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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
62/119

6日目終了

 マッピングを終えて、研究所に帰ってきた。

 今日も、昨日と同じくらいの時間だ。

 そのまま、いつも通りの時間に食堂に来た。

 相変わらず、5人前くらい食べているおっさんを見つけたので、今日は自分から近づいてみた。


「お疲れ様です。」


『おう、お疲れさん。』


「前、いいですか?」


『おう。』


 おっさんの前の席に座って食事を始める。


「体の方はどうですか?

 どっか痛んだりしてませんか?」


 そう、おっさんは大丈夫だと言っていたけど、あんだけ派手に吹っ飛んだわけだし、一応、気にはなっていたのだ。

 交通事故とかでも、事故直後は大した痛みがなくても、しばらくしてから痛みが出てくることがよくあるらしいし。


『ん?

 なんだ心配してくれてるのか?

 あの程度で怪我などせんわ。』


 あの程度、という言葉には呆れるばかりだが、怪我がないなら何よりだ。


「そうですか。

 それは良かったです。」


『まあ、なんだ。

 すまなかったな。

 無理やりつきあわせて。』


 おっさんに謝られた。

 やっぱり、このおっさんは基本的にすごくいいおっさんなんだよな。

 そりゃそうか。

 そうじゃなかったら人をまとめる立場になんかつけないよな。


「ええ、まあ怪我がなかったんだったら、俺としても気にすることはないですから、別にいいですよ。」


『今考えれば、俺としてもちょっと意固地になっていたところがあったな。

 一応、反省はしている。』


 それって、ユラさんのせいだよな。

 全く、あの人は碌なことしないよな。

 真面目な意図もあったみたいだけど。


「ええ、反省はして下さい。

 できたら、朝の運動ももう少し控えめにした方がいいですよ。」


『ああ?

