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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第4章 異世界生活4日目
53/119

古代種

 気を取り直して別の古代種関連の本を探すことにした。


 ちなみに、さっきの【古代種との遭遇】は一般書籍のコーナーで見つけた。

 いや、興奮しすぎた俺があほだったんだが、一般書籍コーナーに置いてあったってことは、専門書ではなく、完全に読み物ってことなんだろう。

 最初から、それぐらい分かりそうなもんだけど、図書館に来て早々に古代種と書かれた本を見つけた俺は、とてもテンションが上がってしまって、全然そんなこと考えられなかった。

 まあ、あの本のおかげで今はすごく冷静になれたから、そういう意味でとても役に立ったということにしておこう。

 今度は一般書籍コーナーではなく、もっとそれらしい分類の棚を探すことにしよう。

 そうすれば、専門的なことが書かれた書籍が見つかるかもしれない。

 だとすれば、古代種ってどの分類になっているんだろう。

 生物か?

 伝承的な分類とかか?

 伝承的な分類ってなんだ?

 もしかしたら宗教とかそっち系かな?

 いや、宗教だと、仮に書いてあっても生態とかではなく、神格化された崇拝対象としてだろうから、あんまり俺がほしい、生態とか生息地とかの情報は得られない気がする。

 とりあえずは、手堅く生物のコーナーを見ることにしよう。



 生物のコーナーに古代種の本はなかった。

 いや、正確には見つけられなかった。

 蔵書が多すぎて、全部の本を確かめたわけじゃない。

 司書の人に聞いてみようかと思ったが、やっぱりちょっと馬鹿にされるのが怖くて、諦めた。

 別に今回見つけられなくても、図書館に通って、ちょっとずつ探していけばいい。

 ただ、もし古代種に関する本がたくさんあるんなら、これだけ探したら見つかっているだろうから、あったとしてもかなり少ないだろうということは分かった。

 あと、古代種以外の興味深い本はたくさんあった。

 例えば、モンスターに関する本とか。

 今度、ぜひ読んでみたい。


 そこで、ふと気づいた。

 ここは、研究所の図書館で色んな論文も保管されているんだから、さっきの古代種との遭遇の著者である古代種研究会の論文を探せばいいんじゃないだろうか。

 研究会の名前がついているんだから、論文の一つや二つは出しているだろう。

 いい加減、大量の蔵書からあるかも分からない本を探すのに疲れたので、馬鹿にされてもいいや、という気になっていた。

 だから、古代種研究会の論文について、司書の人に聞いてみることにした。

 論文の探し方なんて分からないから、というのもあるけど。


「すみません、ちょっとお聞きしたいのですが。」


『はい。なんでしょう?』


「ちょっと探している文献がありまして。

 古代種研究会、というところが発表している論文ってありますか?」


『古代種研究会、ですね。

 少々お待ちください。』


 良かった。

 司書さんもプロだ。

 業務関係の質問に対して、馬鹿にするような態度は一切とられなかった。

 なんだ、こんなことなら最初から聞けばよかったな。

 俺は、カッコつけすぎだな。

 分からないことは素直に聞けばいいんだ。

 そんなことを考えていると、


『現在、調査員権限で確認できる一般ゾーンで閲覧可能な古代種研究会発行の論文は3件となります。

 全て論文保管棚に収められています。

 棚番号はこちらになります。』


 と、棚番号が書いてあるメモ用紙を渡してくれた。


「ありがとうございます。早速見てきます。

 ちなみに研究者専用スペース側ではもっと古代種研究会の論文が保管されているんですか?」


『すみません。それは機密事項になりますので、お答えできません。』


「分かりました。

 また、分からないことがあったら聞きに来ます。」


 と、お礼を行って、教えてもらった論文保管棚に向かった。


 保管棚について、司書さんからもらったメモに従って論文を探した。

 3件ともすぐに見つかったので、近くの机で読むことにした。

 正直、古代種研究会が怪しい組織だったら、論文なんて出してないだろうと思っていたので、見つかってホッとしていた。



 3つの論文を読んでみた。

 正直、想像以上だった。

 古代種研究会の方々、怪しい組織とか疑ってすみませんでした。

 どう考えても、俺のほうが出自も何もかも怪しいバカでした。


 内容としては、古代種の定義から書いていた。

 というか、この研究会が古代種の定義を作っていた。

