16光年/日本の躍進
2014/10/9 12:00 東京都千代田区 皇居
世間が日本における戦闘の終結と福岡条約の成立に安堵し、皆既月食の話でもちきりだったその日。
やむことなきお方が住まわれる場所、もとは江戸城であったその場所にて、とある事案が決定された。
「陛下、お忙しい中、申し訳ありません。しかし、本当によろしいのですか」
土御門が問いかける。
「これでいいのです。こうすることで戦争を避けれるのであれば、私はいくらでも働きますよ。
それに、我が国はあくまでも平和を希求しています。しかしそれは、今の世界情勢ではとても難しいことです。かつて、我が日本国は軍隊の膨張と資源の獲得が上手くいかずに最終的にアメリカに戦争を仕掛け、負けました。
当時から我が国は、資源の確保が上手くいかずに苦労していました。
それはひとえに政治の制度や、民衆も含めて冷静な態度が取れなかったこと、まだ成熟していなかったこともあると思います。ですが今は違います。
私が国民を代表して言いましょう、再び我が国が、戦争を引き起こすことはないでしょう」
「わかりました。そこまで言われるのであれば、私も政治生命をかけて、動きます。それでは、失礼しました」
土御門は、皇居から出て安堵の息を漏らすが、その顔は不安げな顔をしている。
かつて、日露戦争の功労者の 秋山 真之 海軍中将 の気が狂った理由の一つとして、日本国内から石油が出ないことだとされている。これからの近代戦争に必要な石油がないために帝国軍は壊滅すると予測したそうだ。
そしてその予測は、太平洋戦争の敗戦により、当たることとなってしまう。
もともと、日本が戦争したのは石油が国内に入らなくなったからだ。
アメリカが満洲の権益に絡んできたことにより、より絶望的な状況へと変わる。
満洲の石油で日本国内が安定すれば、日本がここまで暴走することもなかったのだが、当時は帝国主義が隆盛していた時代。
強力な軍事力がなければ、国自体がなくなり、奴隷扱いを受けるか地球上から日本人がいなくなっていた。
しかたないといえば、仕方ない。
しかし、だ。
陛下は国民の為に再び矢面に立とうというのか。
この案件は非常に難しい。
土御門は首相官邸に急ぐようにドライバーに指示した。
「君、首相官邸までなるべく早めにつくように頼む。さて、アメリカはどう出てくる・・・」
車の外を見ると空から誰かがこぼした涙のように雨がしとしとと降っていた。
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ところ変わって横須賀港に待機中の信濃艦橋。
木枯らしが吹いている中、日本国防軍に技術の継承が行われている。
とはいっても、すぐに扱いこなせる技術でもないので、ほとんど研究に回っている。白衣を着た研究者らしき人や、技術者が艦内を見て回っている。
東京上空での核ミサイル騒動以降、信濃の指揮を執っていたイザナミさんは、天皇陛下が謁見されてて、なにか重要なお話をしているらしい。
え、私?
なんでかわからないけど、今は信濃の「艦長」代理やってます。
普通、そういうのは自衛隊さんの管轄でしょ!と思うんだけど・・・・・
まほちゃん曰く、イザナミさんが日本に技術の継承を許可する代わりに私の身柄をイザナミさんに引き渡したらしい。
ちょっとまって、当事者にはなんで相談しないの?なんて思うけど、これも国家機密らしい。
私の家族には政府から説明があったらしい。どうして納得した。
まったく、意味が分からないよ。
「ほう、メタンハイレードの技術は・・・掘削技術以外にこのような問題があるのだな。それになになに・・・・・なるほど、これならコストも安くいけるかも知れない」
「ふむ、IPS細胞はこのナノマシンの技術と組み合わせるとこのような効用がでるのか」
【浄玻璃之鏡】と呼ばれる端末・・・・・もとい大きな丸い鏡のようなディスプレイに情報が現れているらしい。
さっきから鏡をみながら時々画面の映像や図を指をさしてぶつぶつ言っている人たちを見るとなんだかなぁ・・・。
地球世界の日本国に対する技術の継承といいつつ、イザナミさんたちの星、『高天原』では遠い過去の技術のデータや研究論文、設計図などを提供してもらっているだけだ。
これで検証が終わった技術からどんどん実用化していくそうだ。
大企業の社長さんは浮かれているのか喜んでいるみたい。
そりゃ、世界に先駆けてこんな技術を検証以外にたいした苦労もなく扱えたら、株価があがって会社も儲かるからねぇ・・・。ああ、幸樹くんならこういうチャンスがある時点で間違いなく株式を購入してそう。
彼、元気にしているかなぁ。
そういえば、日本政府がこの船を参考に新しい大型『護衛艦』を建造している、とか今朝のニュースで言ってたけど、宇宙開発用の資金までつぎ込んでいるあたり、恐らく『宇宙戦艦』か『宇宙空母』なのかしら。
いや、ちょっと違うような・・・・あれ?
