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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第1章 異世界生活1日目
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脳内設定

 急いで戻ってきたらしいサラさんにさっきの光について聞かれたが、


「さぁ、何でしょう?」


 と曖昧な返事しか返せない俺。

 でも、それではサラさんは納得してくれなさそうだったので、


「いや、犬に名前を付けたんですよ。

 そしたら急に光りだして。

 あ、名前はルッツにしました。

 似合ってるでしょう。

 な、ルッツ?」


 と言うと、


『わん』


 とルッツは元気に応えてくれ、


『名前を付けた?』


 とサラさんは難しい顔をしてしまった。

 数秒黙った後、


『幸い、誰も今の光は見ていないと思います。

 このことは私たちだけの秘密にして下さい。いいですか?』


 と言われてしまった。


「はい。何かまずいことをしてしまったでしょうか?」


 と聞くと、


『確証はありませんが、高位の獣との契約時に似たような現象が起きることがあるようです。

 でも普通は契約するには過酷な修行とその聖獣を真に服従させることが必要らしいのですが。

 今がその状態とも思えませんし、少し様子を見ましょう。

 あまり人に言って、騒がれるのも煩わしいでしょうし。』


 と言われた。

 何それ、めっちゃかっこいい。

 俺の中二が疼きだした。

 ルッツが高位の獣とやらかどうかは分からないが異世界小説ではよくある話だ。

 俺自身にはチートはないが、ルッツが強いならそれでいいだろう。

 面白くなってきたぞ。


「と、それはまぁいいとして。

 上司には会えたんですか?」


『よくはありませんが、まぁいいでしょう。

 はい、会えましたよ。ちゃんと渡してきました。

 今頃分析室にこもって実験をしていると思いますよ。

 それでこれが約束の報酬だそうです。』


 と、分厚い封筒を渡された。

 サラさんがちょっと投げやりになっている気がする。

 中身はお札が1,2,・・・20枚入っていた。

 うわっ、カ○リーメイト1個に20万円も?

 じゃなかった。そもそもお金の価値が分からないんだった。

 なので、


「これはどの程度の金額でしょうか?

 ちょっとお金についての記憶が・・・。」


 とわざとらしく演技しながら聞いてみると、サラさんは演技を気にした風もなく


『それで20万円ですね。

 安い宿なら40泊くらいはできるかもしれませんね。』


 と言われた。

 うわぁ、やっぱり20万だったよ。

 そして、金銭感覚は大体現代と同じくらいで問題なさそうだ。

 安いビジネスホテルって大体5000円くらいだし。


「いいんですか。こんなに頂いて?」


『いいんですよ。あの人はお金が有り余ってるんだから

 どんどん人にあげたほうがいいんです。』


 なんて言っていた。

 なぜかサラさんの上司に対する態度がひどい。

 ああ、サラさん苦労してるんだな、と思ってしまった。

 さっきの話からすると、サラさんいわゆる王族のはずなのに。

 って、このお金があればサラさんの家に泊めてもらう必要もない・・・

 とか札束を握りながら考えていると、


 なぜか笑顔のサラさんと目が合った。目は笑ってなかった。

 いや、俺は何も余計なことは考えていません、と目で訴えておいた。


 こんな綺麗な人にこんなに真っ直ぐ好意を向けられるのは初めてだから、分からないフリをしていたが、鈍感主人公、みたいなのも勘弁なので、サラさんは俺に惚れている、と勝手に脳内設定しておこう。

 単なる勘違いの自意識過剰かもしれないが、そう思っていると、とても毎日幸せに生きていける気がする。


『じゃあ、夕食を作りますので、その間にシャワーでも浴びててください。

 シャワーはそこの扉です。

 タオルは置いてあるのを好きに使ってください。』


「あ、ありがとうございます。助かります。」


 本当に異世界ファンタジーっぽくないなと思ったが、とてもありがたかった。

 なにせ、仕事中に急にトリップさせられた後、ずっと動いていたから汗まみれなんだよな。

 サラさんの無警戒さは心配になるレベルだが、今更なのでお言葉に甘えるとしよう。





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