7.メイド服
「お前達は何者だ?どこから現れた??」
ミシェルは窓から突如として現れたナーレスとステア(中身はサニー)に動揺してあたふたしていた。
同じ動き同士で戦っていた人工生命体たちも動きを止めた。
「乙女のピンチにはどこからでも駆けつけるイケメンのお兄さん、それがこの俺ナーレスだぜ!」
「聞いてて恥ずかしい台詞ですね。」
スリィをお姫様抱っこし、王子様を気取っているナーレスにステアは苦笑いした。
「とりあえず、彼女は返していただきましたので、これにて失礼します。」
ステアは丁寧に深々とお辞儀をすると、タイミングよくエレベーターのドアが開いた。
ブルームをはじめ、ナーレス、そしてステアがすばやく乗り込んだ。
最後に一瞬の隙をつき、2号が続き、ドアは閉じた。
「それでは皆様、お邪魔しました☆」
もちろん慌ててもう1体の人口生命体も続いたが、間に合うことはなくミシェルとともに、ドアの向こうに消えていったのだった。
「にしても、ナーレス、ずいぶん素晴らしいタイミングじゃねぇか……見計らってたろ?」
「当たり前じゃないか!!乙女のピンチに絶妙のタイミングで乗り込まないと、格好がつかないじゃないか!」
「つけなくていいっす!!はぁ〜。」
ブルームはため息をつくと、しゃがみこみ、横にちょこんと立っているステアの頭に手をおいた。
「俺はちょっと疲れたよ、あと頼むぜ、サニー。」
「うん、ご苦労様。」
一瞬、ブルームの身体から力が抜けたと思うと、ステアの背中にあった羽根が消え、サニーはもとの身体に戻っていた。
「あ〜、何か久しぶりな気がするなぁ。ウサギの身体もなかなかだったよ。」
「何かいやらしく聞こえるぞ。」
「ナーレスだけでしょ。」
エレベーターが地上に着く前にナーレスはスリィを大きな布で覆った。
そういえば、彼女のメイド服を取り戻すのを忘れてしまったようだ。
「とりあえず、宿に戻るか。スリィの意識も戻らないみたいだし、いろんなことがあったから一度ゆっくり休もう。めんどくさいからワープるよ。」
「ワープる?」
「そう、1,2の3!!」
ナーレスがそう言うと、エレベーターの床に六角形の魔法陣が現れて全員を包み込んだ。
驚いてサニーがまばたきすると、次の瞬間には宿の部屋に戻っていた。
「便利〜なんで、早く使わないの?…あれ?」
ナーレスの返事がないと思ったら、彼は床にひざを着いて息をついているようだ。
やはり相当な魔力を使うらしい。
「今日の大仕事終了。それじゃあ、お休み〜。」
ナーレスが珍しくふらふらと部屋に戻っていった。
サニーは変わりにスリィを部屋に運び、ベッドに寝かした。
ふと、部屋に戻ろうとすると、人工生命体の2号が一緒にいることを思い出した。
「君も男子だから、僕たちと同じ部屋だね。」
「すまない、勢いで付いてきてしまったがよかったのだろうか?」
「いいよ、君は僕たちの味方みたいだしね。一緒に休もう。」
サニーは2号をナーレスのいる部屋に連れて帰った。
ナーレスは相当疲れたらしく、すでにベッドで横になり静かな寝息を立てていた。
ボロボロの2号を見て、サニーは彼の髪をとき、ボディを布でふき、とりあえず服を宿の寝巻きに着替えさせた。
「明日君の服も見に行こうね。じゃあ、今日は寝よう、おやすみ。」
「…ありがとう。」
「いいって。」
サニーは床の毛布に包まった。
2号は部屋の端に座り、静かに目を閉じたのだった。
翌朝。
「おっは〜♪ナーレスママです!みんな元気?」
「意味わかんないよ。」
早朝から無駄にテンションの高いナーレスに僕は起こされた。
見ると、2号もすでに起きているようで、静かにそこにたたずんでいる。
「おはようございます。」
部屋にステアが入ってくる。
「よし、全員そろったな。今から、今日の予定を発表する!」
「朝から何?」
ナーレスは朝から楽しそうだ。
「今日は我らがヒロイン、スリィちゃんの新しいメイド服を買いに行く!!!