 論文によれば、古代種というのは、古代文明時代から生き続けている生物の総称らしい。

 従って、例えばものすごく凶悪な生物がいても最近生まれたものであれば、それは古代種ではなく、ただの怪物、という解釈らしい。

 逆に、古代文明当時から生き続けているのであれば、ドラゴンだろうが、亀だろうが、犬だろうが、猫だろうが、蟻だろうが古代種という扱いらしい。

 なるほど、さっき読んだ【古代種との遭遇】は物語向けにかなり脚色された内容だったようだ。

 古代種の見分け方、というのが未だ確立されていないらしいが、基本的に古代種は強大な強さを持っていて、知能も非常に高いとされる。

 個体によっては、人の言葉も理解するらしい。

 古代種の長寿の秘密は解明されていないが、普段はエネルギー消費をあまりせずに静かにしていることが多く、その生活に鍵があるのではと論文には書かれていた。

 そして、その強大な力とは裏腹に大して栄養摂取を必要とせず、古代文明崩壊後も生き続けられたのは、その燃費の良さによる所が大きい、と書いていた。

 推測らしいが。

 古代種の存在が知られ始めたのは、まだそれほど昔ではなく、比較的最近に発掘が始められた遺跡から見つかった文献が最初の信頼できる情報源、とのことだった(ただし、この論文自体がそれなりに古そうなので、ここ数年とかではなさそうだ)。

 その文献には、その周辺にいる古代種の情報が載っていたらしいが、研究会がその情報に記された場所に行っても、古代種を確認することはできなかったらしい。

 ただ、そこで古代種の痕跡を見つけたようで、いくつかの古代種の痕跡が略図とともに書かれていた。

 ものすごく長い体毛とかめちゃくちゃでかい爪とか。


 最初に見つかった文献以降、各地の遺跡で古代種の存在を示唆する文献が複数見つかっているが、古代種自体の発見事例はこの論文執筆時にはないらしい。

 そのために、古代文明の時代には古代種は存在していたが、現在はもう存在していない、という人が多いということらしい。

 ただ、見つかった文献には古代種の寿命に関する記述があり、理論上は数万年生きると考えているとされていたようだ。

 ただし、古代文明自体が数万年と経たずに崩壊してしまったために、その寿命を確認した人は存在せず、数万年の寿命というのは、あくまで理論上のもので、そこまで生き続けられなかったという意見が多いようだ。

 古代種研究会は数万年の寿命という記述を信じて、古代種を調査している派閥の代表という位置づけだった。


 また、論文の中には古代種の役割についても書かれていた。

 古代種は元々は普通の生物だったらしい。

 それを何らかの方法で改良して生物として、人間に都合のいい存在として作り変えたようだ。

 古代の文献にはその辺りの理論が書いてあったようだが、理解できないようで、今も研究中のテーマらしい。

 遺伝子操作か何かで作ったんだろうが、俺もそのへんは専門外なので全然見当もつかない。

 ただ、どうやって生み出されたのかは解明されていないが、その役割はある程度分かっているようだ。

 古代種はどうやら、危険な動物を統率する存在として作られたらしい。

 科学技術が進歩した古代においても、怪物や凶暴な動物に襲われる事件というのがあったようで、その対策として生み出されたのが古代種だということだ。

 動物は本能的に自分より強い存在を恐れ、自分の生息域に自分より圧倒的に強い存在がいると大人しくなる、と古代では考えられたようだ。

 それで、人間の言う事は聞くが、強大な力を持った古代種という存在を作り出し、モンスターの被害がある地域の統率者として君臨させたのだ。

 だから、研究会は強いモンスターがいるのに人間に大した被害が出たことがない地域や一帯の動物の統率が取れている傾向がある地域などで古代種の探索をしているらしい。

 古代種との遭遇では洞窟だの砂漠だのを探索したことになっていたけど、あれも脚色なんだな。


 というのが、論文の内容だった。

 実際に古代種は見つかっていないようだが、俺も古代種は存在している気がする。

 その方が夢がある。

 一度、古代種に関する調査の依頼も確認して、場合によっては受けてみたい気もするな。

 まあ、マッピングが優先なんだけど。


うん、あんまり具体的な収穫はなかったけど、俺としては満足のいく時間だった。

 気づけば、結構時間が過ぎていた。

 もう夕方だな。

 よし、もう一回ルッツと遊びに行こう。


「ルッツ、待たせたな。

 遊びに行こう。」


『わん』


 ということで再び二人で中庭に遊びに行った。




5/4 誤字修正 確率 → 確立

5/5 誤字修正 一体 → 一帯

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