0.笑
僕は人間の身体を乗っ取っている天使のサニー。
この世界で生きている人々は、身体と意識体という魂のような存在からなっている。
この二つのどちらかを失うと、「死」になる。
天使や魔族もこれと同様である。
僕はある事件のために自分の身体を失い、今こうしてブルームという少年の身体を乗っ取っているためにどうにか「死」を免れているのである。
さて、そんな僕は魔族のお兄さんナーレスとメイドさんのスリィ、そしてユードラという村(訪れた当時は国だったけどね)で出会った言葉をしゃべるウサギ、エストリア(通称ステア)と旅をしている。
今の旅の目的はステアを庭師として雇ってくれるナーレスの知り合いのところに行く、というものである。
目的地までかなりの距離があるらしく、いくつかの国や町を通っていくのだけど、世間一般的に見てやっぱり言葉をしゃべるウサギは珍しく、見世物小屋に目を付けられそうなので、ステアは人に出会うたびにスリィの抱えるぬいぐるみを演じなければならない。
じっと演技を続けるステアも大変だけれども、ウサギといえどずっしりと重量のあるステアを抱えるスリィも相当大変である。
「ステアお肉付きすぎよ。食うわよ。」
「ちょっと、冗談に聞こえないんですけど…。」
「このわきの下とか、柔らかいのよね〜。」
そう言いながら、ステアのわきにある指をこちょこちょと動かしてみる。
「ぬゃはははは!やめてください、くすぐったいです〜。」
「ここがおいしいの・よ・ね〜。」
「ぬは〜!やめてください。」
「ステアって笑い方変だよね。」
そんなスリィとステアを見て、ナーレスが冷静なコメントを発した。
確かに……。
そんなわけで今日も僕たち3人と1匹の旅路は続くのです。
「ぬゃはは!!スリィさん、もう許してください〜!!」
「う〜さぎ〜う〜さぎ〜もぉ〜こもこ〜♪う〜さぎ〜♪♪」
「スリィ、疲れて壊れたかな?」
果たして、次の国か町までステアは笑い死にせずに着くのだろうか?