。」


 そう言いつつ、武器屋の中に入る。

 まあ、武器屋とは言っても、けっこう包丁とか工具なんかの日用品も置いてあるから、金物屋みたいな感じなのかもしれないな。

 

『おう。

 サラちゃんの連れじゃねえか。

 ユウトだったか。

 今日は何のようだ?』


 この店主はサラには苦手意識を持たれてるけど、俺は嫌いじゃない。

 統括のおっさんに近い空気を感じる。

 おっさんの方がちょっと知的な感じだが。

 武器屋の店主は荒い。

 でもそれが武器屋らしくて、俺はいいと思う。


「今日は武器を買いに来ました。

 近接戦闘に向いてて、素人にも扱いやすいようなのがいいんですけど。

 何かお勧めってありませんか?」


『近接戦闘か。

 そうだな。

 素人ってことは武術の心得はないんだな?』


 武術、まあ中学や高校の体育での剣道や柔道なんて心得のうちに入らないよな。


「ないですね。

 一応、身体能力には自信がありますが、武器を使ったことはありませんね。」


『なるほど。

 予算はどのくらいで考えてる?』


「あんまり具体的には考えてないですけど、数万までですかね。」


『だったら、この辺だな。

 小型の銃って選択肢もあるが、使ったことがないんだったら当てられない可能性も高いし、値段が跳ね上がるからな。』


 俺としては、今後マッピングを続けて金が溜まったら、いい武器に買い換えればいいかと思っているので、今は中途半端に高いものを買う気はない。

 この世界では、遺跡からの発掘品だからなのか、銃の値段が異常に高い。

 銃の値段の相場なんて知らないが、数十万から数百万てのは高すぎるんじゃないかと思う。

 発掘されてる数自体が少ないんだろうな。

 まあ、だからこそトライファークはヨーヨーの武器利用を考えたんだろうけど。


 店主が勧めてくれたものを見てみる。

 それらは短剣、という分類になると思う。

 大きいもので鉈とか脇差っぽいのとか。

 小さいので果物ナイフとかバタフライナイフ?みたいなやつとか。

 バタフライナイフなんて、テレビドラマで頭のおかしいやつがかちゃかちゃやってるのしか見たことないが、個人的にイメージは良くない。

 さて、どれにしようか。

 ファンタジーゲームでよく見たダガーっぽいのもあった。

 これは結構使いやすそうでいいかもしれない。

 でも日本人的には脇差ってのもなかなか捨てがたい。

 日本刀ってめっちゃ切れ味いいんだよな。

 でも、これって手入れってどうするんだろ。

 そうか、手入れしやすいものじゃないと困るよな。


「手入れしやすいのってどのへんですか?」


『手入れ?

 そうだな、日常の手入れをやりやすいのはこの辺じゃないか?

 刃の研ぎ直しなんかはうちに持ってきたらやってやる。』


 そう言って勧められたものを見ていて、ちょっと目に付いたのがあった。

 軍隊で使ってそうなナイフだった。

 コンバットナイフって言うのかな。

 俺、武器に詳しくないから正確な名前は知らないけど、海外ドラマで見たことあるやつだ。

 あんまり分からないけど、悪くなさそうな気がする。

 ベルトみたいなのに鞘がつけられて、胸の辺りにナイフを携帯できるようになっている。

 使いやすそうだ。

 サイズも大きくないし、持っていて動きにくくなることもないだろう。


「これいくらですか?

 このベルトも合わせて。」


『おう、なかなかいいのを選んだな。

 ベルト込みで3万だな。

 簡単な手入れ道具も付けてやる。』


「ほんとですか?

