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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第2章 異世界生活2日目
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裏通り2


 サラさんに声をかけてから5分くらい歩いた後、左手にかすかに大通りが見えた時、俺は心底安心した。


 というのは、まっすぐ歩いていてもどんどん自分の進んでいる方向に自信が持てなくなっていたからだ。

 分岐もあるし、道も曲がるし、これはもう迷宮だな。

 ファスタル迷宮。

 大通りが見えた時にその道の右側を見ると、確かに雑貨屋も見えた。

 なので、多分最初に大通りから入った道に戻れたと思う。

 ちょっと目を離しただけなのに、これだけどこにいるか分からなくなるというのはなんともすごいな。

 これは一度全部ぶっ壊して区画整理した方がいいんじゃなかろうか、という過激な発想になる。

 大通りでサラさんが話していた行方不明になった人の話もあながち都市伝説と笑えないな。


『本当に戻れた。

 すごいすごい。

 私一生ユウトさんに着いていきます。』


 とサラさんが喜んでいるのはうれしいのだが、サラさんは少々発言が大げさだと思う。

 あまり誰にでもそういうことは言うもんじゃない、とオヤジ臭く説教してしまいそうになる。

 しないけどな。


「まぁ、本当に戻れるかどうかは分からなかったんですけどね。

 ちょっと考えて進んだらなんとかなりました。

 それにしても、サラさん道に迷ったとき、すごい怯えてましたけど、何かトラウマでもあるんですか?」


『実は、初めてこの街に来た時に大通りのお店を見てたら楽しくなっちゃって、一緒にいる人が止めたのに、構わず一人で裏通りに入って行っちゃったんです。

 それで、気づいたら一緒にいた人とはぐれていて、一人になっちゃって。

 道も分からなくなって。

 怖くなってきた時に優しく声をかけてきてくれた人がいて。

 着いて行ったんですけど、その人、人さらいだったんです。

 私もう少しで売られるところでした。

 ぎりぎりの所で、一緒に来た人に見つけてもらえて、なんとか帰れたんですけど、それ以来裏通りは怖くって。』


 と言っていた。

 だから、都市伝説の話をしているとき、あんなにマジだったのか。

 武器屋に行くのを嫌がったのはそれもあったのかな。

 あそこもちょっとだけど裏通りにあるし。


「そうだったんですか。

 すみません、嫌がってたのに、無理やり裏通りに入らせて。」


『いいんです。

 無事に戻ってこれましたし。

 ユウトさんに着いていけば戻れるって分かりましたし。

 もうユウトさんと一緒の時しか裏通りには入りません。』


 やっぱこの子かわええわあ。

 と思ったが、あんまり信頼されすぎるのもなあ。

 今日だって結構行き当たりばったりがたまたまうまくいっただけだし。

 それにしても昔はサラさんもっとお転婆だったのか。

 はしゃいで一人で裏通りに突っ込んで迷子になるとか、保護者的には大迷惑だろうが、話だけ聞いたらかわいい子供の失敗って感じだ。

 俺が裏通りにときめいていた時呆れられたが、サラさんもあまり変わらないんじゃないだろうか。

 まぁサラさんは子供の時で俺はいい大人かもしれないが。


『そういえば、研究所の依頼の中に裏通りのマッピング作業があったと思いますよ。

 誰もやりたがらないから、けっこういい給料がついてたと思います。

 ユウトさんだったらうまくできるんじゃないですか?』


「そうなんですか。

 それもいいかもですね。

 帰ったら詳しく教えてください。」


 マッピングか。

 割と嫌いじゃないんだよな。

 ゲームでも迷宮とかは端から端まで探索して全マップ制覇しないと気が済まないタイプだったし。

 あの雑貨屋の店主の言葉も気になってるから、どうせ近いうちにまた裏通りには入ると思うし。


『じゃあ、本当に帰りましょう。

 思ったより遅くなっちゃいましたね。』


「そうですね。

 ルッツもずっと待ってるからちょっと遊んでやらないと。」


 と言って、今度こそ帰路についたのだった。




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