 それとこれとは話が別だろう。』


「いや、統括が毎朝暴れるから、中庭がぼこぼこになって、整地が大変なんでしょ?」


『いいんだよ。

 あれはあれで。

 なかなか調査で結果が出せてないやつの小遣い稼ぎに繋がってんだから。』


 うーん、まあ、それは確かにありそうなんだけど。

 ぼこぼこにしてる本人がそう言うのはどうなんだろうな。


「まあ、そう言うんだったら俺から言うことはないですけど。」


『ところで、おまえは今、ファスタルの裏通りのマッピングをしてるんだろう?』


「ええ。

 でも、なんで知ってるんですか?」


『前も言っただろう。

 俺は統括だぞ。

 調査員の動向位、把握してる。』


 誰がどの調査をしてるとかの報告でもいってるんだろうか。

 少なくとも、おっさんってちゃんと統括としての自覚はあるんだろうな。

 調査員のことを常に気にかけているのは本当っぽいし。

 サラさんも頼られてるって言ってたし。


『で、調子はどうだ?』


「まあ、順調ですよ。

 どこまでやる必要があるか迷ってますけど、めぼしい所は全部やろうかと思ってます。」


『そうか、そりゃなによりだ。

 あの依頼はなあ。

 ずっと、誰も受けなかったからな。

 裏通りの整備はファスタル全体の課題になっているんだが、なかなか計画が進まないんだ。

 それは、現在の裏通りがどんな状態なのか把握している人間がいないことが大きな原因だからな。

 ある程度しっかりした地図があれば、整備も進むようになるだろう。

 がんばれよ。』


「がんばりますけど、そんな大役とは思えませんけどね。

 作業も大して難しいわけじゃないですし。」


『そりゃあ、あんな仕事を自分から受けるやつなんてそんなにいないだろうからな。

 もっと、遺跡の探索とかの調査の方が人気があるしな。』


 やっぱり、マッピングはトイレ掃除的な位置づけなんですね。

 別に気にしないけど。


「でも、遺跡の探索って危険なんでしょ?」


『そりゃそうだが、その分報酬もいいからな。

 調査員の大部分はバカだからデカい仕事を好んで受ける傾向がある。

 裏通りのマッピングなんて地味な仕事は人気がないんだよ。

 地味な割に危険もあるしな。

 いや、おまえをけなしてるんじゃないぞ。

 あの仕事の意義はそれなりの地位の人間はみんな認めてる。

 だがな、今は調査員も人手不足でな。

 不人気な依頼はなかなか進んでいない状況だ。

 俺としてはもう少し依頼の受託率と達成率を上げたいんだがな。

 もうすぐ人を増やそうと思っているが、それもどうなるか分からんしな。』


「そうなんですか。

 統括も気苦労が多くて大変ですね。

 がんばってください。」


『他人事だな、おい。』


「他人事ですし。」


『まあ、そうなんだが。』


 などと、統括と取り留めのない話をしながら食事を済ませた。


 食事後、家に帰ると、サラさんもちょうど帰ってきたところだった。


「おかえりなさい。

 今日は食堂には寄ってこなかったんですか?」


『はい。

 ちょっと遅くなったので、ユウトさんが夕食の時間には間に合わなさそうでしたので一旦帰ってきました。

 今から行ってきます。』


 昨日は俺が食堂にいると思って来てくれたのか。

 サラさんはほんとにかわいいな。

 俺もついて行きたいけど、もう晩飯食ったからな。

 食事中にただ横にいられても鬱陶しいだけだろう。


「そうですか。

 いってらっしゃい。」


『はい。

 すぐ帰ってきますね。』


 サラさんはすぐに出かけて行った。

 さて、今日のデータの整理でもするか。

 

◇


 今日は一日中マッピングをしていたので、昨日よりもデータ量は多かった。

 とはいえ、整理には大して時間はかからず、すぐに終わった。

 一応、昨日の分と合わせると、大体1km四方のマップが2枚とちょっと、といったところだ。

 これで問題なければ20万もらえるはずだ。

 これ、やばくね?

 日給10万てやばくね?

 税金なんてないし、週休2日としても一月の手取りが200万超えるだろ。

 手取り年収2500万。

 なんてセレブ。

 家でも買おうかな。

 いや、まずはサラさんにお世話になっているお返しだな。

 それにしても、なんでこんなに給料いいのに今まで引き受ける人がいなかったんだろう。

 いや、確かにマッピング装置の性能はでかい。

 もしかしたら、これがなくて、地道に計測とかしてたら、この10分の1も進んでないのかもしれない。

 だとすると、日給1万、年収250万。

 手取りだから、まあそんなに悪くない水準だけど、一気に一般のサラリーマンじみてくるな。

 なるほど、みんなこの装置のことを知らないんだよな。

 それで、引き受けない内にどんどん依頼料が上がったんだろう。

 なんたる幸運。

 もしかして、俺がもらったチートは運勢アップとかかもしれない。

 この世界で最初に会ったのもサラさんだし。

 なんてあほなことを考えて、浮かれているとサラさんが帰ってきた。


『ただいま帰りました。

 ユウトさん入っていいですか?』


 帰ってきてすぐ、サラさんは俺の部屋に来た。


「どうぞ。」


『すみません。

 お仕事されてました?』


「いえ、もう終わってます。

 これから、マナを使う練習でもしようかと思ってます。」


『そうなんですか。

 私も一緒に練習していいですか?

 ユウトさんに教えてもらった方法の練習をしようと思ってます。』


「どうぞ。」


『じゃあ、もう一つ練習装置をもらってきたので、持ってきますね。』


 サラさんは自分の部屋に練習装置を取りに行った。

 俺に渡したせいで、サラさんの手持ちがなくなっていたから、もう一つ手に入れてきたらしい。

 

 サラさんはすぐに戻ってきた。


『じゃあ、始めましょう。』 


「すみません、俺がずっと貸してもらってるから。」


『そんなの、全然いいんですよ。

 お姉ちゃんがいっぱい持ってますから。』


 そういえば、ユラさんが製作者だったな。

 製作者だけあって、いくつか手持ちのものがあるのだろう。

 

