マナのお勉強【質問】
マナの入門書について一通り読み終えたので、サラさんに質問する内容をまとめておくことにした。
と言っても本の内容については、それほど分からなかったことがたくさんあるわけじゃない。
まず、本の内容については、
・そもそもマナとは何なのか。
・王族はマナの制御がうまい人間が多い、と書いていたがなぜなのか。
・本に書いてある全てのものにマナが存在している、という説の信憑性。
・マナを使った装置を自作できるという噂の小国とはどんな国なのか。技術が発展した国なのか。
・この本の著者はどんな人なのか。
ってところかな。
それ以外にマナ自体について聞きたいことがいくつかある。
と、考えていると、
『ユウトさん、入ってもいいですか?』
サラさんが来たようだ。
うん、ちょうどいいタイミングだ。
「どうぞ。」
『すみません。
お待たせしてしまいました?』
「いえ、ちょうどさっき本を読み終わった所です。」
『本当に一日で読み終わっちゃったんですね。
さすがです。
それで何か分からないことありました?』
「そうですね。
本の内容自体はそれほど分からないことはなかったのですが、いくつか聞きたいことがあります。」
『私で分かる範囲でしか答えられませんが、どうぞ。』
「ではまず、これは根本的な質問になりますが、マナとはそもそも何なんですか?
俺の想像では、生体情報、つまりその生物としての固体情報のようなものかと思ったんですが、それを起動因子として使っているのかと。」
『そうですね。
それは、今も研究されています。
これだけ利用しているのに、その利用してるものが何であるかが分からない、というのは情けないのですが、事実、あまりはっきりとは分かっていません。
ユウトさんの言うようにその人の生体情報と考えられてはいます。
もう少し細かく言うと、思考情報というか、その人の思考パターンを情報として扱っている、という考え方が現在の主流です。』
なるほど。
俺の考えでそう外れというわけでもないのかな。
脳波的なものかとも思っていたので、思考パターンというのは、それと似たようなものという気がする。
ただ、そういうのは俺も専門外だしよく分からない。
「じゃあ次に、王族はマナの制御がうまいらしいのですが、理由は分かっているんですか?」
『それもはっきりした理由は分かっていません。
ですが、いくつかの要因が重なっていると言われています。
まずは、王族は子供のころからマナの使用について、教育されます。
普通の人がマナの教育を受けるのは学院に入ってからなので、大体13歳くらいからが多いです。
ですから、王族の人間の方がマナの扱いに優れやすいと言われます。
次に、代々マナの扱いに長けているので、才能として引き継がれやすい、とも言われます。
あとは、これはあまり私はそう思いませんが、王族はそれ以外の人より頭がいいので、集中力を必要とするマナの扱いに長ける、と主張する人もいます。
もう一つ、理由は分かっていませんが、黒髪の人と黒い瞳の人はマナの扱いが上手いです。
これは、上手い人が多いではなく、他の髪色、目の色の人に比べて確かに上手いです。
理由が分からなくても、みんなそうなので、これはみんな確定事項として扱っています。
王族は黒い髪の人が多いです。
私がユウトさんに素質があると思った理由の一つでもあります。
根拠は本当に全く分からないらしいですが。』
なるほど、色々理由はあるが、どれも科学的根拠があるわけじゃないんだな。
「サラさんもその教育のおかげで、マナの扱いが得意なんですか?
あと、黒髪で黒い瞳でもあるし。」
『いえ、私の場合はちょっと特殊で。
最初からある程度マナを使うことができました。
教育もされましたが、ほとんどのことは独学でできるようになりました。』
天才ってやつか。
「すごいですね。
なるほど、それでマナの扱いが得意と言ってたんですね。」
『そうですね。
あんまり偉そうに言いたくはないですが、バイクの操作に関しても、王族がみんな私と同じようにできるわけではありません。』
「なるほど。
では次の質問ですが、本には全てのものにマナが存在している説がある、と書いてますが、信憑性はあるんですか?」
『それについては、いくつかの派閥があります。
全てのものに存在している派、
動植物のみに存在している派、
人間のみに存在している派、
動植物と一部の物に存在している派です。
未だ、どの派閥もはっきりした証拠が出せないので、堂々巡りの議論が続いています。
一応、この研究所は動植物と一部の物に存在している派の人が多いです。
ただ、さっきも言ったとおり、マナは思考パターンと捉えている人が多いので、
ものが思考するのか、といった事が議論になることが多く、しばしば哲学的な話になるようです。』
「そうなんですか、なんとも言えない所なんですね。
では、次に本に書いてあるマナを使った装置を自作できる噂の小国なんですが。
こんな国が本当にあるんですか?
技術が発展している国とかですか?」
と聞くと、サラさんはちょっと曇った顔になった。
『それは、
実はその国は私の国と戦争、とまでは言いませんが、とても仲が悪くて頻繁に国境で小競り合いが起きています。
そのため、あまり情報が入ってきていません。
ですが、とても技術が進んだ国、と言われています。
元々あまり情報を外部に出さない国なのですが、たまに入ってくる情報がすごいものばかりなんです。』
「例えば、どんな情報があるんですか?」
『以前、飛行機と言う乗り物があると話したことがありますよね?』
「ええ、ドラゴンに出くわすから研究されていないとか。」
『ええ、なんでもその国はドラゴンを倒す兵器を作り上げ、それを搭載した飛行機を作ったとか。』
「え?
そんなの最強じゃないですか。
そんな国と争って大丈夫なんですか?」
『今の所、その兵器が小競り合いに出てきたことはありません。
ですが、そんなものが存在していたら私の国は大変だと思います。
ただ、その国はあまり領土的野心はないらしくて、侵攻などはあまりしないのではないか、と言われています。』
「でも国境ではよく争っているんですよね?」
『それは、どちらかと言えば、私の国に領土的野心があって、こちらからちょっかいを出しているようです。
お姉ちゃんはそんな国の姿勢が納得できなくて、この国に来ました。
私がここに来たのもそれが理由です。
他にも理由はあるのですが。』
と、サラさんが言葉を濁してしまった。
これ以上、この話は避けた方がいいな。
「すみません、答えにくい質問でしたね。
じゃあ、次の質問です。
この本の著者はどんな方なんですか?
この本の最後の言葉がとても印象深くて、俺も同じ考えです。
ぜひこの著者の方とは語り合ってみたいくらいです。」
と言うと、今度はサラさんの顔がとても嬉しそうになった。
『それは、お姉ちゃんが書いた本です。』
え?
嘘だー。




