マナのお勉強【入門】
サラさんが仕事に行くのを見送った後、俺もルッツもすぐに食事を終えたので、 さっさと食器洗いを済ませた。
どこに何を置いたらいいか分からないかと思ったが、サラさんの家のキッチンはきちんと整理ができていたので特に迷うことなく片付けられた。
こういう所に性格って出るよな。
サラさんはまじめな感じだが、几帳面というほどではなく、絶妙なバランスで整っている。
俺は大雑把で適当だ。
基本的に自分の好きなことにしか情熱を注がない。
それをあんまり悪びれてもいない。
うん、あんまり良くない人間性だな。
サラさんを見習ってもう少し真面目に生きよう。
◇
食事と皿洗いの後、シャワーを浴びた。
それほど激しく汗をかいたわけではなかったが、やっぱり運動後のシャワーはすっきりする。
「じゃあルッツ、俺はちょっと勉強するから、適当に昼寝でもしててくれ。
夕方にもう1回遊んでやるから。」
と言うと、ルッツは大人しくソファのそばで丸まって寝始めた。
物分かりがよくてかわいいやつだ。
遊べるときはできるだけ遊んでやろう。
「さて、そろそろマナの勉強をするか。」
と、サラさんいわく【マナ入門書】を手に取った。
昨日の夜にざっと見てみたので、大まかにどんな感じなのかは分かっている。
今日はちゃんと細かく見ていくつもりだ。
最初に目次があった。
第1章 マナの概要
第2章 マナの使われる所
第3章 マナの働き
第4章 マナを使ってできること
第5章 マナを使ってできないこと
第6章 マナの制御
第7章 今後学んでいくために
という章構成だった。
入門書だけあってそれほど理屈っぽい項目はなさそうだ。
しいて言えばマナの制御の所くらいかな。
サラさんも概要の説明が主と言っていたし。
とりあえず、順番に読んでいくか。
◇
【第1章 マナの概要】を読み終わった。
大まかにはサラさんに聞いた内容を細かめに書いていただけだった。
マナは全ての人に存在しています、だの
マナを使うことで古代の遺物が動かせます、だの
王族にはマナの制御がうまい人が多い傾向にある、だのだった。
詳細は後述の章を参照、みたいな感じだったので、本当に概要だけだった。
1つ新しく知ったのは、マナは人だけでなく、動物、植物、ひいてはすべてのも のに存在しています、という話だった。
ただ、これはそういう説が有力で、今も研究されていることだそうだが。
ちなみに、やっぱり平仮名が多くてちょっと読みづらい。
なぜに日本語が通じて日本語の書物なのに漢字は少ないのだろう。
よく分からんが、この世界の歴史のどこかで漢字が虐げられた時代でもあったのだろうか。
別に読めるから問題はないんだけどな。
◇
続いて【第2章 マナの使われる所】を読み終わった。
これまでの感じでマナは機械に使われているものが多い、と漠然と感じていた。
実際、この章に例示されていたのも機械が多かった。
銃とかもその一種と言える。
だが、完全に機械に限った話というわけでもないらしい。
例えば、遺跡の罠なんかにもマナが使われていることが多く、そういった罠は発動するまで気づかないので、危険だ、と思った時にはもう遅い、ということが多いそうだ。
やっかいだな。
この罠などの例があるから、1章に書かれていた全てのものにマナがある、という説が有力なのだそうだ。
◇
【第3章 マナの働き】を読み終わった。
この章で書かれていたのはマナは起動因子であり、マナを利用した装置などは使用者のマナに反応して初めて、その動作が開始される、ということだった。
サラさんが言っていた通りだな。
だが、例外もある、と書かれていた。
例外の具体例は書かれていなかった。
基本的にはマナを使用した装置は古代遺跡から発掘されたものがほとんどで、マナの働きには解明されていない点も多いようだ。
ただ、【ある小国】ではマナを利用した機械を自作できる、という噂があると書かれていた。
なぜかその国の名前は書かれていなかったし、噂があるという表記だったので、これはあんまり信用できない情報な気がする。
こんなの【この世界のどこかには財宝が眠っている】レベルの情報にしか見えない。
これ、教科書なのにこんないい加減でいいのかな。
ちょっと引っかかるのは俺が雑貨屋でもらったヨーヨーだ。
あれは古代遺跡の遺物なんだろうか。
そんな貴重なものをただでくれたのだろうか?
それとも、【ある国】とやらで生産されているもの、という可能性はないか?
雑貨屋の店主は色々な国を回っていると言っていた。
あの店主がその【ある国】とやらに行った可能性がないとは言えない。
今度、雑貨屋に行ったらその辺りも聞いてみるか。
俺自身技術者でもあるので、この世界の科学技術レベルには非常に興味がある。
【ある国】の科学技術がものすごく発達しているとしたら、昨日の夜に考えていた、この世界の科学技術レベルの感想は修正しないといけなくなるだろう。
と、気づけばもうすぐ昼になろうかと言う時間だった。
サラさんが昼の食堂は混むと言っていたので、混む前に昼食を済ませとこう。
ちなみにルッツは1日2食だ。
子犬のうちは3食でもいいが、子犬と言ってもルッツはもう結構でかいしな。
「ルッツ、昼飯を食ってくるから、留守番頼むな。」
と声をかけて、食堂に向かった。




