5日目終了
区切りのいい所でマッピングを終えて、ルッツと研究所に戻ってきた。
ちょうどいつも食堂で夕食をとるくらいの時間だったから、そのまま食堂に向かうことにした。
いつも通り、日替わり定食とルッツのご飯をもらって、席を探していると、遠くにいた調査員統括、もといおっさんと目が合った。
俺は、おっさんと絡む気がなかったし、席も空いていたので、おっさんには軽く会釈だけして、手近な席に座ろうとした。
すると、おっさんがこっちに向かって手を振ってきた。
どうやら、こっちに来い、と言っているらしい。
まあ、今更避けても仕方がないので、素直に近づいていくが、俺おっさんに呼ばれるようなことしたっけな?
『おう、疲れてるとこすまんな。』
と言われた。
いや、なんで疲れてること知ってんだよ。
「どうも。
そんなに疲れてませんけど、どうして疲れてると思ったんですか?」
『俺は調査員統括だからな。
この研究所の調査員の日々の動向くらい把握している。』
あらやだ、何このストーカー、と顔には出さずに心の中だけで思った。
「そうですか。
ところで、何か御用ですか?」
俺は素っ気なく返事を返したが、別におっさんが嫌いだからではない。
おっさんがさっきからいい笑顔をしているように見えるからだ。
なんかめんどくさい空気を感じる。
『まあ、大した用じゃないんだが、』
その前置きは大した用のフラグですよね。
ええ、知ってます。
『おまえ、昨日中庭の壁が破壊されたの知ってるか?』
ドキッとしたが、できるだけ平静を装って、
「いえ、全く知りません。知りえません。」
と、答えた。
『そうか。
で、あれな、一応今日の朝には自己修復機能で直っていたんだが、』
そのまま、おっさんは話し始める。
え、俺知らんって言ったよな?
無視するんなら、俺に知ってるか聞いた意味ないだろ。
『そうそう簡単に壊れるもんじゃないんだ。
まあ、壊れることがないわけじゃない。
大規模な実験時に破壊してしまうことはままある。』
「そうでしょうね。
じゃないと、そんな機能付ける意味ないですし。」
『そうだ。
あれだって、かなりの費用をかけて作ったらしいからな。
それでだ、今日の朝、俺はその破壊された場所を観察してみたんだが。』
ああ、今日雑貨屋で聞いた情報が強烈で忘れてたけど、そういえば、朝練の時、おっさんそんなことしてたな。
「そういえば、今日の朝は静かにしてましたね。
途中からいつも通りになったみたいでしたけど。」
『ああ、そうだな。
で、その破壊された箇所なんだがな。
かなり小さかったんだよ。
痕から察するに、あれは大規模な実験の爆発で破壊されたわけではないな。』
変に鋭いな、おい。
「へ、へえ、そうなんですか。
でも、壁が壊れる原因なんて色々あるんじゃないですか?」
『いや、色々はないな。
さっき実験でよく壊れるって言ったがな、それだって結構大規模なやつでの話だぞ。
普通にそこらのやつがちょっとやってる程度の実験では壊れん。
それでだ、あの破壊の痕跡から考えて、あれをやった奴はそんな大規模な爆発なんかを起こしたわけじゃないようでな。』
「へえ。
そうなんですか。
それはすごいですね。」
『ああ、すごいな。
個人で壁を破壊したなんて前例はあまりないだろうな。
まあ、皆無ってわけでもないだろうが。
古代兵器を使えば、いくらでも可能だろう。』
「じゃあ、今回も古代兵器が使われたんじゃないですか?」
『それは無いな。
そんな実験をするなら、俺のとこに報告が上がってくる。
今回はそんな報告はなかった。』
え?
報告がいるのか?
ああ、そういえばサラさんが故意に中庭の設備を破壊するのは禁止って言ってたっけ?
ということは中庭を破壊する可能性がある場合は事前に許可とか取る必要があるんだろうな。
いや、俺だって最初から壁を壊すとは思ってなかったわけで。
で、おっさんは何が言いたいんだろう?
