12光年/着艦
時系列は、開戦直後の日本国内の様子です。
主人公の存在が土御門首相や軍人さんよりも薄くなってきたので出してみました。
「うー、なんでこんなことに……。」
私は学長に呼ばれて大学の学長室の扉の前に立っていた。
ノックするか悩んでいます。
会うのは勘弁してほしいのだけど……。
※ ※ ※ ※
今は中国と北朝鮮・韓国、ロシアと戦争中で物資が手に入り辛くなった上に国家総動員状態だから、食べ物も制限されてて、いろいろな物価が急上昇。とてもじゃないけど外食できる状態じゃない。
中国の宣戦布告をテレビで見たときは、ハリウッド映画じゃないのかと疑っちゃいました。
だって、いつものおばさん外交官が宣戦布告するとは思わなかったもの。
それと、あのちょっと怖い総理大臣さん。
「自衛隊を国防軍に変える!」とか勇ましいことを言ってたけど、ある意味叶ってしまったような気がする。まるでマッチポンプみたい。
今となっては頼もしいと感じる総理大臣さんだ。
経済政策とか、演説に力を入れているところや、どことなくヒトラーを日本人風に変えた感じの風貌の総理大臣はなんか危ないかも知れないけど……今までのどの政治家よりも頼りになると初めて私は思った。
だって、こんな事態なのに、平和!戦争反対!とか言ってた友愛党は誰一人としてまともな反論を出来ていなかった。なんか自衛隊と警察が国内のスパイを捕まえてから急に静かになってしまったからだ。
国内の電力事情の維持のためにいくつかの原子力発電所を再稼働させて石油の消費も急激に抑えるようになった為、私のような一般人は電車にしか乗れない。
軍人なら基地に行くためのバスが定刻で出ているみたいだけど、自由に自動車に乗れる環境下じゃなくなった。
国内産業の維持の為の資源消費しか認めないのは何とも言えない。
正直、友愛党は頼りない。機密を中国に漏らして今回の戦争を引き起こしたとして、前回友愛党の内閣に収まっていた人物は裁判にかけるって新聞にのっていた。
友愛党本部にまで警視庁の捜査の手が入ったってニュースも昨日、見た。
まるで恐怖政治にでもなったみたい。
それと、最近……人手が足りないからか、幸樹君も国防軍に"徴兵"されて行っちゃった。
どうやら、軍人さんだけじゃ兵站が持たなくなるからだって。
流通って大事だよね。そもそも、流通だって軍事からきているし。
英語でロジティクスという流通を表す言葉は『兵站』って意味だって大学の講義でやった……はず。
バイト先も飲食店だった私はシフトに入れず、しばらくお休み状態で何もすることがない。
インターネットは各国のプロパガンダにあふれ、猛烈な『ドス攻撃』とかいう方法でインターネット回線がパンクしたって。
どういうこと?もともと核兵器の攻撃にさらされても使える通信手段だったはずじゃないの?
そんな感じでインターネットも使えなかった私は、図書館で本でも読もうか、それとも新しい服の制作の続きをするか悩んでいたら、学校の学生課から電話があって学長に呼び出しをされちゃいました。
それで、冒頭の部分なんですけど……。
しばらくしてから覚悟を決めた私は学長室に入る為にノックした。
「どうぞ!」
「失礼します。」
私はドラマの社長さんが座っていそうな黒い背もたれが大きな椅子が背もたれをこちらに向けていることを確認すると部屋の中に入った。
「君が浅野梓さんだね。今日はよろしく頼むよ。」
学長が私にソファーに腰掛けるようにうながしてから、私に話しかける。
「いきなりで申し訳ないが、もし、宇宙人がいるとしたら君は船に乗り込むかい。」
「え?学長……ふざけてますか?」
どういうことだろう。
「ふざけてない。では質問を変えるとしよう。
浅野さん、隠していることは何かないかい。例えば、とある神社に置いてある鏡に映った、とかないかい。」
「は……?いいえ、ありませんよ?」
私はにっこり笑ってみる。大丈夫、これなら茉穂ちゃん以外ならばれてないはず。
ポーカーフェイスなら大丈夫なはずだ。ばれないばれない。
「いや、あるでしょ。その作り笑いはいったいなんだ?ごまかそうとしているのか?」
ばっ、ばれてた。アイエエエ、ナンデ?ナンデバレタノ?