いくら憲法を改正したとはいってもまだ『空母』とか『戦艦』は確か日本じゃ持てないよね。と、言うことは『宇宙護衛艦』かぁ。
他にも、さりげなく『モノポール制御技術が発見された』とか言ってたけど間違いなくこの船にある技術じゃん。
現在、大統一理論によって予想されるクォークとレプトンという複合素粒子の関係の話・・・・
つまり、実はレプトンはクォークが変わったものだ、とか、『クォークがレプトンに変化することでバリオン数が変わり、安定性をなくして量子が変化する』とされている。
このクォークの変化が引き起こす陽子崩壊が関係しているのだとか。
量子の変化による陽子崩壊が発生する現象は、本来、自然界では極稀にしか発生しないとされている。
その『陽子崩壊現象』を人工的に発生させることで動力として使おうとようやく私たち地球人は予想しただけで実証して一般市民が技術を安易に使用するにはまだまだ時間がかかるのはよくわかる。
『陽子崩壊現象』を人工的に発生させる手段としてモノポールの位相欠陥を触媒として利用、故意に陽子崩壊させる。
確か、触媒として使えることを予想した人の名から、「ルバコフ効果」とかいったんだよね。
内容はこんな感じだったはず。
日本でモノポールの探索をしていたスーパーカミオカンデという研究施設がもったいないような気がします。
この船の動力装置はタービン4基じゃなくてモノポールエンジン4基だって。
どこでこんなオーバーテクノロジーの物を積んだんだっ!って思うけど、イザナミさん自体、どこの人やねんって思うし。
未来から来たわけでもないそうだし、DNA検査をしたら地球上にはない4本の螺旋構造だったらしく宇宙人で確定っぽい。
そういえば、イザナミさんの話から新しくわかったことがいくつかある。
イザナミさんは【高天原星】からきたそうだけど、地球は日本神話で言うところの【海原】つまり、スサノオの管轄の星だそうだ。
日本神話の天孫降臨であらわされたところはすべて日本らしい。
残りの【夜の国】は地球に移民してきた一族とは別の一族が、地球から見てとも座の方向、42光年先にあるHD69830Dと言う星、通称【グリーゼ581d】という惑星に移民したらしい。
テラフォーミングをしながら、そのグリーゼ581dという惑星の周囲で公転運動をさせた人工衛星でしばらく様子を見ているようだ。
とんでもない技術の所持文明ばかりだけど、地球は大丈夫?なんて思っちゃう。
スイングバイを利用して、やっとこさ冥王星まで辿りつきそうなアメリカの探査機ニューホライズンとか、ボイジャー飛ばして、スペースシャトルを打ち上げるのにも苦労している文明レベルじゃ比べものにならない。
探査機のハヤブサのイオンエンジン程度では補助にすらならないと思う。
そういえば、他国の人はいないみたい。
まほちゃん曰く、米国には高天原星の技術の供与をわずかに行ったそうだ。
何故、アメリカのみに高度な技術の提供したのか、それはこれから先のことと、日本の存続に関係があるらしいのだけれど、それは天皇陛下にしか話されてしないらしい。
他国になるべく情報が漏れないようにするのに非常に苦労したんだそうだ。でも、信濃の光学迷彩偽装や個人識別技術などの創造のつく技術などから、予想はつく。
秘密裡に入船しようとした人間やロボットなどをとんでもない技術ではじいているから、調べられないと思うけどね。
とんでもない技術として、【次元航行装置】というものがあるそう。
イザナミさんたち、高天原星人の技術に時間航行装置の概念は無いが、過去や未来を行き来することが出来る。
これを制御することで恒星間の移動手段を確保したらしい。
私たちの3次元空間と別の幾星霜もある3次元空間の隙間に満たされている次元空間にワープ空間を生成。
そこに船を移動させて、次元航行装置で元の3次元空間の位相を記録させておいて、元の3次元空間の任意の空間位置につなぎなおすらしい。
別の5次元~11次元はまだ私たちには教えることはできないそうだ。
教えてくれてもいいのに。イザナミさんのケチ。
