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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第2章 異世界生活2日目
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ファスタル観光2


 案内してくれるサラさんに付いてファスタルの大通りを歩く。

 道中、周りの様子を観察してみたが、サラさんに挨拶してくる人や俺に殺気を送ってくる人を除けば、割と普通の街という感じだった。

 ここにいないだけかもしれないが、獣人がいたり、ドワーフがいたり、エルフがいたり、ということもなかった。

 街には馬車や自転車が入り乱れて雑多な感じは受けたが、一応舗装もされているし、日本のアーケード街を歩いているときとそれほどの差は感じなかった。

 露店であやしげなものを売っているのも見たが、それは日本も同じだ。


『着きましたよ。

 ここが服屋さんです。』


「へえ、結構大きな建物なんですね。」


『一応、老若男女問わず服を揃えています、と謳っていますからね。

 1階が女性用、2階が子供用、3階が男性用ですから、3階に行きましょう。』


「サラさんは見なくていいんですか?」


『私は今日はユウトさんの案内だからいいんです。』


 と言ってくれるサラさんはいい人だ。

 この世界の女性はどうか分からないけど、普通の女の人は用がなくても店を一周しないと気が済まないはずだ。

 少なくとも俺が一緒に買い物に行ったことのある女性はみんなそうだった。

 ほとんど母親だけど。

 うるさい、彼女いない歴=年齢ではない。


 三階にはエレベーターで上がった。


「これもマナを使っているんですか?」


 とサラさんに聞いたのだが、


『どうでしょう。こういうものにはマナは必要ないと思いますから

 使っていないんではないでしょうか。』


 とのことだった。

 確かにエレベーターはカウンターウェイトを付けているだろうから、大した動力がなくても動かせるが、【こういうもの】がどういうものなのかは分からなかった。

 マナのことについては教えてもらえることになっているから、その時に色々聞いてみよう。



 3階に着いて、色々服を物色した。

 品ぞろえはそれなりといった所だった。

 流石に化学繊維はないっぽいが綿とか麻とか以外に絹製のものもあるみたいだし、高級品ぽいコーナーには飛龍の皮製というのもあった。

 イメージ的にはワニ革製に近い。

 あと、ちょっと期待していたが鎧の類もなかった。


 今日は私服を買いに来ただけだったので、無難なシャツとジーンズを何点かとスエットみたいなのの上下セットを買った。

 ちなみに全部で1万円くらいだった。

 結構安いと思うけど、服なんかいつもネットで適当に買っていたから店頭価格がどうか、というのは俺にはあまりよく分からなかった。


 折角だったので、その場ですぐに着替えさせてもらった所、サラさんが


『よくお似合いですよ。かっこいいです。』


 と言ってくれたのは、お世辞だろうけどすごく嬉しかった。


『次は食べ物屋さんですね。

 何か食べたいものでもあるんですか?』


「いえ、昨日の夜はサラさんに作ってもらいましたけど、

 一応お金も手に入ったので、自分の食べる分くらいは買っておかないと。」


『え?そんなのいいですよ。

 でもそれならあの建物の中には食堂がありますから、

 普段はそこで食べればいいと思いますよ。

 私もいつもはそうしてます。

 昨日はお休みだったので。』


「そうなんですか?

