カエルとコオロギ
なんだこれ
歌の下手なカエルがいた。
「ゲロゲロ、ゲロゲロ」
やはり自分は歌うのが下手だと思い、彼は河原へ上がることにする。川には他のカエルがいて、歌の練習がしにくいからだ。
「ゲロゲロ、ゲロゲロ」
やはり駄目だ。自分は歌うのが下手だ。カエルはしばらくその場で動かずに、どうすれば上手く歌えるのかと思考を巡らせた。
しばらくして、太陽が真上から少し下ったころ、カエルは少し遠くからきれいな歌声が聞こえることに気づいた。
「キリキリキリ、キリキリキリ」
そこには一匹のコオロギがいた。
「やあ、コオロギさん」
「うわ!? カエル!?」
「ああ、待ってよコオロギさん。僕は君のきれいな歌声を聞いていたいだけさ。僕は上手く歌えるようになりたいんだけど、どうやったら上手くなるのかわからなくて」
少し警戒するようすのコオロギだったが、カエルの落ち込みようから少し信用してこう言った。
「それなら、ボクと一緒に歌うかい? そんな気分で歌うよりも、誰かと楽しく歌った方が、上手くなれるに決まってるさ」
「ああ、コオロギさん。全くその通りだ。僕と一緒に歌ってくれるのかい?」
「いいとも。でもそこからは近づかないでね。この距離でも一緒に歌えるんだから、近づく必要はないもの」
「わかってるよ。じゃあよろしくね」
「うん、こちらこそ」
そうしてカエルとコオロギは一緒に歌い続けた。
太陽が真上から少し降りたところから、またさらに降りて顔色を変えたころ、カエルとコオロギは共に仲良くなり、カエルも自信がつき上手く歌えるようになっていた。
「これでいいだろう。ボクはもう帰らなくちゃいけない」
「ああ、待ってくれ。最後にもう一度だけ、君のきれいな歌声を僕に聞かせておくれ」
カエルがコオロギに頼んだ。
「もしまた自信がなくなったら、その君の歌を思い出して自信を取り戻せるように。僕の近くで歌ってくれないか?」
「うん、最後にね、いいよ」
コオロギが了承し、カエルの方へ向かって一跳びした。
その瞬間、コオロギはカエルの飛び出してきたカエルの舌に捕らわれて、口の中へと引きずり込まれた。
「ああ、歌い続けてお腹がすいちゃってたんだ。最後までありがとうね、コオロギさん」
カエルは満足して川へ戻っていった。
やっぱり・・・・・・なんだこれ