馬鹿皇子キャンセル界隈~異世界に行ったら頑張らない転移者の助言で何とか宗主国の馬鹿皇子の婿入り話を阻止した王国の話
「貴国はせっかく異世界から客人が来たと言うが、下等遊民だそうではないか?だから他国に軽く見られるのではないか?」
使者が慇懃無礼に国王であるお父様に言い放つ。
宗主国の使者だわ。
「うむ・・・」
平伏もしない。辛うじてお父様は玉座に座ることを許されている。
それほど国力の差があるわ。10倍以上かしら。
「この際、我が帝国の第16皇子、ゲルトフ殿下を婿として迎え入れて偉光を示しては如何ですかな?皇帝陛下のお考えでございます。
ゲルトフ殿下は非常に文武に優れ・・・」
嘘、ゲルトフ殿下は暴力症と有名だわ。かなりのデブで皇宮内でも輿に乗っていると聞く扱いに困っていると評判だわ。
「モニカ王女殿下が殿下と歳が近い。お似合いだと思うのだが?」
ヒィ、私の名が上がったわ。私は長女、つまり。
「ゲルトフ殿下が次期国王になれば貴国は万全でしょう」
私と結婚せよと言うのね。
お父様は。
「しばらく、考えさせて欲しい」
時間の猶予をもらった。
「はい、すでに殿下は軍に守られて国境に向かっております。お早くお出迎えした方がよろしいかと存じ上げます。三日ほど差し上げます」
王宮ではケンケンガクガクの議論が始まった。
「我が国には王太子殿下がいるのに!」
「乱暴だ。是非、断って下さい」
「いや、ゲルダ-帝国は簡単に10万の軍を派遣できる・・・」
「この際、迎えるべきである」
三日間、徹夜で議論をしたが・・・
宗主国のごり押しは最終的に断れない。
「やあ、皆さん、どうしたの?食事が届かないのだけども」
その時、下等遊民のマツナガ殿が会議に現われた。
彼は30歳、この世界に来られても何もしない。
高等遊民なら、女好きだが知恵を出すのに・・・
彼は我国の保護を良いことに部屋に閉じこもって本ばかり読んでいる変わり者だわ。
だから下等遊民と陰口をたたかれている。
「マツナガ殿は引っ込んで下さい」
「そうです。国難です」
「王女殿下がごり押しで婚約を迫られているのですぞ!」
「あ、それ、廊下を歩いていたら、カイザーヒゲのおっさんがいたから断って来たから・・」
「「「「何だって!」」」」
カイザーヒゲ?あの使者のことだわ。
「何だか。俺をゴミと言うから、モニカはやるものか。俺の嫁と言っておいたぞ」
「「「ヒィ!」」」
「断るにも口実が必要でございます」
案の上、使者は烈火のごとく怒った。
「国王陛下!これは許されませんぞ!我国の温情を足蹴にして!」
「うむ。すまない。使者殿には贈物を渡そう」
「いりません。なら、要求を出します!」
とんでもない要求をされたわ。
「モニカ王女殿下は裸で王都を回りなさい。一糸もまとってはいけませんぞ!それなら溜飲が下がると言うものだ!」
「ヒィ、そ、そんな・・・」
裸で王都を回る。それは・・・私の人生が終わると言う事だわ・・・・
王族、いえ、女として・・・一生、日陰で生きること。
だけど、のんきにマツナガ殿は・・・
「いや、王族です。さすがに歩かすわけには、馬車はOK?」
使者に要求を出した。
「馬車なら裸体を隠すのだろう。騎馬なら許可を出す!」
「はいよ」
当日、使者は絵師まで同行させた。記録させるらしい・・・
更に王都に噂を流して、王女が裸で歩くと宣伝されたわ。
だが、私はマツナガから入れ知恵をされた。
「モニカ王女殿下の王都視察でございます」
私の姿は馬の手綱をグルグル巻きにしている状態だわ。縄で体を隠している。
動きにくいが裸体を晒さなくて済んだわ。
「はあ?これは話が違うぞ!」
使者は激怒したが・・・
「あれ、一糸まとっていないぞ?これで条件は守っているはずだが、帝国は約束を守らないのか?」
マツナガは言ってくれたわ。
私は馬に乗りマツナガが馬を引く。王都視察に出た。