 じゃあ、これにします。

 うん?これはこっちとセットなんですか?」


 横に一回り小さいけど同じようなのが置いてあった。


『ああ、こっちは女向けだな。』


 そんなのもあるんだな。

 サラにプレゼントとして買っていこうかな。

 でも、サラはマナウェポンがあるから使わないよな。

 うーん、でもお揃いってのは憧れるものがある。

 自分では絶対やらなかったけど、俺はペアルックとか羨ましいと思う方だ。

 いいか、使わなくてもプレゼントして迷惑ってことはないだろう。

 俺のと一緒についでに買ったということにすれば気恥ずかしさもちょっとマシだし。

 いやまあ、俺用のナイフのついでってのは事実だからな。

 もし迷惑そうだったら渡さなければいいだろう。


「こっちも買います。

 全部でいくらですか?」


『お、プレゼントか。

 健気でいいねえ。

 まあ、サラちゃんはあのマナを使うやつがあるから使わんかもしれんが。

 よし、セットで5万にしといてやる。』


「ありがとうございます。」


 ナイフを買った。

 早速装備する。

 ベルトを装着した。

 うん、いい感じだ。

 腰にはマッピング装置用のベルトをつけているからナイフ用のベルトも腰につけたら、少々鬱陶しくなるところだったので、なおさら気に入った。

 あとは、使い勝手だけど、それは明日の朝にでも試してみるか。

 

『なかなか悪くねえじゃねえか。

 まあ、あとは使って慣れてくれ。』


「はい、そうします。

 ありがとうございました。」


『おう、また来いよ。』


 武器屋を出た。

 そろそろ昼だったので、今日も大通りの露店で軽食を買った。



 昼食を済ませた後、マッピングを進めることにする。

 昨日発見した地下の周辺を計測するのは躊躇われたので、昨日とはちょっと違う方向に向かって計測を行った。

 今日でマッピングを開始して4日目だけど、なんだか傾向、というか癖のようなものがおぼろげながら見えてきた。

 というのは、最初はただひたすら無秩序で混沌としていたように感じられた裏通りだが、計測しながら歩いてみると、いくつかのパターンで分岐が増えていった結果でこうなった、というような法則性、みたいなものが見えつつある。

 まだ一部しか計測していないから、全体がそうなのかどうかは分からないが、もしかしたら、それなりの地図を作って計画的に整備すれば、思ったよりは簡単に区画整理は進むかもしれない。

 もう少し全体が見えてきて、俺の考えが正しければレオンハルトさんにも報告してみよう。

 

 それから、続けてマッピングを行った。

 今日は特におかしなものを見つけることはなかった。

 日が傾き始めたところで、作業は終了して研究所に戻ることにした。



 研究所に戻って、いつも通りの時間に食堂に来た。

 おっさんがいたので、話しかける。


「お疲れ様です。」


『おう、お疲れさん。

 ん?

 武器を買ったのか?』


 おっさんは俺の胸に装着したナイフを見て聞いてきた。


「ええ。

 俺は武器の扱いは素人なので、使いやすそうなナイフにしました。」


『いいんじゃないか?

 でかい剣とかだったら持ってても荷物にしかならんだろうからな。

 ナイフだったら、慣れればそれなりに使えるようになるだろう。』


「俺もそう思います。

 ところで、統括の方は調査の状況はどうですか?」


『ああ、特に問題はないな。

 明日には終わる。

 予定通り、明後日から地下探索だ。』


「分かりました。

 じゃあ、そのつもりで準備しときます。」


 準備ってもあんまり用意することってないんだけどな。

 俺の場合、物の準備というよりは心の準備だな。

 モンスターがいるって分かってる所に行くわけだし。


『おう。

 ああ、そういえば明かりはこっちで用意しとくから、お前は用意しなくていいぞ。

 いつも遺跡探索に使ってる照明装置をそのまま使えるからな。』


「それは助かります。

 お願いします。」


『任せろ。

 じゃあ、俺はまだ仕事があるから行くぞ。』


 そう言って、おっさんは食堂を出て行った。

 見かけによらず、忙しいらしい。

 そりゃそうだよな、偉い人だし。


 それから、ルッツと晩飯を食べていると、


『お疲れ様です、ユウト。

 私もご一緒していいですか?』


 と、サラがやってきた。

 仕事帰りっぽい。


「どうぞ。

 仕事帰りですか?」


『ええ。

 この時間だったらユウトとルッツ君はここにいると思って。』


 俺に合わせて来てくれたようだ。


『それ、ナイフですか?』


 俺の胸のナイフを見て聞いてきた。


「ええ、あのサラマンダー相手にヨーヨーは使いにくいですからね。

 どうですか?」


 なんとなく、変じゃないか聞いてみた。


『ええ、かっこいいです。

 私のマナウェポンも剣みたいになったりしますけど、あんまり使い勝手は良くないんですよね。

 強すぎるというか。

 まあ、マナの制御次第なんですけど。

 ユウトには危険なことはしてほしくないですけど、そういうナイフの方が探索には向いてそうです。

 私も探索とかするんだったら、そういうのがほしいですね。』


 あれ?

