2.探し物
ナーレスが町中で人工生命体に襲われていたオスカーという男を助け、お礼として彼の経営するホテルに泊めてもらえることになった。
そのホテルはいかにも高級感漂うセレブご用達な雰囲気だった。
僕は少し場違いな感じがして、何だか気恥ずかしかった。
オスカーは僕たちを部屋に案内すると、「仕事に戻らなくては。。。」と言い残して、すぐにいなくなってしまった。
初めて泊まる高級な部屋を前に、僕は緊張していた。対照的にナーレスは広いベッドにゆったりと座りリラックスしているようだった。
まるで泊まりなれている芸能人のようである。
「で、これからどうするの?」
「男二人でいちゃいちゃするかい?」
「そんな一部のコアな女性を喜ばせないでいいから!」
「(笑)うそうそ。まぁ、今日はせっかくなんだからここでゆっくりさせてもらおうよ。たぶんこれからちょっとやっかいなことに巻き込まれそうな気がするし、今日ぐらいは休んでもバチは当たらないよ。」
ナーレスがニヤニヤと何かを企んでいるような笑みを向けた。
「ナーレスは何で、そんなに厄介ごとが好きなの?」
「魔族とメイドと天使とウサギが一緒に旅をしているんだから、当然だよ。」
「意味がわからない…もういいです。」
ナーレスと一緒にいると、彼が魔族であることをついつい忘れていることが多い。
でも逆にこういう意味のわからない発言や行動を起こしたとき、つくづく彼は魔族なんだな、と再認識してしまうのだ。
彼の旅の目的はなんだろう?
何となく一緒に旅を続けているけれど、その目的は彼の口から聞いたことがない。
前に一度、まだ僕が彼が魔族だからと警戒していた頃、スリィに聞いたことがあるけど、そのとき彼女は、彼は探しものをしている、と言っていた。
一体何を探しているのだろう?
「…ナーレスは何を探しているの?」
ふと僕の口からその疑問が声になって出てきた。
ナーレスが笑うのを止めて僕をじっと見つめた。
僕は何だかまずいことを聞いてしまった気がして、彼から視線をはずしてしまった。
「ごめん、何でもないよ。気にしな」
「じゃあ、サニーは何で俺と旅をするの?」
「え?」
僕はもう一度ナーレスを見る。
彼は笑っていない。
怖いほど鋭いまなざしで僕を見ている。
「ぼ、僕は…」
ブルームニ、自由ヲ。
ナーレスナラ方法ヲ知ッテイルヨネ?
「自分が犠牲になったらいいなんて考えはやめようぜ。他の方法があるはずだ。」
ナーレスはいつもの穏やかな顔で僕の頭を叩いた。
その表情はほんの少し、寂しそうに見えた気がした。
「俺はまぁ、魔族だし自分から厄介ごとに首を突っ込みたくなる性格なんだ。
旅の目的はスリィも言ってたと思うけど、探し物。その探し物に関してはまだ何も話せない。そのときが来たら話すよ。それまでは仲良く一緒に厄介ごとを楽しもうぜ。」
「うん……。」
そのときが来たら僕たちの旅は終わるの?
「な〜んか、雲の多い夜だな。明日は雨かもしれね〜な。」
空と同じように僕の心も晴れなかった。