 でもとりあえずファスタルの食文化が知りたいので、

 一度食料品店は見てみたいです。」


『分かりました。

 ではすぐそこのあの店ですよ。』


 と言って、巨大な八百屋さんみたいな所に連れて行ってくれた。

 八百屋、というか卸売市場みたいな。


 中ではめっちゃ威勢のいいおっちゃん達が競りっぽいことをしていた。

 何を言っているかは分からなかったが、競りなんて日本でも何を言っているか分からない。


 食材は肉、野菜、魚、果物、穀物と一通り揃っていた。

 お惣菜みたいなコーナーには色々な料理があって、食事には困らなそうな感じだったので、安心した。

 やっぱり生きる上で食は重要ですよね。


 と、そこでアイスクリームのようなものの露店を発見した。

 折角だからと、2つ買い、1つをサラさんに渡した。


「大したものじゃないけど、今日案内してくれているお礼です、どうぞ。」


『え、いいんですか?ありがとうございます。

 これ好きなんです。』


 と言って、喜んで食べてくれた。

 その笑顔に今日も癒されます、とは言わなかったが、サラさんを見てると幸せな気持ちになれるな。


「じゃあ、とりあえず今日は食材は買いませんから、武器屋を

 お願いします。」


 と言うと、サラさんは露骨に嫌そうな顔をして、


『あ、やっぱり行くんですね。

 あんまり行きたくないんだけどなぁ。』


 と言いながらも案内してくれた。

 武器屋は服屋や食べ物屋と違って、大通りから少し逸れた裏通りにあった。


『ここです。

 お店の人のガラが悪いので、気を付けてくださいね。』


 と、謎の忠告をもらった。

 そして、店に入るなり、めっちゃでかいおっさんがサラさんに近寄りながら、めっちゃでかい声で


『おお、めずらしいな。サラちゃんが来るなんて。

 なんだ?改心して、あの変なマナを使う武器からうちの武器に乗り換える気になったか?がっはっはっは。』


 と言いながらサラさんの頭をガシガシ撫でてきた。


『やめてください。違いますよ。

 今日はこの人が来たいと言うから案内してきただけです。

 もう、離してください。』


 と、本気で嫌そうな顔をしながらサラさんは俺を紹介してきた。


「こんにちは。サラさんに案内してもらったユウトと言います。

 今日は護身用の武器を見に来ました。

 少し店内の武器を見させて頂きます。」


 と挨拶した。


『おう、礼儀正しい小僧じゃねえか。

 挨拶ができるってのは大切なことだ。

 よし、好きに見ていきな。』


 と言って、満足したのかカウンターの方に戻っていった。

 サラさんはちょっとおびえた感じで俺の後ろに隠れていた。

 なるほど、だから、武器屋に来るの嫌がったのか。

 俺の中ではかなりテンプレな武器屋のオヤジって感じがして、しっくりきたが、サラさんはかなり苦手のようだ。


「サラさん、あの店主さんと随分仲がいいみたいですけどお知り合いなんですか?」


 と聞くと、心底嫌そうな顔で


『冗談はやめてください。仲良くないです。

 私の姉がこのおじさんと飲み仲間らしくて姿を見かけたらやたら絡まれるだけです。

 いい迷惑です。』


「そうなんですか?

 サラさんお姉さんがいるんですね。

 そのうちご挨拶したいですね。サラさんにはすごいお世話になってますし。」


『どうせ呼ばなくてもそのうち現れますよ。

 おかしな所がある人だから迷惑をおかけするかもしれませんが、悪気はないので許してあげてください。』


 と、会ってもない人のフォローをされた。

 昨日の上司の人への態度でもそうだったが、意外とサラさんは他人に厳しい。

 俺にはすごい優しいけど、もしかしてもう少し慣れたら俺もこんな風に扱われるんだろうか?

 それにしてもサラさんのお姉さんは呑兵衛なのか。

 ちょっと意外だ。

 まぁ、会えばわかるだろう、と気を取り直して武器を見ることにした。


 そもそも包丁とかエアガンのような武器とも呼べないようなものしか見たことがないから、俺には武器の良しあしなんて分からない。

 それでも、ちょっと見ただけでも出来はいいんじゃないかと思った。

 この世界の文明レベルがイマイチ掴みづらいのでどんな武器があるか分からなかったが、刃物が半分、銃器が4割、その他が1割って感じだった。

 刃物には包丁のような生活品も混じっているようだ。

 銃は火縄銃のようなものから、マシンガンぽいものまであった。

 ぽい、というのは俺は正確にはマシンガンがどんなものか分からないためだ。


「サラさん、あの武器はマナを使うんですか?」


 とマシンガンを指して聞くと、


『そうですね。銃は高度なものはマナを使うらしいですよ。

 ほとんどが古代遺跡から出てきたもののようですし。

 値段もすごく高いと思います。』


 と言われた。

 確かに値札を見ると数百万とかしている。

 これは流石にぼったくりじゃなかろうか?

 と思ったが、あの店主にぼったくりとか言ったらぶっ飛ばされそうなので黙っておく。

 刃物の方を見ると、それこそ果物ナイフから刀みたいなものまである。

 日本人としては刀に憧れはあるが、うまく使いこなせる自信はないし、普段から持ち歩くのもちょっとな、という気がする。


 悩んだ結果、とりあえず、しばらくは危険なところに行く予定もないので、武器はまたの機会に、ということにした。


「すみません、また来ます。」


 と店を出るときに声をかけると、店主は


『おう、いつでも来いや。』


 と言ってくれた。やっぱり悪い人ではないと思う。


「さて、見たかった所は一通り見ましたけど、どうしましょう。

 とりあえず、お昼ごはんにしますか?」


 武器屋を出て、ちょっとほっとした表情のサラさんに声をかけた。


『そうですね。そういえばそんな時間ですね。

 ユウトさんは何か食べたいものありますか?』


「う~ん。何があるか分からないですからねえ。

 サラさんのお勧めが食べたいです。」


『そうですか。

 ではこの近くにおいしいお魚のお店がありますので、それでどうですか?』


「いいですよ。そこにしましょう。」


 と言って、サラさんお勧めのお店に行った。





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