『それでだ。
俺は考えた。
報告が来てないから、古代兵器ではなさそうで、破壊したのはおそらく個人だ。』
「はい。」
『となると、やったのはお前だろ?』
「はい?」
どうしてばれた?
『いや、別に咎めるつもりはないから、隠さんでもいいぞ。』
「え?どうして俺がやったと?」
『俺は統括だぞ。
調査員の実力など把握している。』
いや、この理論出されたら、話が完結しちゃって反論しにくいな。
まあいいか。
「まあ、しょうがないか。
はい、俺がやりました。」
『そうだろうそうだろう。』
おっさんは満足そうだ。
「それで、壊したのは俺ですけどそれがどうかしましたか?
一応、ユラさんに弁償はしなくていいと言われましたけど。」
『いや、咎めるつもりはないと言っただろ。
そんなに突っかかってくるな。
俺が知りたいのはどうやってあの壁を壊したか、だ。』
うーん、あんまり人にヨーヨーのこと言うつもりもないんだけど。
まあ、どうせこれからも中庭で練習することがあるだろうし、おっさんには先に言っといた方が楽かもな。
そう判断した俺は、おっさんに壁を壊した経緯を説明した。
『なるほど。
おもちゃでな。
にわかには信じがたいが。
まあ、事実、壁は壊れたようだから本当なんだろうな。』
「ええ、以後気を付けます。」
『ああ?
別に気を付ける必要はない。
どんどん練習すればいい。
というかな、今度それ俺に撃ってみろ。』
ああ、やっぱりこのおっさんはぶっとんでる。
「嫌ですよ。
怪我されたら嫌ですし。」
『おまえ、俺をバカにしてるのか。
おもちゃの攻撃くらいで怪我なんぞするはずないだろうが。』
「いや、だからそのおもちゃの攻撃で壁が壊れたんですってば。」
『なにか、じゃあお前は俺があの壁より弱いと言いたいのか?』
めんどくせえ。
めっちゃめんどくせえ。
もういいか。
「分かりましたよ。
じゃあ、明日の朝に試しましょう。」
と言うと、おっさんは満足したのか、
『おう、頼むぞ。
じゃあ明日の朝な。』
と言って、食堂を出て行った。
ちなみにちゃんと食器は片付けていった。
「なんだったんだろ、あれ。」
本当によく分からなかったが、明日おっさんに怪我をさせないようにだけ気を付けよう、と考えながら、ルッツと食事を始めた。
食事を始めてから5分くらいした頃、
『あ、ユウトさん。
食事中ですか?
ご一緒してもいいですか?』
今度はサラさんがやってきた。
おっさんと違って、サラさんは華やいでいいなあ。
「ええ。
ぜひぜひ。」
『ありがとうございます。
今日はマッピングしてきたんですよね?
どうでした?』
サラさんには朝食の時にマッピングに行くことを伝えてある。
雑貨屋に行くことは伝えていないが。
「ええ、おもしろかったですよ。
とりあえず、このあいだ二人で迷ったあたりの計測は済ませました。」
『ほんとですか?
じゃあ、もうあの辺りでは迷わずに済むんですね。』
「まあ、少なくとも今日作った地図があれば俺は迷いませんね。
サラさんにも写しをお渡ししましょうか?」
『いえ、私はユウトさんと一緒の時しか裏通りに入らないので、いいです。
でも後で地図は見せてくださいね。』
かわいいことを言ってくれる。
明日からも頑張ってサラさんが安心して裏通りに入れるようにしよう。
いや、あえて裏通りに行ってほしいわけではないが。
「ところで、サラさん。
さっき、おっさ、・・・統括が変なことを言ってきたんですが。」
と言って、さっきまでのおっさんの様子を説明した。
サラさんはヨーヨーのことも一応知っているので、隠さずに壁を破壊したことも説明した。
それを聞いたときはかなり驚いたようだが、素直に聞いていたので、嘘だとは思われてないみたいだ。
すごい信用されてるな。
『ああ、それは多分お姉ちゃんのせいですよ。
今日、お姉ちゃんが統括をからかっているのを見ましたから。』
「え?
