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パッチワークス

ハイキックガール

作者: 蓮谷 渓介

 公園の片隅に一人、ブランコに座る女子高生。グレーのブレザーにバーガンディ色をしたチェック柄の、プリーツが入った少し短めスカート。背負ったリュックサックは肩紐のサイズが緩く今にも地面に届きそうだ。どこにでもあるような制服を着た彼女の視線は何を見つめるでもなく、 宙を泳いでいる。

 平日の昼間、雲は無く、風も彼女の緩やかな金髪カーリーへアを軽く揺らす程度。穏やかな陽気。

 不意に彼女の視線が動く。その先は公園の広場。徐に彼女は立ち上がり歩き出す。


 花はさり気なく、木々は大らかに、鳥は小刻みに、何気ない、いつも通りの時間。

 

 女子高生が広場の中心辺りで歩みを止めた瞬間、突然彼女の数歩前に上空から何か塊が落下し地面と激しく衝突する。その爆発にも似た衝撃で発生した暴風と立ち上る砂塵を彼女は全身に浴びるが瞬きをする事もなく、身じろぎひとつしない。

 突然の出来事に慌てふためく鳥たちの喧噪が一段落し、砂塵が晴れて塊の姿が露わになる。それは純白のロボット。一目で解る、この時代の技術力では到達不可能な次元のオーバーテクノロジーの塊。

 全高は女子高生と同じか少し高いくらい。人型で、均整のとれた体躯をしているが頭と手、足に当たる部分は大げさな程大きく、球形をしている。

 

 数秒間の対峙。


 ふっと風がニ者の間を吹いた瞬間、ロボットは何の予備動作もなく女子高生の顔面目がけてパンチを繰り出す、が彼女は片手でそれを受け止めると衝撃が彼女を通り抜け背後の木々にぶち当たる。ロボットがすかさず腕を引き戻そうとするも彼女は掴んだまま微動だにしない。ロボットの各駆動部から発せられる甲高いモーター音と立ち上る白煙。不意に女子高生が手を放すとロボットは自身の後退する力で体制を崩すも、各所に配されたバーニアによって即座に立て直しパンチを繰り出す。しかし彼女はパンチを軽く捉えるとそのベクトルに逆らわず回転して受け流し、そのまま大きく上体を捻ってから蓄えた力を一気に放出するように体を絞りあげ勢いよくロボットの後頭部に前回し蹴りを打つ。チェックのスカートが捲り上がり白いパンツが露わとなるもお構いなし、蹴りを受けたロボットは頭部がもげ飛び、残された胴は数メートル飛んだ後地面に突っ伏す。すらりと伸びた健康的な脚線美とは不釣り合いな破壊力。

 女子高生はゆったりと胴の方へ歩みより片手で掴み上げると逆の手の指を揃え鳩尾に突き立てる。 背を突き破り内蔵された配線諸々と共に伸び出たその手には様々なコード類が接続された、なにやら脈打ち赤黒く光る歪な球体。彼女は腕を引き抜くとその球体からコード類を引きちぎり、背負ったリュックサックの中にしまい何処かに行ってしまった。

 残されたロボットの残骸は暫くその場にあったが、突然の風に舞った砂埃が静まるまでの間に跡形も無く消えていた。


 そして、日常は何気なさを取戻し、今日の出来事もこれから続くいつも通りの日常に埋もれて行く。

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