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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第1章 異世界生活1日目
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都合のいい勘違いと世界の解説

『すみません、到着早々お待たせしてしまって。』


 そう言いながらサラさんは戻ってきた。


「大丈夫ですよ。お言葉に甘えてくつろがせていただきました。」


 と言うと、サラさんはほっとしたような表情をしていた。

 本当にいい人だなぁ。


『ちょっと報告に行かないといけないことがありまして。

 これからご説明する内容にも関連はするのですが。

 その前にユウトさんにお聞きしたいことがあります。』


 サラさんはちょっと緊張した面持ちで言ってきた。


「はい。何でしょう?」


『ユウトさんはもしかして記憶を無くされたりはしていませんか?

 気づいたら何も覚えていなくてあの辺境にいた、とか。』



 正直、めちゃくちゃびびった。

 あまりの同様に心臓が口から飛び出るかと思った。

 多分、目は泳いでいると思う。

 多少怪しまれているとは思っていたが、そういう風に思われていたとは。

 ある意味正解に近いじゃないか。

 だが、これは考えようによっては非常に都合がいい勘違いだ。

 記憶がないことにしてしまえば、色々聞くことが不自然ではなくなる。

 サラさんを信用して全てを話すこともできるが、あまり意味がないような気もする。

 折角そんな都合のいい勘違いをしてくれているのだから、いつか本当のことを話すことにして今は勘違いに乗っかることにする。


「記憶をなくしている、かどうかは分かりませんが、それに近い状態であることは確かです。

 自分が何者であるかは分かっているつもりですが、なぜあの場所にいたのかは全く分かりません。

 それと、この世界についての知識が全くと言っていいほどない、と思います。」


 ぎりぎり嘘は言っていないと思う。

 それを聞いたサラさんは真剣な表情のままで、


『やっぱりそうでしたか。

 様子がおかしいとは思っていました。

 それでは、これからまずこの世界についてご説明します。

 長くなりますが、よろしいでしょうか。』


「はい。よろしくお願いします。」


 そこから、サラさんによる説明が始まった。


◇


『・・・というのが大まかな歴史と現在となります。

 どうでしょう。聞きたいことなどありますか?』


 と、一通りこの世界の成り立ちについて説明を受けた。

 全て一気に覚えるのは無理だが大まかにはこんな感じのようだ。

 ・この世界には、はるか昔に文明が栄えた時代があった。

 ・だが、大きな戦争か何かでその文明はほとんど滅びてしまった。

 ・今はその時代から何百年も経っているが未だにその文明には追いついていない。

 ・今は古代文明の遺跡から見つかったものを分析して、使えるものは使っている。

 ・バイクも古代文明の遺物の一つ。

 ・現在の文明はおよそ300年ほど前にこのファスタルから発祥したらしいが発祥当時の記録はあまり残されていない。

 ・文明ができてからいくつかの大きな革命があり、その革命を起こした人たちが現在この国を治めるいくつかの小国の領主となっている。

 ・小国間にはある程度のつながりがある国もあるが、ほとんど孤立していて情報が分からない国もある。

 ・サラさんもそのうちの一つの家の血を継いでいる。

 ・だからバイクの使用も許されているし、それなりの身分である。

 ・現在この国には戦争などはないが、この国以外の状況はよくわかっていない。

 ・この国の外にはいくつかの大陸があるが、その情報は一部の人間を除いてほとんどの人には秘匿されている。


「それでは、いくつかお聞きします。

 まず、バイクは貴重なもの、という認識でいいでしょうか?

 また、その存在自体は一般的に知られているものでしょうか?」


『はい、現在稼働するのは、この国全体でも20台ほど、と言われていますが、存在自体はよく知られています。

 子供のおとぎ話などにもよく出てきます。』


「バイクを使えない人の交通手段はなんでしょう?」


『馬か自転車か徒歩ですね。

 あとは、一応飛行機という空を飛ぶ乗り物がありますが、ドラゴンなどと遭遇したら一巻の終わりですので、あまり研究されていません。』


 飛行機があることには驚いたが、それ以上にドラゴンの存在にときめいてしまった。

 やっぱりいるのか、ドラゴン。見てみたいな。


「ドラゴンというのはそんなに頻繁に出くわすものなのですか?」


『そうでもありませんが、種族によるみたいです。

 下級の飛龍なんかは場所によってはよく見かけるそうです。

 飛龍を手なずけて交通手段にしている人もいるようですし。』


 そうなのか。

 自転車があることを考えてもそれなりの技術はあるみたいだけど古代文明を発掘して使っているせいか、進歩に偏りがあるな。


「古代文明の遺跡というのはたくさんあるのですか?」


『そうですね。遺跡自体はかなりの数があると思います。

 正確な数は分かりませんが、ファスタル周辺だけでも10以上はあります。』


「その遺跡の探索というのは危険なのですか?」


『危険です。罠があることもあるようですし、罠がなくても、なにぶん古い建築物なので、探索中に崩落することがよくあるようです。

 また、盗賊の類が根城にしていることがよくあって、襲われることがあるそうです。』


 なるほど、俺の生計を立てる選択肢としてトレジャーハンターとかありそうだな、と思ったのだ。

 実際、武力が整えば何とかなる気がする。

 と、サラさんが心配そうな顔でこちらを見ている。


『遺跡探索をされるおつもりですか?』


「そうですね。当面の生活のために仕事をしないといけないと思ってます。

 それには遺跡探索もありかな、と思います。」


『記憶をなくした人が行くのは危険すぎます。

 どんなところか全くご存じないでしょう。

 仕事なんか街にいくらでもあります。』


 とすごい剣幕で言われてしまった。


『あ、すみません。

 ですが、遺跡探索は本当に危険だと聞きますので。』


 と、サラさんは沈んだ顔になってしまった。

 本当にいい人だなぁ、と思った。

 こんなに心配してくれる人は今まで親くらいだったと思う。


「大丈夫ですよ。当面はそんなに危険なことはしません。

 ですが、さっきも言いましたけど手持ちのお金がないので、それなりに稼げる仕事を探さないと生活ができませんし、家もありませんし。」


 と言うと、ちょっと考えた後に、少しためらいながら、


『それでしたら、しばらくうちに住んで頂いて構いません。』


 と言われた。

 紅茶を吹き出してしまった。



ちょっと後の内容と矛盾する所を修正しました。

※遺跡に罠がない → ある

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