 これってプレゼントを渡すのに絶好のタイミングじゃね?


「あの、サラ。

 じ、実は受け取って欲しいものがあって。」


 プレゼント渡すのってちょっと照れくさいよな。

 しかも明らかに自分のものとお揃いって。

 いや、考えたら渡せなくなる。

 勢いを大切にしよう。


『はい。

 何ですか?』


「これなんですけど。」


 と言って、かばんからベルト付きの、俺のものより一回り小振りのナイフを取り出す。

 かわいいラッピングなんてない。

 そのままだ。

 まあ、あの武器屋の店主にラッピングなんて望む方がおかしいよな。


 そのまま、サラに差し出す。


『え、これって?』


「武器屋で見つけたんです。

 俺のやつの横に置いてあったんですけど、使い勝手が良さそうだったから、サラにどうかなって思って。」


『いいんですか?』


「ええ。

 お世話になってるお礼、と言って武器を渡すのはどうかと思いますけど。

 いらなければ、俺が予備として持っておくので、返してもらってもいいです。」


『いります。

 嬉しいです。

 返さないです。』


 サラはすごい勢いでナイフを受け取った。

 喜んでくれた?ようで一安心だ。


『ありがとうございます。

 大事にします。』


 とてもかわいい笑顔で言ってくれた。

 うん、買ってきて良かった。


「まあ、あんまり使う機会はないかもしれませんけどね。

 お守り代わりになればいいです。」


『はい。

 ユウトとお揃いですね。』


 いや、口に出して言われると、本当に恥ずかしい。


「ま、まあ、喜んでくれて何よりです。

 とにかく、夕食を済ませましょう。」


 そう言って、晩飯を続けた。

 

 食事後、サラとルッツと家に帰った。


『今日もデータ整理してからマナを使う練習ですか?』


「はい。

 そのつもりです。

 一緒に練習しますか?」


『はい。

 お願いします。』


 それから、サラと一緒にマナを使う練習をした。

 しばらくはお互い黙々と練習していたが、途中から、またサラに回路について教えることにした。

 ちなみになぜかその日、サラは俺があげたナイフをずっと持っていた。

 よっぽど嬉しかったらしい。

 喜んでくれたのはありがたいんだけど、ナイフをずっと持ってるってのもどうなんだろう。

 もっと別のものをあげたほうがよかったかな。

 また、何かいいものがあったら買ってこよう。

 お世話になってるし。

 

 しばらく教えた後、キリのいいところで切り上げることにした。


「サラ、今日はこれくらいにしときましょう。」


『はい。

 ありがとうございました。

 ユウトが教えてくれる方法はとてもおもしろいです。

 まだ私はそれほど理解できていませんが、もっと勉強したら色んな応用が利きそうです。』


「そうですね。

 俺もそう思います。

 まあ、俺の場合、理屈は分かっててもマナの扱いが不慣れなので、まだうまくいってません。

 サラは俺より早くうまく使えるかもしれませんね。」


『ユウトはすごいからすぐに使えるようになりますよ。

 でも、もし私が先に使えるようになったら、今度は私が色々教えてあげますね。』


 サラはすばらしい笑顔で微笑んで言ってくれた。

 とても可憐だ。

 ナイフさえ抱えていなければ。

 くそっ。

 なんで俺はナイフなんて買ってきたんだ。

 やっぱり、今度違うものを買ってきてプレゼントし直そう。


 そんな、おかしな決意とともにその日の練習を終えた。


『じゃあ、おやすみなさい。』


 サラが部屋を出て行った。

 

 俺ももう寝よう。

 明日は特にやらないといけないことってなかったよな。

 朝練の時にナイフの使用感を確認するくらいかな。

 それ以外は普通にマッピングしよう。


 あとは、明後日に向けて心の準備、だな。

 とにかく、今日はゆっくり寝て、これからに備えるか。


 この日もいつも通り、ルッツを抱えて、眠りについた。 



 

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