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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第2章 異世界生活2日目
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異世界の科学技術レベルの考察


 サラさんが挙動不審になって出て行ってから、何か悪いことを言ったか考えたが、よく分からなかった。


 ただ、思い当たったのは、あの数学の本、俺は高校数学レベルだからそんなに難しいとは思わなかった。

 それは、例えばテイラー展開だとかの大学で習うような部分は一切記述されていなかったからなのだが、もしかしたらこの世界ではあれは最高峰のものなのかもしれない。


 というのは、よく考えればこの世界ではバイクや銃と言ったものがあるにはあるが、古代遺跡の遺物を元にしていて、あまり自作はできていないようなのだ。

 マナという動力が解明できていなくて、他に動力源がないから、古代の遺物に頼らざるをえないせいなのかと思っていたが、マナがただの起動因子なのであれば、バイクや銃そのものは別の動力で動いているはずだ。


 というか、地球とほとんど同じっぽいこの世界であれば、電気だろうが、原子力だろうが生み出せるはずだ。

 実際、俺のスマホはこの世界でも動くのだから、電気が存在しない世界ではない。

 というか、物質が存在している時点で電気は存在している。

 ・・・と細かい理屈はどうでもいい。

 つまり、そうだとすれば、マナを使用していない形のバイクや銃がもっと量産されていてもおかしくないはずなのだ。

 だが、実際はバイクは国全体で20台程度、銃は武器屋で数百万の値がつくものがある。

 それはつまり、まだこの世界の技術レベルではバイクも銃も作れないということのはずだ。

 だとすれば、数学や物理学といった分野についての進歩がそれほど進んでいないのかもしれない。


 もちろん機械工学や電気工学の進歩は、数学や物理学のレベルと完全に一致はしないが、数学などの基本学問の発展なくして機械工学が進歩するはずもない。

 まあ機械工学などの考え方が未熟でもトライアルアンドエラーの繰り返しで技術が発達することは往々にしてよくあることだ。

 実際に人類はそうやって発展してきた部分もある。


 だが、この世界は、古代遺跡の遺物があるせいで、自分たち独自の試行錯誤、というものを行っていない可能性がある。

 それは、古代の遺物がこの世界の科学技術の進歩の足かせになっている可能性があるということだ。

 おそらく、遺物の分析であったり、使い方の研究ばかりしているのであろう。


 最先端の空力まで考慮したようなデザインのバイクを作るのであれば、流体力学などのかなり高度な知識が必要になるのは言うまでもないが、ただ走るだけのバイクを作るのには、それほど難しい理屈と技術は必要ない。

 エンジンに関する知識は必要だから、そう簡単ではないが、試行錯誤によって作り出すことも可能だろう。

 だが、この世界にはただ走るだけのバイクはない。

 要するにこの世界の科学技術レベルはそのあたり、ということだ。

 同時にこの世界の製造に対する試行錯誤の蓄積もそのレベル、ということだ。

 もちろん、他国でもっと技術が進んでいる可能性はある。

 だが、この国はそれくらい、ということだ。

 もちろんまだまだ発展途上の世界で便利な機械のことなど思いつきもしない。

 というなら、話は別だ。

 中世あたりの地球などはそうだろう。

 中世の人間の誰がバイクやマシンガンを考えただろう。

 しかし、この世界は違う。

 バイクやマシンガンという完成形は目の前にある。

 ただ、それを作ろうとする試行錯誤が足りないだけだ。

 まあ、何がいいたいかと言うと、毎日試行錯誤の繰り返しで魂をすり減らしてきたような日本の技術者から言わせれば、この世界の技術者はまだまだ努力が足りないということだ。


 と、思考が逸れてしまった。

 本当に言いたいことはそんなことじゃなくて、要は都合のいい遺物のせいで人間が甘えてしまって進歩してない現状はどうかと思うが、それは別として、実際問題、あまり技術レベルは高くないと思われるということだ。


 サラさんは研究者ということだから、自分の知識に対しての自負は持っているはずだ。

 俺はそのプライドを叩き折るような発言をしてしまったのかもしれない。

 この世界の技術者の努力は足りないと思うが、サラさんがそうだとは思わない。

 どちらかというと彼女はすごくがんばるタイプだと思うし。


 これは、ちゃんと謝った方がいいよな、と今更ながらに気づいた。

 あと、これからはあまり不用意な発言をしないように注意しないといけないだろう。

 技術のことになると、つい熱くなってしまう癖があるし。


 今から謝りに行っても余計混乱しそうな気がするから明日改めて謝ろう。

 そう決めて、大きなため息をついたのだった。



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