21光年/国策
【日本連邦】 日本国 大阪 仮首相官邸
ああ、悪い冗談か何かだろうか。
昨日の記者会見でも歴史が動くような発言をしたが、これからが大変だ。
戦争で忘れがちだっだが、TPPに参加するか否か、また、太平洋上に散らばる日本連邦加盟国の安全保障の為に上がる国防費という名の軍事費の増加である。
第二次世界大戦以前の帝国海軍レベルまで引き上げるといずれ経済的に破綻を迎える上に、今までの自衛隊の装備レベルが実は今の日本経済で維持できるレベルで、一番賢い状態だった。
アメリカや旧中国のように軍事費に数兆円にも上るお金をかけていない。
つまり、その分の余力を経済に割り振ることで強みを持てたのだが、連邦化することで軍事費が一気に増大する。
そんな資金をどうやって、どこから稼ぐのか。
今であれば、政治カードになる宇宙技術、歴史などが当てはまるのだろう。
これを使うか・・・
「否、駄目だ。今は戦争中なんだ!」
執務室に私の怒声だけが虚しく響く。
他の官僚は戦争による人手不足で良く音が聞こえる。
ハハハ、と自分の行動を笑った後、大きくため息をつく。
改めて、今までの時系列を踏まえたうえで考え直してみよう。
日中開戦から株式は日経は暴落、商品先物の金・石油は急騰。
結果、リスクヘッジをしていた一部の機関投資家はぼろもうけ。
先物市場には価格安定の機能が実はあったりするので、戦争時のような資源が枯渇しそうか、足りなくなりそうな場合には儲けることが出来る。
アメリカの航空機や軍需企業は株価上昇、ロシアは石油を中国と日本に高値で売り付け、EUはインドなどに航空機を売りつけ、ベトナム・ミャンマーはロシアから兵器を購入、世界経済は日中にとって戦費によるダメージを与えた。
そのままで終わるかと思えば、ロシアが旧ウクライナ地区へのパイプラインによるガスの供給をストップ、米国同盟国であるサウジアラビアなどの石油の原産国・ドイツ・アメリカ核攻撃宣言を行い、本当に核兵器による攻撃を敢行、世界は混迷へと陥った。
標的となったドイツを逸れた核弾頭はフランスを壊滅させ、スペインも主要都市マドリード・バルセロナが壊滅。
イギリスにも影響が及び、ロンドンシティにも影響が出た為、EUの経済も暴落。
欧州、日本・中国が破滅的状況の中、アメリカは無事かと思われていたが、アメリカも西海岸の主要都市はロシアの核攻撃により壊滅、ダウ平均もダメージを受け、大暴落。
世界経済は暴落、中堅国の破綻、各国の国債は金利が大幅に上昇。
既に、ギリシャ・アイルランド・ポルトガル・アルゼンチン・チリがデフォルトし、トルコがぎりぎり耐え忍んでいる状態。
南アフリカ・マレーシア・インドネシアも破綻。
旧中華人民共和国を受け継いだ北中国も破綻。
安南共和国は耐え忍ぶものの、あやしい状態。
我が日本国も破綻までわずかだ。
アメリカが国債の債務不履行を起こせば終わる。
流石に、勾玉を使って金を生成するのは経済が駄目になる。
これを避けるには。
我々も、デフォルトをするか。
今なら、世界中から押し付けられた不良債権を処理できる。
しかも、各国それぞれが独自の政策と生き残りをかけて兵器と言う兵器を総動員している。
各国の負債はうなぎ上りで上昇中の今、出来ることは。
今までの要因を思い返せば、グローバリゼーションという旗印の元、各国の経済は世界経済に組み込まれていった。
ヨーロッパでは、冷戦の終結後、『ラヴ&ピース』という言葉を並べて、人種差別を表向きは否定した。
例として、ドイツでは、トルコ人などを受け入れたということだろうか。
『人類皆平等』という標語を掲げた理想としては良い物だったが、実際は宗教と思想の違いという壁に阻まれた。
キリスト教圏で、イスラム教が広がり始めるとその国を蝕んでいく。
結果として、イスラム国のような組織が生まれる。
宗教の張り合いはグローバリゼーションにより世界に広く伝わり、キリスト教文明圏とイスラム教文明圏の戦争という形でテロリズムになっている。
流石に江戸時代のように鎖国をしよう、などと提案はできない以上、デフォルトが妥当か。
中堅国が潰れれば、EUが先か、我々が先か。
そのぐらいだろう。
さて。TPPは国を売るということ。
アメリカが譲歩すれば、もともと断る気など全くないのだ、我々は。
戦争をしたいわけではない、だからと言ってこの日本という国を売る気もない。
奴隷化などしたくない。
今は牙を抜かれているからこそ、信濃によりもたらされたロボットの制御技術は必要なのだ。
タイミングよく戦争になったからこそ、発言力を増すために軍事化したが、これからの縮小が一番大変だ。
今、この時にいざという時はやる国だと見せておかないと軍縮化できない。
ここで無人機技術やロボット技術の開発をしておかねば。
「ああ、なるほど。信濃、か」
窓の外を見ると灰色の厚い雲で覆われた空から一筋の光が差し込んだように感じた。