あと、地球人の問題として、『海洋生物が食べれなくなる』ことを警告された。
要するに、あと数年でおさかなが食べれなくなるらしい。
なんでも、海の汚染がひどいそうだ。「プラスチックごみを捨てる愚か者がっ!」とかイザナミさんが言ってたけど、ちょっと意味が分からないなぁ。
目には見えないレベルのプラスチックの破片やダイオキシンなどの科学物質の蓄積が原因で、これ以上食べ続けるとDNAにも影響が出るそうだ。
前に東京帝国大学の教授がそんな警告していたらしいけど、今回のイザナミさんの警告で政府も重い腰を上げて、陸上で魚貝類の養殖ができるように施設の建造を始めたそうだ。
最後に、イザナミさんは大日本帝国時代にも日本にきていたらしい。
偶然乗っていた大和型戦艦改装空母「信濃」が沈んだときに、勾玉に込められたオーバーテクノロジーを駆使して空母の見た目をほぼ保存。
そして、空母を米国潜水艦に気づかせ、故意に信濃を沈ませて、勾玉が作成したロボットに信濃の魔改造作業を託して再建が完了するまで必要最低限の生命活動のみできる空間を作った後、冷凍睡眠状態にはいったらしい。
改めて思うけど、技術の次元が違う気がする。
そういえば、ニュースを見ているとこんなことも言ってた。
北海道に侵攻してきたロシアが急におとなしくなったのも信濃のせいだとか。
最初は見かけどおりの昔の空母だと思っていたらしいけど、中国が公開した戦闘映像を見た途端引っ込んだとか。
中国は自国も調査していた謎の船、つまり『信濃』は日本が極秘裏に隠しており、中国を攻撃する為の「空母」だったとして非難しているが、先に宣戦布告したのは中国だ!と日本政府も珍しく反論している。
朝鮮半島では、大韓民国がついに朝鮮半島から昨日消滅。済州島がわずかに韓国領として残るのみとなり、小さな島国家となった。
竹島は日本国防軍が奪還。
韓国海軍は日本が旗艦の『世宗大王』を含む主力を抑えてしまった為、北朝鮮の第二次世界大戦レベルの駆逐艦でも韓国海軍フリーゲート艦を圧倒してしまったようだ。
韓国陸軍も意外と踏ん張ったようだけど、戦車や航空機の整備不足や共食い整備が原因なのか、最初は上手く迎撃できていたが、数が足りず防衛ラインを突破され、そこからあっけなくやられてしまったようだ。
在韓米国軍は、在韓米国人や欧州人、日本人を保護するとオスプレイなどの航空機で一気に釜山まで輸送後、防衛しながら韓国内から撤退。
米軍はあくまでも韓国軍のサポートとして後衛部隊として米韓同盟を果たした。
米国軍も最近は予算がないからか他国の為に無駄に血を消費したくない。
つまり、自ら防衛する意思がないと結局滅ぶことになるのだ。
まぁ、私はもともと一般市民だから、平和な暮らしができればどうでもいいんだけど、今の立場は明らかにそうじゃないから資料に目を通しておかないとだめっぽい。
あ~あ・・・
パフェ食べたいなぁ・・・・
窓の外を見ると、しとしとと雨が降り始めていた。
【浄玻璃の鏡】
以下、引用。
『浄玻璃鏡とは、
地獄を守護する閻魔が亡者の裁判で、亡者の善悪の見極めに使用する水晶製の鏡である。
この鏡には亡者の生前の一挙手一投足が映し出されるため、いかなる隠し事もできない。
また、これで映し出されるのは亡者自身の人生のみならず、その人生が他人にどんな影響を及ぼしたか、またその者のことを他人がどんな風に考えていたか、といったことまでがわかるともいう。
一説によればこの鏡は亡者を罰するためではなく、亡者に自分の罪を見せることで反省を促すためのものともいわれている。』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
割と強引に話を進めているので、視点が飛びまくり、描写が足りてなくてすみません。
戦争部分は書き直したり、描写を入れたりするつもりです。
できれば、潜水艦の戦闘描写とか、大井海将の演説を変えたいです・・・っ!
うえぇ・・クォークとか大統一理論、むずかしいよぉ・・・
2014/11/25 1:04