それぞれ、スリィちゃんに着せたいメイド服を選び、もって来るように。」
「まじで?!」
その一言で僕の眠気も一気に覚めた。
そういえば、昨日スリィを下着姿のまま救出した僕たちは、彼女のメイド服を奪還することを忘れていたのだ。
「スリィちゃんの起きる前に、野郎どもセレクションのメイド服を用意し、彼女の選んでもらおうではないか!」
「さんせ〜い!!」
スリィの今までメイド服は正統派だが、はっきり言って少し地味である。
深緑のワンピースに白いエプロン、白いメイドハットにワンポイントのコウモリ、そして黒編み上げブーツに赤い縁のメガネ。
もう少し萌え要素がってもよいのではないかと僕は常々思っていた。
「よし、では膳は急げ。解散!!」
「おー!!」
と、意気揚々と僕らは出かけたのだった。(何だこの展開。)
30分後、僕らはスリィの部屋の集合していた。
目覚めたスリィが「何事?」とびっくりしている。
「じゃあ、早速選んでいただきましょうか!スリィちゃん、どのメイド服がいい?」
「はぁ?」
スリィの目の前に5着のメイド服が並べられていた。
ナーレス、僕、ブルーム、ステア、2号、それぞれが選んだメイド服だ。
ナーレスが選んだのはピンク色のチェックのワンピースに白いフリフリエプロンのメイド服。
ホルターネックになっていて、肩が大きく開いたデザインになっている。
パフスリーブの半そでで、腕には白い袖口をかたどった飾りが付いている。
ピンク色のリボンの付いたハイヒールであわすと、まるでアイドルのような可愛さだ。
露出が多いから、可愛さの中にどこかセクシーな感じがする。
「ヒロインはやっぱりこれくらいじゃないとね。メガネもコンタクトにしようね☆」
次に僕が選んだのは黒いワンピースのメイド服。
ミニスカートで背中に某セーラー○ーンのような大きな白いリボンがついている。
白いヘッドドレスは耳の後ろから白いリボンが出ているのが可愛い。
そしてポイントは編みタイツのような柄のニーソックス!!
黒いパンプスで合わせて、足元は大人しめに決めてみました。
「ニーソックスがいいんです!!」
ブルームが選んだのはマニアックな和服メイド。
桜色の着物に白いエプロンがなんとも可愛い。
頭には赤いリボンをつけて、足元はやっぱり足袋とぞうり。
「これからは和風でしょ?」
次にステアが選んだのは……
「もうええっちゅうねん!!!!」
「え〜、今から僕のを紹介しようと思ったのに。」
ステアがなみだ目で訴えたが、スリィはこれをぴしゃりとシャットダウン。
「あのさぁ〜みんなメイド服に夢中だけど、大事なこと忘れてない?」
「メイド服より大事なことなんてない!!」
「あほ。」
言い切ったナーレスにスリィは近くにあった鍋を投げた。
「そもそも何で、オスカーのホテルの最上階にミシェルがいたのよ、おかしいじゃない?
オスカーを殺そうとしていたのに!!変だわ。」
「!!」
確かにその通りである。
最初、僕たちがオスカーにあったとき、彼はそこにいる2号に殺されそうだったのだ。
「その通りだよ、スリィちゃん!!……で、結局誰の選んだのに…ぐはっ!!!」
しつこいナーレスにスリィの鉄拳がくだったのは言うまでもない。。。
スリィちゃんのメイド服案を考えたかっただけです。