王都市民は誰ものぞきに来なかったわ・・・
店も閉っている。
気を使ってくれたのね。そんな王国民が大好きだわ。
これですんだと思ったが、また、使者は難癖をつけた。
「納得できません!なら、詫び料として国土をもらい受けたい!」
だが、今度のお父様は。
「なら、仕方ございません。戦争になりますが・・・残念ながら宣戦布告をされたことになります。
書状をお渡しします」
強気に出た。
使者は一瞬で顔がこわばったわ。
「まあ、反省の色があるようだし・・・今度は許して差し上げてもよろしかろう・・・」
これもマツナガの入れ知恵だわ。
『はあ?国境に兵が迫っているって?それは嘘だ。戦争の大権は皇帝陛下だ。あの使者にはない。・・・・恐らく発展途上国にありがちな話だろう。部下か先走って手柄を欲したとかそんなところだろう・・・』
そもそも宗主国は大きすぎて全て皇帝が決めるのは困難だ。
地方の領主や役人が話を持って来て、陛下に『どうですか?』とおたずねになって。褒美をもらったりするシステムになっているはずだ。
あの貴族は婿入り先に困っている馬鹿殿下の行き先を見つけて手柄にしたかったのだろう。
恐らく、馬鹿皇子のお付きの役人か、後ろ盾と言う所だろう。
自分の娘を嫁入りさせたくないのだろうな。
・・・・・・・・
「いいや、皇帝陛下にお知らせをする。我が国の騎士団は小さいながらも武勇にすぐれた者が多々いる。
大陸に名をと轟かせているゲルダー帝国と一戦を交えることも厭わない!」
「そ、それは、・・・・・手続きがございまして・・・」
使者が困っているとマツナガがしゃしゃり出て・・・
マツナガは何の役職もないわ。
「まあ、まあ、陛下、ここは私に任せて下さい。使者殿、一杯飲みましょう」
使者と肩を組んで出ていき。
王宮で宴会をして・・・
「グスン、グスン、ゲルトフ殿下の嫁が見つからないのだ・・・悋気で、問題行動を起すが、罪を犯すほどでもないから、扱いに困っているのだ。私も貴族の端くれ、娘を嫁に出す決意までしたが、我が娘を醜女だから嫌だとお茶をかけやがった。グスン!だから異国へ追放しようと思ったのだ」
「そう、あんたも大変だね。姉ちゃん。もう一杯持って来て」
「・・・はい」
使者と仲良くなって・・・
開戦はうやむやになった。
「では、マツナガ殿」
「ダットン殿もお元気で」
使者は帰国した。
使者殿は、勅命で嫁入り先を探していたのだ。国内の貴族は皆断っているそうだわ。
「マツナガ殿、使者殿に何の入れ知恵をされたのかしら・・」
「うむ。大陸は広い、どこかで名誉が欲しい令嬢がいるはずだと伝えておいた」
「まあ・・・いるのかしら」
「例えばだ。皇子と結婚出来れば良い暮らしが出来ると思っているピンクブロンドな娘とかだ。地球の歴史では良くある話だ。中国だと市場の豚肉商人の娘とかが後宮に入ったことがある。皇帝陛下に嫁を庶民から探すように献策をするように教えた」
「上手く行くかしら・・・」
「さあ、分からない。ピンクブロンドな娘に引っかき回されるのがオチだな。どうでも良い話だな」
「マツナガ殿は一体、異世界では何をされていたのですか?」
「ああ、商社マンで世界を飛び回っていた。多忙を極めた。だから、決めていたのだ。異世界転移したら・・・」
「したら・・・」
「引きこもりになるってな」
あれから、マツナガ殿は部屋に引きこもっているが誰も何もいわなくなった。
「モニカよ。婚約者はまだだったな。マツナガ殿をどう思う?」
「さあ、でも、働いて頂かなければ嫌ですわ」
「うむ。伝えておこう」
だが、『モニカは俺の嫁』と言ったのはどこまで本気か。今度はこちらが試してみようと思う。
今度はこちらが試す番だわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