「じゃあ、始めますか。」


『はい。』


 というわけで二人で思い思いにマナの制御の練習をした。

 基本的に練習中は集中しているので、あまり会話はしなかった。


 その中で、サラさんはものすごいスピードで練習装置の光を点けたり消したり、何個かだけ点けたり、色々なパターンで点けたりしていた。

 いや、俺は回路がどうこうはサラさんに説明していない。

 ただ、使う、使わないをスイッチに置き換えるのを説明しただけだ。

 それだけでこんなことができるのか。

 やっぱり天才は違うな。

 俺も地道にがんばろう。


◇


 しばらく、黙々と練習していた。


「ふう、なかなか思ったようにはいきませんね。

 サラさんはすごいですね。

 ほんとに自由自在って感じで。」


『いえ、ユウトさんに教えてもらった方法で今までよりだいぶ楽になりましたから。

 もっと色々な応用もできそうですし。

 ユウトさんはそれを試しているみたいですし。』


 あ、バレてた。

 まあ、横でうんうん唸りながら、首を捻りながら、色々な点灯パターンを試してたら分かるか。


「そうですね。

 色々試してはいるんですけど、なかなかしっくりこないですね。」


『何を試されているのか教えて頂ければ私も協力できるかもしれませんけど。』


「いえ、もうちょっと一人で悩ませてください。

 もうちょっと試したら、サラさんにも説明します。

 今は俺自身、まだよく使えないのでちゃんと説明できないんです。」


『分かりました。

 楽しみに待ってますね。』


 実際、回路を思い浮かべて、マナを制御する、というのはすこしずつ慣れてきた。

 でも、回路中の一箇所に意識が集中すると、それ以外の部分のマナの制御ができなくなっていた。

 並列思考、みたいなことはできないから、うまく処理するには慣れるしかないと思うんだけど、まだ今はうまくいっていない。

 もう普通にマナを制御するのにいちいち集中しなくてもよくなっている。

 でも、回路を作って、その中で制御しようとすると、どうしてもその瞬間に制御しようとしている部分の回路に集中してしまい、他の部分への意識が途切れる。

 割と単純な操作はできるようになってきたが、前にも考えた通り、それなら回路なんて使う必要はない。


「まあ、もうちょっと時間がかかりそうですけど、気長に待っててください。」


 焦る必要はないだろう。


「もう遅くなってきましたから、寝ますか?」


『そうですね。

 ユウトさんは明日はどうされるんですか?』


「俺は明日も一日裏通りでマッピングしようと思ってます。

 サラさんは明日も仕事ですか?」


『実は私、明日は休みなんです。

 ですから、マッピングにご一緒したいんですけど、ダメですか?』


 おお、美人の上目遣い。

 これはやばいな。


「いえ、ダメじゃないです。

 ぜひ一緒に行きましょう。」


『良かった。

 朝のルッツ君との運動もついていっていいですか?』


「いいですよ。

 でもそっちはただ走り回るだけですよ。」


『はい。

 私ももっと運動しないといけませんから。』


「分かりました。

 いつも大体六時くらいに起きて中庭に行きますけど、それでいいですか?」


『分かりました。

 六時ですね。

 じゃあ、それくらいにこの部屋に来ますね。』


「はい。

 じゃあ、おやすみなさい。」


『おやすみなさーい。』


 サラさんは上機嫌で出て行った。

 俺も上機嫌だが。

 明日はサラさんとのデートだ。

 楽しみだ。

 いや、マッピングは真面目にやるけど。

 デートだと思ってると気分が全然違うな。

 あ、だめだ、あんまり浮かれると、また眠れなくなる。

 考えないようにしよう。


「うん、何も考えないことにするか。

 ルッツ、寝よう。」


 その日もルッツを抱いて寝た。

 ルッツは今日もフワフワだ。




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