どんな風に?」
『えっとですね。
あんたが長年がんばって壊そうとしてた壁が昨日あっさり壊されたねえ、誰の仕業なんだろうねえ、壊した奴はあんたより全然強いんだろうねえ、残念だねえ、
って悪い笑顔をしながら統括に言ってました。』
と、ユラさんの声を真似しながらサラさんが説明してくれた。
ああ、それは想像できるな。
その時のユラさんはすごいうざい顔してるだろうな。
殴りたくなるような。
っていうか毎朝何してんのかと思ってたら、おっさん壁を破壊しようとしてたのかよ。
「それは、統括はキレなかったんですか?」
『まあ、体はぷるぷる震えてましたが、なんとか我慢してくれたみたいです。
それで、あまりにも統括がかわいそうだったので、統括がどこかに行った後に、私、お姉ちゃんにどうしてあんなにひどい挑発をしたのか聞いたんです。』
「それは、ユラさんがおもしろがってただけじゃないんですか?」
『まあ、そういう気持ちがあったのは確かでしょうけど、私には真面目な理由を答えました。
あの壁が壊れるような武器があるけれど、自分は壊れる瞬間は見たわけじゃない。
威力がすごいのは確かだけど、実際にどうなのかはよく分からない。
だから、統括をけしかけて、どの程度の脅威なのか確認したい、だそうです。』
それは、分からなくもないけど。
なるほどな。
そんな言い方されたから、おっさんはさっきあんなに意固地になっていたのか。
俺が原因なのは確かだけど、ユラさん、もうちょいやり方あると思うんですけど。
本当にめんどくさい人だ。
まあ、なりふり構ってられない状況なんだと思っておくことにしよう。
なりふり構ってられないわりに緊張感のないやり方だが、それは気にしないことにしよう。
「サラさん、そういえば、俺ちょっとユラさんに話したいことがあるんですけど、ユラさんの部屋ってどこですか?」
『お姉ちゃんの部屋ですか?
私の部屋の近くですよ。
食事の後でご案内しましょうか?』
「ありがとうございます。
助かります。
そういえば、昨日教えたマナの使い方はもうユラさんに説明したんですか?」
『あ、そうだ。
その報告をしようと思ってたんでした。
朝はちょっとバタバタしてたので、お昼休みの後で説明したんですよ。
そしたら、お姉ちゃん、最初は静かに聞いてたんですけど、話し終わった途端にユウトさんを探しに行こうとしたんです。
あれは、絶対ユウトさんを拉致して問い詰めるつもりだったと思います。
私は必死に止めたんですけど、スイッチが入ったお姉ちゃんはなかなか止まらなくて。
最終的には今日はユウトさん裏通りに行ってるからいないって言って、諦めてもらいました。』
やっぱりそうなったか。
まあ、予想通りだな。
サラさんはがんばってくれたみたいだけど。
「それは、ご迷惑をおかけしてすみません。」
『いえ、私の方こそ、もう少しでユウトさんにご迷惑をおかけするところでした。』
「じゃあ、今からユラさんに会いに行くのは危ないですかね?」
『そうですねえ。
でも、まだ暴走したお姉ちゃんに襲われるよりは、部屋でゆっくりしている所に自分から行った方がマシかもしれませんね。』
ユラさんすごい言われようだな。
いつものことかもしれないが。
「それじゃあ、やっぱりこの後、案内してもらってもいいですか?」
『お安いご用です。』
今日は真面目な話をしに行くのだから、ユラさんも空気を読んでくれるだろう、多分、きっと。
◇
食事後、約束通り、サラさんにユラさんの部屋へ案内してもらった。
サラさんが言っていた通り、サラさんの部屋から100m位奥にある部屋だった。
所長なんだから、もっといい部屋とかに住んでるのかと思ったけど、普通だった。
部屋に着いたら、サラさんが扉をノックした。
ノックの後、すぐに
『はーい。』
というユラさんの声が聞こえて、すぐに扉が開かれた。
『誰ー?
