0光年/プロローグ
「宇宙。それは人類に残された最後のフロンティアである。」
これは某国のSFテレビドラマで有名な一説である。
私は、ただそんなSF小説やドラマ、天体観測の好きな子どもだった。
将来は、きっと。
体の弱い私は宇宙飛行士にはなれそうにないから、天文学者になろうと思った。
夜空に浮かぶ綺麗な星々を見て、銀河や恒星の謎をいつかこの手で解きたいと思っていた。
小学生のころに読んだ漫画には2030年代にはNASAが火星や月に有人の基地を建設し、人類の科学技術は飛躍的に発達して生活はより便利になるものだと思っていた。
でも、現実は違った。様々な子ども向きの漫画で書かれていたように確かに技術の発展はそれなりに進んだ。
幼いころに見た父の持っていたモノクロの京セラの携帯電話が、わずかな間にカラフルな画面で簡易的な物とはいえキャンプ場のような場所でもインターネットにつながるようになっていたし、最近では画面にタッチしてできる様々なスマートフォンまで発達した。
しかし、その技術の発達は頭のいい人たちや研究者が人生をかけてアイデアを実用化したからこそ私のような庶民の生活に少し遅れて恩恵がくる。
そのためには知識が必要だ。
だから勉強を頑張ろうと思った。
しかし、私は高校生になって数学Ⅲなど数学のレベルが上がるにつれてだんだんついていけなくなり、興味が強くなっていた歴史や文学に逃げた。
確かにクォークやイオンなどの量子力学や重力などを解き明かすには物理学が必要だった。
そこでは高度な数学が必要だ。
アインシュタインの相対性力学にしても、海王星の発見にしても計算によって導き出されたものだから計算が必要。
天文学では物理学や数学が出来なければ、最新の研究なんてできないからだ。
こんなひどい有様では大学で単位を取ることすらできない。
確かに天体を観測するだけでいいと思っていた中学生の時の私にとって、この事実は大きすぎた。
いくら天体観測や書物を読むのは続けていても、詳しい仕組みが数学を使うものになると、私には内容がわからず、とても悔しい思いをした。
結局、文系の大学に進んで、友達と旅行に行ったり、サークル活動に明け暮れて、なんとなく決まった小さな植木鉢などのエクステリアを扱う会社に内定をもらい、
同じ大学のある男友達が変わった話を持ちかけてきたことから、私のなんとなく過ごしてきた日々が色づいていくことになったんだなぁ、と目の前に浮かぶ鈍色に輝く惑星を見つめながら思い返した。
「ねえ、幸樹くん」
「なんだい、浅野さん」
「ううん、なんでもない」
「ついにここまできたね」
「そうだね、ついに僕らはここまで来たんだ」
そう、私たちの運命が変わったのはちょうど3年ほど前の、あの日からだった_________
初めて書いたSF小説です。
設定はある程度決まっていますが、上手くできるかわからないので改訂作業を繰り返すこともあると思います。
完結させることを目標に頑張りたいと思いますので暖かい目で見守ってもらえるとありがたいです。
最初のうちは投稿ペースが不定期になります。