「ハイクをヨメ…というのはジョークだが、その硬い表情では作り笑いと丸わかりだ。
大人を嘗めすぎてるよ、梓君。
それで、鏡に映ったのかい?」
学長にたしなめられたし、もう隠せそうにないみたい。話すしかないよね。
「そうです。映りました。伊勢神宮の例の鏡に映りました。それがどうかしたのですか?」
「そうか。わかった、協力に感謝する。で、だ。」
学長の表情が満足がいった顔、というよりも安心したような顔だ。
何かあったのかな。
「なんですか?」
私の問いかけに応じるようにイスがこちらに向き、学長の顔が見える。
「今から何も言わずに学校のグラウンドにある飛行機にのってくれ。なお、拒否権はない。逆らえば国家反逆罪だ。」
「え?ええっ!どういうことですか。」
「とにかく乗れ。そこに浅野さんの知り合いがいるだろう。そいつから説明を受けてくれ。」
「はい……。」
流石にそこまで言われると逆らえない。
仕方なく、おとなしく従う。ああ、どうなっちゃうんだろう、私。
「ほえ?まほちゃん?」
学長に言われ、グラウンドにきた私はいつかの夏休みに、知覧の特攻平和会館でみた『ゼロ戦』のような飛行機に乗った友人の黒木 茉穂ちゃんに会った。
ちょっとまって。
いつもFBIみたいだとか、スぺツナズみたいとか思ってたけど、本物の公安さんかなにかなの?
私、何かへんなことしたかな……。
「あずさ、言いたいことや聞きたいことはたくさんあるだろうけど、先に後ろの座席に座ってからにしてくれる?そうすれば時間と許可が出ている範囲のみ話すからさ。」
有無を言わさず、乗り込むしかないみたい。
私はこうしてその飛行機に乗り込んだ。
「ふーん。まほちゃんは内閣付の職員で、私は土御門首相からの指名で"宇宙人特務交渉官"になったの?いまいちわかんないけど、この飛行機であのニュースで話題になっていた空母に乗りつけるって意味不明だよっ!」
今、私たちは"紫電改"とかいう飛行機を二人乗れるように改造されたモノにのっています。プロペラが回る音が意外と静かでちょっとビックリしたわ。
淡路島らしき島が後方に見えた辺りの海上に出た時点で、ようやくまほちゃんから説明受けたんだけど意味不明。
茉穂ちゃんに教えてもらった情報を整理すると日本政府、今の土御門内閣があの宇宙船にのる伊邪那美と名乗る女性と交信に成功して『私』を連れてくるように指示したらしい。
なんでも、その交信した方法というのが、首相官邸地下にある臨時作戦室(核シェルター)で今後の日本をどうするか会議をしていたら、その部屋にあった大きな液晶画面が急に付き、彼女が映像に映ったそうだ。
そのあと、しばらく会談したのち、サポート役と私の『友人』の“政府の職員”のまほちゃんが私の補佐として選ばれ、こうして実際に伊邪那美に会いに行く人員として政府の立場を代表して迎えにきたみたい。
「意味不明って言われても……国家機密だからあまり言えないわ。それでね、あずさ。実はこの飛行機、私も運転してないんだよ。」
「ええっ!じゃあどうなってるの?私、死ぬのはいやだよ!まだまだ世界中の甘味を食べ切れていないのに……。」
「相変わらず、あずさのあほさ加減は変わらないね。安心したわ。多分、自動操縦よ!」
まほちゃんの背中がプルプルと震え、笑っている。
そんなに笑わなくてもいいじゃない。怖い物は怖いのよ。
微妙な空気を変えたのは、突然なったビッーと音だった。
その後、スピーカらしきものから音声が流れる。
『特務機[夜鷹]、これより機動宙艦「信濃」に着艦シマス。オ客様方ハ着艦二備エテクダサイ』
「ほえ?信濃なんて見えないけど……。そこ海だよ、海。危ないよぉ」
私は情けない声をだしているのをまほちゃんがツボにはまったのか爆笑している。やっぱりこの娘、公安さんなの?死ぬのが怖くないみたい。
だって、このままじゃ海面に激突して死んじゃうじゃん。
「むりむりぃ、まだまだ私、しにたくないよぉー。」
まほちゃんしかいないので泣き叫ぶ。
目をつぶり、ぐっとこらえていたら、飛行機が止まったようだ。
振り向いたまほちゃんに肩を叩かれる。
「あずさ、着いたみたい。私たちは死んでもいないし、生きているわ。多分、光学迷彩でもしていたから見えなかったと思うよ。
ああ、それと伊邪那美さんに会う前にその酷い顔何とかしなよ……。」
「うぇっ・・・うん、ごめんなさい・・・・・。」
まほちゃんに指摘されて、あわてた私は顔をハンカチで拭いて、ポーチから道具を出してメイクをし直す。
そんな感じでエレベータで艦内に飛行機と一緒に降りていく私たち。
完全に止まってコクピットのガラスが開き、飛行機の外にでた私たちの前にかつて映像で見た十二単をきた綺麗な女性が目の前に立っていた。
ここからしばらく主人公のターン。
と、いっても戦争が終わらない限りどうしようもないのでしばらく宇宙にはいけません。
ぼちぼちと更新していきますがよろしくお願いします。
2014/10/13 0:00