あ、サラとユウト君じゃない。
どうしたの?』
今のところは、落ち着いているみたいだ。
「今日、例の件をちょっと調べてきたので、報告しようかと。」
と、言うと、ユラさんは察してくれたようでちょっと真面目な顔になった。
例の件、と言ったのはサラさんに言っていいものか迷ったからだ。
だが、その言い方がまずかったらしい。
サラさんに聞きとがめられた。
『ユウトさん、例の件って何ですか?』
俺がサラさんにも説明していいものか、ちょっと迷っていると、横からユラさんが、
『なんでもないわよお。
大人の話だから。
サラはもう帰っていいわよ。
さ、ユウト君入って入って。』
と、変な笑顔をしながらサラさんを追い払おうとした。
当然、サラさんがそれで帰るはずもなく、
『大人の話ってなんですか?
私がいちゃまずいんですか?
説明してください。』
と、怒り出した。
怒った顔もかわいいんだけど、俺はどう説明していいものやら分からない。
「あの、サラさん。
サラさんが心配するような話じゃないから大丈夫ですよ?
ちょっとした報告があるだけですから。」
と、必死で宥めようとしたが、全然効果がなかった。
そりゃ、こんなこと言ってる俺の横でユラさんがずっとにやにやしてたら意味ないわな。
いや、もういっそ今日はやめとこうか、俺がそんなことを考え始めた頃、
『冗談よ。
サラも入って。
別に聞いても大丈夫よ。
ホント、ユウト君のことになったらいつにも増して冗談が通じないんだから。』
と、ユラさんが呆れたように言いだした。
あ、話してもいいんだ。
まあ、サラさんも王女様の一人だから、聞いておくべきなのかな。
その辺の判断は俺には分からないから、ユラさんに従うことにした。
ただ、もう、とか言って赤い顔をしているサラさんは可愛くて仕方なかった。
◇
ユラさんの部屋に入れてもらった後、今日雑貨屋の店主から聞いた内容をかいつまんで説明した。
店主との約束通り、店主が干渉されることを望んでいないことも伝えた。
ユラさんは予想と反して、会いに行く場合は俺を通すことを約束してくれた。
あと、ヨーヨーの危険度がさして高くなさそうだということと、トライファーク(2人と話しているときはあの国と言っていたが)が現状は攻撃してくる可能性が低いであろうという予想を話すと、ちょっと安心した顔をしていた。
『そう。
私が持っている情報とそれほど変わらないけど、【あの国】にいた人が言っていたんだったら、情報の確度が増した、と考えてもよさそうね。
引き続き考えないといけないことは多いけど、少し安心かしら。』
とユラさんは言っていた。
トライファークに武力増強を主張する派閥がいること、ヨーヨーはトライファークの研究者が武器としての機能を付けたこと、を話した時はかなり厳しい表情をしていたから、ある意味気休めの発言かもしれない。
ただ、ひとしきり真面目な話し合いをした後で、またニヤニヤしだして、
『やっぱりサラが見込んだだけはあるわねえ。
調査が早い早い。
頼りになるわあ。
ねえ?サラ?』
と鬱陶しい絡み方をし始めた。
サラさんは嫌がるかと思いきや、
『そうです。
ユウトさんは頼りになるんです。』
とか言って頷いている。
なにこのチョロイン。
いやいや、素直なのはサラさんのいい所だ。
それにしても、素直すぎないだろうか。
「たまたまですよ。
俺は特に何もしてません。
ただ、聞いてきただけですから。」
『そうやって、聞いてくるだけの調査をできる人がどれだけいることか。
本当に、最近の若い奴はなってないのよね。』
と、ユラさんがため息をつきながら飲み屋にいそうなおっさんみたいなことを言い出した。
いや、あんただって十分若いでしょ、と思ったが、女性に年齢の話題はタブーだろう。
例えそれが、褒めているつもりでも地雷になることが往々にしてあることなのだ。
とにかく、報告はできたし、ユラさんもちゃんと聞いてくれたから、この話題はこれでいいだろう。
「ところで、さっき統括に絡まれたんですけど。
ユラさんが変な挑発したとか。
なんでそんなことしたんですか?」
『え?
私変な挑発なんてしてないわよ。
事実をありのままに伝えただけよ。』
「いや、統括を挑発するような言い方してたってサラさんに聞きましたよ。
それで、統括が凹んじゃったらどうするんですか?
あの人、みんなに頼りにされてるんでしょ?」
『馬鹿ねえ。
あんなくらいであのゴリラが凹むわけないじゃない。
むしろ凹んでくれるならありがたいわよ。
ちょっとくらい大人しくなってくれた方がみんなもっと近づきやすいわよ。
ただでさえ、中庭ぼこぼこにされて困ってるんだから。
苦情もいっぱい来るし。』
とか言っている。
あ、やっぱりあれ迷惑してるんだ。
そりゃそうだよな。
だが、一応おっさんの朝練は俺の心の癒しでもあるから、ここはおっさんをフォローしておくことにしよう。
「失礼な。
男は意外と繊細なんですよ。
統括は確かに巨漢だし、元気すぎる気もするけど、今頃凹んでるかもしれませんよ。」
と、言っておいた。
決しておっさんを馬鹿にはしていない。
すると、ユラさんはまたニヤニヤしながら、
『あの男に限って繊細なんてことないわよ。
でも、男は意外と繊細、ねえ。
ふふふ、サラ、聞いた?
ユウト君繊細みたいだから、サラが色々力になってあげないといけないみたいよ、公私ともに。』
「何を言ってるんですか。
そんなこと言って、サラさんが真に受けたらどうするん・・・。」
と俺が言ってると、サラさんは真面目な顔で頷いていた。
いや、サラさん、これはからかってるんですって。
『別に真に受けて構わないのよ。
私は、なんだったら間違いが起きたってオッケーって言ってんだから。』
とか言っている。
この人はダメだ。
自分の妹すらおもちゃ扱いしている。
このままではサラさんまで悪い影響を受けてしまう。
俺がちゃんとしないと。
とにかく、ここはユラさんのホームだ。
分が悪い、帰ろう。
「本当に何を言ってんですか、全く。
報告は終わりましたから、帰ります。
行きましょう、サラさん。」
サラさんに声をかけてユラさんの家を後にした。
出るときに
『あ、マナの話も聞きたいのに。』
と言っていたが、無視した。
しつこく追って来ない所を見ると、今日は勘弁してくれるみたいだ。
◇
サラさんの部屋に戻った後、サラさんと少し話をした。
『ユウトさんは今日はまだ何かされるんですか?』
「そうですね。
今日計測した分のデータの整理はします。
その後、マナを使う練習をしてから寝ます。」
雑貨屋店主に聞いたことに関して、もう少し整理しようかとも思ったが、昼にある程度考えをまとめたので、今日のところはやめておくことにした。
あんまり一気に考えすぎてもドツボにはまりそうな気がしたからだ。
『そうですか。
本当はご一緒したいんですけど、お邪魔になりそうですから、今日は自分の部屋にいますね。
おやすみなさい。
ルッツ君もおやすみ。』
と、ルッツを撫でてから奥の部屋に行った。
「ふう。
もう一頑張りしてから寝るか。」
『わん』
その後、かばんに入れておいたマッピング器具をケースにしまってから、データ整理を始めた。
データ整理と言ってもノートの確認と、作成した地図が間違っていないか見るだけなので、すぐに終わった。
それからはしばらくマナの複数制御の練習をした。
一応、ちょっと慣れた気がするが、まだまだ頭の中で回路を組み立てて考える、ということが自然にできない。
今日は寝不足と疲労のせいか、特に集中できなかった。
マナの扱いには集中力を要する、と入門書にも書いてあったが、それがよく分かる状況だった。
集中していないと正確に働かないばかりか、意図しない動きになる可能性もあった。
これは気を付けないといけないな。
ある程度練習した後、シャワーを浴びてから、ベッドに入った。
明日は一日マッピングするかな。
あ、今日作った分も総務課に提出して、報酬をもらわないとな。
朝練ではおっさんを怪我させない程度にぶっとばさないといけないし。
あれ?ぶっとばさなくてもいいんだっけ。
なんて、考えていたが、寝不足のせいか気づいたら熟睡していた。




